HUKAN先生
休憩時間。
お花を摘んだ後、僕は廊下でHUKAN先生を呼び出してみる。
「え~、久能さん。ワタシと内緒話したいタイプぅ~?」
「根本的な疑問なんですけど、なんで僕にパートナーが三人いるんですか?」
怪しげなおじさんもとい万能AIは、僕のスマホ画面に映っていた。
スパコンが創作した人工知能ゆえ、情報端末を渡り歩くのは簡単だって。
「パートナーが一人でも荷が重いです。それなのに、現状コンカツする気がない相手が二人もいるわけで……もしかして、貧乏クジ引いちゃった?」
「対立したって良いんです。うんうん、それもまたコンカツじゃなぁ~い」
「あの、もう一回マッチングのやり直しとかできません?」
「ワタシ、万能だからぁ~。マッチングの結果は正確なんですよ、じ・つ・は」
要するに、変更は認めないと。
前例主義? お役所仕事かな? 万能AIこそ、柔軟な発想で臨んでほしい。
「――分かります。カルテットの導入は、すっごく試験的じゃなぁ~い。あなたが選ばれた意味があるんです。もっと俯瞰しなくっちゃ。まあ、久能さんには期待してるんですけどね」
名画の贋作を売りさばく古物商のごとき笑みを携えた、HUKAN先生。
控えめに言って、顔面がとても詐欺師的ビジュアルですね。胡散臭さがにじみ出てます。
「HUKAN先生が頼りにならないことが分かりました。しばらく、足掻いてみますよ」
「なかなか面白いジョークじゃなぁ~い。それ、いただきっ」
両手の人差し指を向けないでください。煽り、ダメ絶対。
誠に遺憾ながら、肩に小さなおじさんが乗ってきた。立体映像のはずが、重圧が凄い。
妖精使いの久能って噂されたらどうしよう。せめて、女の子タイプにしてください。
廊下を歩く足取りが重いのは、気のせいじゃなかった。