序章
序章は飛ばしても大丈夫です。
――ピッ、ピッ、ピッ
心電図の音が聞こえる。
お腹から胸にかけて、痛い。
頭の中が真っ赤に染まるような痛みだ。
それなのに、頭の奥がふわふわとして指一つ動かせないのは、強い痛み止めのせい。
意識はぼうっとしていて、今が昼なのか、夜なのか、それさえもわからなかった。
今回の痛みは、いつもよりも大きい。
目を開いているのに、真っ赤に見える不思議の世界で、ピリリッと内蔵を裂くような痛みを耐え続ける。
(いっそ、死んでしまいたい)
この痛みがくるたびに、そう思う。
四歳まで生きられないと言われた身体だった。
けれど私は、無事二十歳を超えたし、小学四年生の頃にひと季節分だけ学校へも行った。
酸素マスクの向こうに、ぼんやりと人影が見える。
お母さんだ。
泣いて目を腫らしたお母さんが、「ごめんね」と言う。
私こそ、ごめんね。
もっと一緒に居たかった。
お母さんの隣に、お父さんがいる。
お父さんは、にっこりと力強く笑って、「ありがとうな」と頭をぽんぽんと撫でてくれた。
ありがとう。
ごめんね。
私は、混濁する意識を必死に保ちながら、両親を見つめた。
真っ白な病室。
私の人生は、いつもこの真っ白な部屋とともにあった。
その人生の幕も、もう下りる。
もし生まれ変わったら。
次こそ――――。
書きたいものだけ書く、まったりスタイルのお話。