表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/8

第三話 旅立ち、東方の帝國へ。

コトコトと沸騰した熱湯を茶葉を入れたポットに注ぎ、紅茶の香りや渋みの成分を引き出す。爺ちゃんがくれた魔導具になっている背嚢には、野営具に始まりティーセットや葉巻など彼の趣向品まで入っていたのである。


折り畳みの椅子に座っている少女は、見る限りの年齢は14と言った所であろうか。黒髪を肩まで伸ばし、ハッキリとした顔立ちは西洋的に感じる。紅茶を差し出すと両手で抱え、物珍しそうに息を吹きかけている。自分もカップを手に取り桂皮と生姜の香りを楽しむ。


暫くは豊かな時間を楽しんでいると、猫が焦れったくなったのか少女へと向かった。


「お嬢さん、儂は緋染 洛、あっちの坊は緋染 篇ナと申す者。君はなんと言うか聞いても宜しいかのぅ」


熱いのか少しずつ少しずつ口にしていた少女は、ティーカップを置き応えた。


「弓月 叶女。叶女で良い」


小さな声だが、言葉一つ一つに唯ならぬ魔力が乗っていた。やはりこの子は只者ではない。


「叶女は何で此処に居るの?魔族が住んでいるのは、もっと南の方だと聞いているんだけど」


「......分からない。殆ど記憶が無い。でも多分ここに転移してきた。時空魔法の匂いがする」


魔法に匂いを感じるのか、それとも唯の比喩か......。魔族とやらの生態を知らない僕には区別がつけられない。視線を爺ちゃんへと向けると......。


「ごほん、魔族には魔力を感じる能力があるとは、聞いた事があるのぅ。だがしかし、彼らは他と関わるのを嫌う傾向がある為、正直余り記録には残っていないのが実際の所じゃ」


なるほど、人口も少ないらしいから尚更か。


「だがのぅお嬢さん。君程の力があれば、あの程度の人数一撃で蹴散らせただろうに。何故ふみ坊に助けを求めたんじゃ?」


「私はまだ力の制御が上手く出来ない。間違えると森ごと消し飛ぶ。木に恨みはない」


なるほど、だから代わりに僕に殺って欲しかったのか。にしても自然を大切にするとは、魔族のイメージとは違うな。


「ふぉふぉふぉふぉ、主.....その耳の尖りに自然を気にする様子。混血しておらんかぇ?珍しいこともあったもんじゃのぅ」


ギクリというSEを幻聴させるほどの、動揺具合だった。しかし、本当に爺ちゃんの勘は恐ろしい。こっちに来てからより精度がましている気がする。


「......私はエルフと魔族と人族のクオーター。だから闘争本能は無い......と思う。多分。だから殺さないで欲しい」


爺ちゃん曰く、亜人と人族、エルフと人族は稀にあるそうだが、魔族がそこに入ることは稀も稀で、数百年に一度報告されるかされないかの程合いらしい。それに魔族は危険視される風潮がある為、誰も言い出さないのだそう。魔族の長が魔王として君臨し、各国と対立関係にある情勢も絡んでいるのだとか。


「殺さないよ。僕は教会の信徒でもないし、何処かの刺客でも無く唯のはぐれだからね」


「ありがとう......篇ナ」


ポットが空になる頃には空が少し暗くなりつつあった。


さて、遺体を片付けるか。


素知らぬ顔で一服してはいたが、クレーターの中には遺体が山積みの状態である。夜まで放置すると魔物や獣が寄ってきて面倒なのだ。しかし、さすが魔族の血入りと言うか、血液や肉片への恐怖は見られない。ある意味不健全の極みだな。


使えそうな荷物をはぎ背嚢へと入れていく。略奪ではない、有効活用である。一応手を合わせて呟きながら財布を開け、懐を温めていった。しかし迷うのが散乱している銃器や刀剣である。正直、西洋風のロングソードやサーベルは切れ味が悪く、自分の剣術とは相性が最悪なのだ。最早使い物にならない。


「爺ちゃん、このサーベルって質に入れたら幾らになる」


「そうじゃのぅ......断定は出来んが百マドカ程かのぅ」


一マドカが三十円ぐらいだから、約三千円か。やはり軍刀は人気ないんだな、これほぼお飾りだし。数本は叶女に渡して後は売り飛ばすか。


すると傍でガチャリと金属音が響き、次の瞬間爆音と共に数メートル先の地面に風穴が空いた。


「おー凄い。弾出た」


そりゃ出るでしょうよ......と言うかこの子存外頭弱いな。声色には余り出ていないものの、爛々と目が輝いている。


「それ持ってくか?」


「うん、これを通せば暴走もしにくい」


一応考えてはいるのか......掴めない少女だ。そんな事を考えながら遺体の山に小火弾を数個放ち、火葬を済ませる。


「それで、これから何処に行くの」


......どうしようか。特に理由もなく、爺ちゃんに馴染みのある帝國の街に向かっていたが、身寄りのない少女を抱える流れになっている。何処か教育を受けさせる場を設ける必要があるだろうし、僕自身の身分を証明出来る物も得なければならない。


「爺ちゃん、一番近くてギルドのある帝國の街まで、大体何日かかるかな」


「そうじゃのぅ、徒歩だと三、四週間はかかるかのぅ」


まぁまぁかかるな、少女には長過ぎる旅だろう。何か車でもあれば別だろうに......。あ、あったわ。


「よし、あのトラックを使わせてもらおう」


すくりと立ち上がり、教会のマークを手から出した炎で焦がし消していく。全くもって印象が悪いからな。


「ふぉふぉふぉふぉ、久し振りに曾孫とドライブじゃ。胸が高鳴るのぅ」


一見は機嫌のいい可愛らしい猫なんだが......中身がね。


「篇ナは運転出来るの」


「まぁ、これでも二十代半ばだからね。ほぼペーパーだけど」


「えっ」


目を見開いて驚いているな....冷や汗までかいている。何なら今日一の驚きざまだ。そこまで反応しなくても、と思ったがそう言えばまだこちらに来てから、自分の姿を確認していない。風魔法で広く地面を抉り、水を張る。


......確かにこれは驚くな。長めの銀髪に赤のメッシュ、顔立ちはまるで女児の様。角度がついているため、正確な身長は分からないが大体百五十cm程だろうか。うーむ、間違いなく成人しているようには見えない。


「小人族の血が入ってるの?にしては武器が刀。変わってる」


「あーうん、そうなのかもね。うん」


駄目だ、何と説明してもボロが出る気しかしない。変に話さない方が得策か......。


「誰にでも話したくない事はある。気にしなくていい


「あ、ありがとう」


この子、良い子だよな。基本。


「坊~、荷台にガソリンの予備があるのぅ、魔力とのハイブリット車じゃから目的地まで足りそうじゃ」


「爺ちゃんでかした!荷物を纏めて日が落ちる前に、街道へ出ようかね」


全員乗ったことを確認し、鍵を挿しエンジンをかける。外装内装共に昔の軍用フォル〇スワーゲンに似てるな。キュー〇ルワーゲンとかもあったなぁ、こっちにも似たのがあるんだろうか。


そんな無駄事を考えながらアクセルを踏み込むと、ハンドルから少量ずつ魔力が吸われているのを感じる。なるほど、これがハイブリットか。


「もっとスピード出して」


「無茶言うな、舗装されてない山道なんだよ。運転が難しい......んだ......っと、あっぶね」


地面の窪みにタイヤがあたる度に車体が上下に揺れ、飛びたした枝が窓枠を叩く。大きな道に出た頃には、日がすっかりくれていた。


+400000マドカ(12万円)

軍用サーベル(一般兵)×6

軍用レイピア(特注品)×1

MM1(ライフル)×12

MM7(擲弾銃)×3

MM2(備え付き機関銃)×2

フォル〇スワーゲン風の軍用トラック×1


アップロード時間帯20時~21時

6話から先、週二投稿(多分)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ