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第二話 少女との出会い

こっちに来てから一週間程が過ぎた。

爺ちゃんとの野営生活は思った以上の楽しさがあり、あっという間に時が経ってしまう。元々インドア派で鍛錬も室内に徹していた僕には、異界の自然豊かな風景はとても刺激的で、世界が新しさに埋め尽くされていたのである。


それに、魔法やスキルにランク、まるでゲームの世界に入ってしまったかの如く、ある意味夢のような世界だ。しかし良く聞くライトノベルみたく中世の世界観ではなく、爺ちゃんいわく技術水準は1970年代に近いそう。それに電気と混じって魔力も使われているらしい。何でもパワーという奴だろうか。


こんな世界だから、もちろん魔物なんかも居る。そしてそれらを狩り生計を立てる冒険者も。旅人のように穏やかに過ごせるなら、冒険者もありかなぁなど他愛もない話をしていたのだが......。


突然に核弾頭でも落ちたかと錯覚する暴風が体を襲った。羽織っていたマントを盾にし目を守り、逞しい木陰へと身を預ける。


「さて、どうするふみ坊よ」


胸元から三毛猫が此方を凝視している。こんな愛くるしい動物の中身が老人とは......本当に不思議な世界だ。して、この先で何が起きているのか、気にならなくはない。しかし面倒事に巻き込まれるのは必至、だがもし誰かが魔物に襲われているとすれば、見過ごすのは性分に合わない。仮にも軍属に身を置く者だ。民間人を守る義務がある。


「ふぉふぉふぉ、それでは行くかの」


本当に爺ちゃんは......何故こうも心を読めるのだろうか。昔からなので、魔法を使っている訳でも無い筈なのに。


「あははは.....まぁ今の僕ならそうそう死ぬ事もないだろうしさ」


「そうじゃろうが、慢心はするでないぞ。存外命なんぞ儚いものじゃ」


.....その言葉は本当だった。


林の中に不自然に空くクレーターの中心で、数十人の兵士が囲む中に、少女が浮いていた。光を吸い込む黒髪と瞳に透き通った肌、東洋人の色味だが顔立ちは完全な西洋風である。それに......あれは触覚?まるで悪魔のような風貌である。しかし無意識に見とれるほど美しい。が、想像していた構図とは違い、異常そのものであった。


ふと視線を下ろすと、陥没した地面の中に肉塊が数個。先程の衝撃波はこの少女による物だと知れる。


「爺ちゃん、これは不味いよねぇ......」


「不味いのぅ......婆さんに賭け麻雀がバレた時以来の不味さじゃのぅ......」


このジジイは......普段はかっこいいのに、時たま出るエピソートが最高級にダサい。


「おい!そこのガキ下がれ!!教会の名の元に魔族の断罪中だ!!しょっぴくぞ!!」


白に統一された軍服男が何やら叫んでいる。教会?......何か爺ちゃんも話していた気がする。断罪、言い方が引っかかるな。しかし攻撃をされても困るので一旦下がる事にする。戦いは好まない質なのだ。


「教会ってこの辺りを牛耳ってる神聖教皇国のこと?それに断罪って何」


「その通り教皇国の事だろうのぅ、断罪というのは教義に反し人の神に従わない、魔族等を裁判にかける際に使う言葉じゃの」


つまりは、あの少女を捕らえようとしている訳か。しかし、取り囲んでいる兵士の武装は、見る限りは魔導系の大口径半自動小銃12丁と擲弾銃4丁、それにテクニカル二台。明らかに殺しにかかってるだろ......。


※テクニカルは、トラックなどの車体ないし荷台に銃砲を据え付けた即製戦闘車両。


「しかしのぅ.....あのお嬢からは邪気が感じられんのぅ」


何処か声が悲しげである。ふと視線を向けると、少女の口元が微かに動いた気がした。それに明らかこちらを向いている。遠目でかすむ目を擦り、何とか焦点を合わせ......。


(t.a.s....k.e.t.e.....t)


助けてと言っているのだろうか。しかし......しかしだ。罠という可能性も十分にある。相手はか弱い少女でも民間人でもなく、あの爆発を起こせる言ってしまえば化け物だ。だが.....確かに.僕へ助けを求めている。


ここで動けず何が軍人か。


「ふみ坊よ、心に従うが良い。今統帥権を握っているのは坊自身じゃ」


軍刀を皮鞘ごと引き抜き、居合の構えのまま背後まで駆け抜け首を撥ね飛ばす。一拍遅れて血飛沫が上がり、動揺を生んだ。誰かが叫ぶのを隣に構わず次々亡骸を増やしていく。


こちらに気付いた数名が発砲するも、取り回しの悪い長物では照準が追い着くはずも無く、刈り取られていく。


ふと当たりを見渡せば、残るは一人。しかも初めに怒鳴ってきた


「ガキが......背後から奇襲を仕掛けるとは......卑怯者が!!」


「奇襲が卑怯だと?戦場に卑怯などあるものか。条約に禁止とでも書かれているのかね。それにガキじゃない」


少しずつ距離を詰めていく。この中の小隊長なのだろうか、装飾のついた白い軍服にお飾りの軍刀、そして胸には拳銃。自領地で尚且つ大きな後ろ盾があるからだろうか......完全に装備が舐め腐ってやがる。


「よくそんな装備で出張ってきたもんだな。無駄に剣を飾りやがって、扱いにくくしてどうする」


「ええぃ黙れ!!俺はシュツリーム家の次期当主であり、小隊長のオノラブル・カルルス中佐だ!!平民のお前に不平を言われる筋合いはない!!」


宝石の散りばめられたレイピアを抜き放ち、猪突猛進な突きを放ってくる。英才教育の賜物であろうか、確かに太刀筋は悪くない。だがしかし頭は柔いようで容易に交わされた後、首を跳ねられ終わった。


こいつ......中佐という高級な階級を与えられ、辺境の小隊に飛ばされると言った皮肉に気づかなかったのだろうか。哀れな男だ。


空を斬りある程度の血糊を飛ばし、手拭いで丁寧に拭き取る。そのまま直に拭くと手にべっとりと付いて不快なのだ。


「強いのね。貴方」


「おおっっ!!」


耳元で囁かれ、思わず全力で回避行動を取ってしまった。少女も思っていた以上の反応だったようで、少し目の開きが大きくなっていた。恥ずかしさが込み上げてくるが、顔に出ないよう抑え込む。そして出た言葉が


「お嬢さん、お茶でも如何ですか?」

週二投稿出来たら良いなぁ。

アップロード時間帯20時~21時

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