牢屋
ベビーサークル思い出す((((;゜Д゜)))
冷たい、石の床のうえで。
俺は重たい枷をはめられて。
呪文の書かれた札を体中に貼り付けられて。
時折天井から伝い落ちる、きたねえ水分を舐めながら。
何とか、今まで、生きながらえていたのだが。
「処刑の時間だ、連れて行け。」
どうやら、俺は、この地獄から解放されるらしい。
この命を終わらせる、事で。
おかしなもんだ。
俺はこの世界で。
ただ、普通に生きていきたかっただけなのに。
ただ、誰かと共にいたかっただけなのに。
この世界に来て、俺は。
並外れた力を持ち、それを使い。
並外れた力を使い、人々を救い。
救い?
ちがう。
人々を、選別したんだ。
使えるやつを残して、使えないやつを殲滅し続ける。
使えるやつらはやがて、俺を使えないやつだと考え始めた。
頭の悪い、使えない奴らだったら。
こんなことは考えなかっただろう。
――みんな仲良く暮らせればいいじゃない。
頭の悪いやつが言った言葉が、思い出される。
俺が頭の悪いやつらの頂点に立っていたら。
俺が使えると信じたやつらを殲滅していたら。
俺の力を恐れない、頭の悪いやつらを思い出す。
膨大な力に、かなうはずのない装備で乗り込んできたあいつら。
…本当に、頭が悪いと思う。
俺の力を恐れた、頭のいい奴らを思い出す。
膨大な力を、策を練って封印しやがった。
…本当に、頭がいいと思う。
俺は頭が悪かった。
牢屋の中で、俺はいろいろと考えた。
頭の悪い俺は、考えた。
ひとの恨みなんてのはさ。
こんなちんけな札なんかでどうにかなるもんじゃ、ないんだよ。
ひとの恨みなんてのはさ。
首落としたくらいじゃ消えないんだよ。
俺の恨みを思い知ればいい。
俺の力を思い知るがいい。
札のせいで外に出せなくなった膨大な力を、体内で構築することにした。
俺の体の中は、この世を滅ぼす力が溜め込まれている。
…さあ、時間だ。
「さあ、時間だ。」
ざんっ―――――――
「あなた、星を丸ごと、消滅させましたね。」
俺の目の前には、神がいる。
ああ、俺の恨みは、世界を滅亡させることができたのか。
…ざまあみろ!
「いくらなんでも、横暴です。」
がちゃん。
「この牢屋でしばらく反省しなさいね。」
俺は肉体を失ってしまったというのに。
俺は膨大な力を失ってしまったというのに。
俺は、ただのちっぽけな存在になり果てて、牢屋の隅で膝を抱えた。