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反映ーreflectionー  作者: たかさば


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つばめ

つばめのカッコよさといったらもう(*´-`)

つばめの巣にあこがれていた。


子供の頃の話だ。


隣の家は、毎年つばめが巣を作りにきていた。

ビルトインガレージの家で、つばめも雨風がしのげると思って懇意にしていたのであろう。


生き物好きだった幼い私は虫取り網でつばめを捕獲しようとしたこともあった。

親つばめはすばしっこく、捕らえることはできなかった。

つばめの巣はずいぶん高い位置にあったので、手は届かなかった。


「つばめは見るだけにしなさいね。」


温厚だった隣のおばさんに怒られて以来、つばめは観賞する対象になった。

捕獲するなんてとんでもない。


小学校に上がっても、中学校に上がっても、高校に入学しても、大学に入学しても、毎年毎年変わらず、つばめは巣を作りに来ていた。

就職して町を出ることになった年も、つばめは巣を作りに来ていた。


毎年必ず、隣の家に巣を作りに来るつばめは、一度も私の家に巣を作ることはなかった。


つばめは巣を作る家に幸せを運んでくる、といううわさを聞くことがある。

長い間、隣の家はつばめの恩恵を受け続けていたのだ。


うちは何かしら、つばめが近寄りがたい何かがあったのかもしれない。


ずいぶん時間がたったころ。


実家を訪れ、隣のビルトインガレージをのぞき込むと。

つばめはやはり、巣を作っていた。

ここから巣立っていったつばめは、いったい何匹なんだろう。


「隣の家潰すらしいよ。」


長年多くの優秀なつばめを輩出したこの場所は、なくなってしまうようだ。


いよいよ、うちにつばめが巣を作る日が来るに違いない。

いよいよ、うちにも幸せを運んできてくれる日がやってくる。


つばめが巣だった年の冬、隣の家は解体され、駐車場になった。


そして、春。


つばめはどこにも巣を作らなかった。

近所から、つばめの姿が消えてしまったのである。

…長年の別荘地を破壊されたつばめの怒りが感じられる。


実家に巣を作ればいいのに。

そんなにも、うちの軒下は居心地が悪いのか。


…そうだな、かつて住んでた、自分も出てったくらいだもんねえ。


「今年は虫が多くて。」


実家の母親が愚痴を言っている。

おそらくつばめがいなくなったからだ。

働き者のつばめは、虫をせっせと取ってはひなに与えていた。


つばめの消えた街中は、どんどん人も消えていった。


今、あのあたりには、家はほとんどなくなってしまった。

実家もただの土地になってしまった。


あの優秀なつばめの血脈は、どこへ行ってしまったのやら。


つばめも人もいなくなったさびれた土地は、ただひっそりとたたずんでいる。

こうして、土地は賑やかさを失っていくのだな。



しみじみと、切ない気持ちを胸に、自宅の窓を開ける。



ピーちゅくちゅくチー!!、ピーピー!!ホーホー!!



毎朝毎朝、にぎやかしいな!!!

うちのあたりは、つばめの入り込むすきがないくらい鳥が!!!鳥がああああ!!!


あれだ、庭の生えっぱなしのグミの木だ。

あそこを寝床にする鳥の皆さんが相当賑やかしくてもうね!!!


うちもいずれ寂れるのかね…。


とりあえず、木の生えてるうちはうちは安泰…。

安泰?

被害の間違いなんじゃないのか…。



深く考えるのはやめにして、私は日課のウォーキングに出かけた。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 90/90 ・なるほどツバメにそんな恩恵が。虫を食べてくれるのは確かにありがたいですね [一言] 近所では「ツバメは害鳥」なんて言われてまして、巣を破壊する風潮なんですよ。
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