待ち合わせ
10分前にはいるタイプですヾ(@゜▽゜@)ノ
※こちらの作品は、ノベリズムさんにて連載中の「誰かのため息は、ずいぶん蒼くて…重いらしい。」でも公開しています。
今日は、あの人と待ち合わせ。
飛び切りおしゃれしてきちゃった。
あの人は、私の事、見つけることができるかな?
ずっとずっと大好きだったあの人と。
今日、ようやく、二人で会える。
ずっとずっと大好きだったあの人に。
今日、ようやく、手を伸ばせる。
ずっとずっと大好きだったあの人と。
今日、ようやく、抱きしめ合える。
ずっとずっと大好きだったあの人と。
今日、ようやく、目を合わせることができる。
ずっとずっと大好きだったあの人を。
今日、ようやく、自分のものにできる。
ずっとずっと大好きだったあの人を。
今日、ようやく、自分だけのものにする。
ああ、そろそろ待ち合わせの時間ね。
あの人は、私の事、見つけることができるかな?
今頃、私を見つけられなくて焦っているかも?
そうね、ここはとても人の多い、待ち合わせのメッカ。
溢れる人に紛れてしまって、私を見つけ出すのは難しいよね。
でも大丈夫。
私は貴方を必ず見つけ出せるから。
私は貴方を必ず私のものにするから。
私は貴方を必ず私だけのものにするから。
ああ、あんなところに。
み
つ
け
た
少し周りを見渡してる。
ふふ、なんだか少し、焦っているみたい。
大丈夫、私全然怒ってないよ?
私を見つけられないこと、怒ってないよ?
私の視線に気が付かなかったこと、怒ってないよ?
私の存在を知らなかったこと、怒ってないよ?
だって、私、あなたのことが、大好きだから。
ああ、私を見つけられないからって、スマホに視線を、落としちゃった。
ふふ、かっこいい顔が、前髪に隠れて見えなくなっちゃってる。
…ああ、もったいない。
どうせ見えない顔だったら、後ろから近づいて驚かせちゃおう。
どうせ私に笑いかけてくれない顔だったら、見なくてもいいや。
どうせこのあと私を見るあの人の目はきっと。
私は大好きなあの人に、思いっきりぶつかっていった。
振り返ったあの人の目は、大きく見開いて。
私は目線をばっちり合わせた。
ああ、こんなにも、私を見つめている。
ああ、こんなにも、私があの人の目に映っている。
ああ、こんなにも愛おしい。
私、あなたの目に映る最後の女になれて、本当に幸せ。
私も、あなたを、私の目に映る最後の男にするね。
私は、大好きなこの人の体を、ぎゅうっと、抱きしめた。
大好きなこの人の体に、愛おしい鍵が深く刺さった。
深く、深く差し込まれた、私とこの人を繋ぎ止める、鍵。
同じ形の鍵を、私の体にも、深く、深く差し込んだ。
抱きしめることで、鍵は互いの体に深く深くめり込んでいく。
この、鍵を、抜き取ることは、許さない。
この、鍵は、私とこの人が共に違う世界へ行くために必要なもの。
この世で、最初で最後の待ち合わせ。
あふれだした私たちの命の証が、辺り一面を染め上げていく。
あふれだした喧騒の中、私たちはただ抱きしめ合って。
…違う、ね。
私は大好きな人をぎゅっと抱きしめたまま。
埋め込んだ鍵が、抜けないように最後の最後まで、力を抜かずに。
抱擁を返してもらえなかったのが、少しだけ残念だけれど。
ああ、次の待ち合わせ場所、決めてなかったね。
大丈夫、このあと違う世界で、また会えるよ?
大丈夫、約束はしてないけれど、私は必ずあなたを見つけるから。
大丈夫、心配、しないで?
今まじりあっている私たちの生きた証が、きっと私とあなたを繋ぎ止めてくれるはず。
私、待ち合わせなんてしなくても、あなたを見つける自信、あるのよ?
待ち合わせなんて必要、ないのよ?
すぐ、また、会えるから。
またね。




