オーバーキル
おや、仲間になりたそうな目をして…。
「ヤバイ!やり過ぎた!!」
最近僕はゲームにはまっているんだ。
「ああ~またつぶれちゃったよ、勘弁してくれよ…。」
敵の溢れる世界で、楽園を作っていくこのゲーム。
敵を瀕死の状態にすると、たまに仲間にすることができるシステムを実装。
ぼっちの僕は、喉から手が出るほど仲間を望んでいる。
しかし。
どうにもこうにも、敵が弱すぎる。
どれほど手加減してもすぐオーバーキルしちゃうんだよ!!!
なんて弱い、弱すぎるんだ!!!
手を変え品を変えいろいろやってみたさ!!
でもすぐに人ってのは傷ついちゃうんだよね…。
ちょっとしたことで心を痛めて自分を無くして。
ちょっとしたことで前がむけなくなって。
ひどいことになると生きていくことすら難しくなって。
非常に、非常に匙加減が、難しい。
未だかつて一度も仲間確保に成功したためしが、ない。
ちょっと試練与えたらつぶれちゃうしさ。
ちょっと幸運与えたらつぶれちゃうしさ。
ちょっと悲しみ与えたらつぶれちゃうしさ。
ねえ。
これ、本当に仲間になるの?
実は仲間になんかならないんじゃないの?
不信感ばかりが募っていくんですけど!!!
僕の貰った神の領域。
この島には一億人の敵がいる。
ぼくはさ、楽園を作りたいと思っているんだ。
敵の溢れる楽園。
敵がさ、仲良く暮らしていける楽園。
僕、敵見るの大好きなんだよ。
敵が増えていくのを見たいのに、どんどん勝手に数を減らしてくるんだよね。
ちょっと前まで順調に増えてたのにさあ!!!
敵同士でつぶし合いして何やってんだよ…。
だからちょいちょいめんどくさそうな敵と戦って駆除してるんだけど。
敵はやっぱり、敵なんだよなあ。
僕のやりたいこと、きっちり邪魔してくるもんなあ…。
でもさあ、そんな敵でもいいから、僕の横にいてほしいって願ってしまうくらい、僕は孤独なんだよ。
たった一人でいいんだよ。
誰かこう、心の強い、人間はいないもんかね。
「はーあ、罠でもはるかぁ…。」
僕は即闇落ちしないような、浅めの落とし穴をいくつか設置してから、気分転換するため大気圏散歩に出かけた。




