時の過ぎ行くままに
適当に生きても、ガッツリ生きても、おんなじ時間だと言うことです。
※こちらの作品は、ノベリズムさんにて連載中の「誰かのため息は、ずいぶん蒼くて…重いらしい。」でも公開しています。
「何をしていても、時というものは過ぎていってしまうものだね。」
あなたは、何をしてきたの。
「生きるために日々を過ごしてきたね。」
たとえば?
「働いて、賃金を得て、命をつないできた?」
どうして疑問形なのかな。
「無意識にそういう流れに乗ってしまったと思っているから、かな。」
ただ流されて生きてきたわけではないでしょう?
「自分で選んで生きてきたとは、思っているよ。」
選択肢のない、強引な決定もあったのかな?
「選べない、選ばされたことも多かったよ。」
それしか選べなかった結果、あなたはそれを選んだということね。
「逃げ出すことのできない場面は、たくさんあったと思うよ。」
私には場面がなかったわ。
「場面のない時間を過ごすのは、どうだった?」
私はただ、時を過ごしてきたわ。
「何もしないという時間を過ごしているのだからね。」
ねえ、何もしないで過ごした時間と流されて過ごした時間は同じ時間なのかしら。
「時間は時間だよ。そこに違いなど何もないのだと僕は思うよ。」
何もしない時間を過ごすことをどう思う?
「そういう時間の過ごし方もあると思うよ。」
…あなたと共にいたら、何もしない時間を過ごせなくなるわ。
「そういう時間の過ごし方もいいと思わないかい。」
あなたと共にいてもいいのかしら。
「君が共にいたいと望むのであれば。」
あなたはそれを望むのかしら。
「僕の望みは知っているんじゃないの?」
あの日、誓った言葉。
「永遠に共に。」
「君に置いて行かれてしまった僕はただ漠然と毎日を過ごしてきたよ。」
あなたを置いていってしまった私はただ漠然と何もしない時間を過ごしたわ。
「時間の長さは、同じだね。」
時間の長さは、同じよ。
「これからは共に過ごしたいと僕は願うよ。」
これからは共に過ごしたいと私も願うのよ。
「迎えに来てくれて、ありがとう。」
これからは共に。
何もない時間を過ごそうか。
時の、過ぎゆくままに。




