瀬戸際
隣の芝生は青いと言うことです。
※こちらの作品は、ノベリズムさんにて連載中の「誰かのため息は、ずいぶん蒼くて…重いらしい。」でも公開しています。
僕は今、瀬戸際に立っている。
生きるのか、息絶えるのか。
右か左。
どちらを選んでも、僕の運命は、決まる。
どっちだ。
どっちを選べば、僕は生きていける。
どっちが僕の生きる道なんだ。
夢か。
現実か。
夢を追いたい僕に期限が迫る。
夢か。
現実か。
現実を見ない僕に期限が迫る。
目を背けてきた僕の前に、二つの道しるべ。
右は夢を追う道。
行く道が暗くて何も見えない。
左は現実を見る道。
行く道に人々が見える。
僕は、この二つの道を、選ばないという選択をしてきた。
道を選ばないという道もあるのだと自己完結をして。
その結果として、瀬戸際に立たされた。
瀬戸際に立たされてもなお。
選ばないという選択を願う僕がいる。
僕は右の道を選んだ。
僕は暗い道を行く。
ふと、左の道を覗いてみた。
左の道の僕は、誰かに励まされていた。
右の道の僕は、一人、闇の中。
左の道の僕は、誰かと共にいた。
右の道の僕は、一人闇の中。
左の道の僕は、誰かと泣いていた。
右の道の僕は、一人闇の中。
左の道の僕は、誰かと光を浴びていた。
右の道の僕は、一人闇の中。
左の道を覗こうとしたら、余りの眩しさに目が眩んだ。
慌てて目を閉じる。
瞼に残る眩さが腹立たしい。
目を閉じしばし、思案に暮れる。
目を開けると、深い闇。
目を閉じても、深い闇。
不愉快だ。
左の道の輝きが奪った、僕の光。
右の道の先にある光が、見えてこない。
左の道は、僕にとって害悪でしかない。
不愉快だ。
非常に不愉快だ。
この道の先にある光を見つけられなくなった僕は一歩も動けない。
動くべきか、動かざるべきか。
瀬戸際に立たされていた僕は、進んでもなお、瀬戸際から抜け出せない。
光を手にしなければならないのに。
手にしなければならない?
ああ、そうか。
光を手にしないという選択をすればいいのだ。
簡単だ。
実に簡単だ。
闇の中ではすべてが自由。
まっすぐ進んでいるのか、ぐるぐる回っているのか。
進んでいるのか、戻っているのか。
何もわからないのは実に快適だ。
上を見ても下を見ても変わらぬ風景。
快適だ。
実に快適だ。
瀬戸際など、くそくらえだ。
 




