場所
夢の中の自分はたいてい若いのですけれどもヘ(≧▽≦ヘ)♪
※こちらの作品は、ノベリズムさんにて連載中の「誰かのため息は、ずいぶん蒼くて…重いらしい。」でも公開しています。
ああ、この場所は。
時折、夢の中で、立ち寄る場所がある。
夢だとわかっている夢の中で、私は一人、佇む。
野点の席。
お茶を待ちつつ、練り切りを一口、二口。
赤い傘の下で、柔らかな日差しをぬくぬくと浴び。
赤い布張りの台座に腰を下ろし。
誰が点てたのかわからない抹茶を頂く。
美味しい?馨しい?
味覚がないのに、確かに私はお茶を楽しむ。
嗅覚がないのに、確かに私はお茶を楽しむ。
遠くに、山が見える。
あの山は、昔から変わらない。
近くに、池が見える。
この池も、昔から変わらない。
私も、変わらない。
この夢を見るようになってから、変わらない私がここにいる。
思えば、私がわたしであることを決めた時。
あの時から、私はわたしになったのだ。
確乎たる自分を持ったあの日から。
私はわたしであることを忘れぬようにと。
この場所は、それを確認するための場所。
変わらぬ私の姿は、変わらぬ私の信念の表れ。
老いてなお、持ち続けるのは、己の信念。
この場所に来ることができるうちは。
私はわたしでいることができる。
まだ、私はわたしでいることができている。
私がこの場所に来なくなった時。
それは。
私がわたしであることを忘れてしまう時。
あと、何度私はこの場所を訪れるのか。
最後の訪れだという事に、気付かず。
この場所への道は閉ざされるのだろう。
私はお茶を飲み干して、立ち上がると。
目を、覚ました。




