一蓮托生
大層なことやで、しかし。
こちらの作品は、カクヨムさんにて連載中の「オカルトレベル(低)の物語をどうぞ。」にも掲載しています。
こちらの作品は、ノベルアップ+さんにて連載中の「恋のお話を、いくつか」にも掲載しています。
「いっつもいっつも先にばっか行くんだもん!!」
「ッ!!うっせえ!!オメーが遅いんだよ!!」
幼馴染のかず君と私は、いわゆるケンカップル。
顔を合わせれば憎まれ口をたたき、顔を合わせなければ憎しみが募る。
だというのに縁が切れない。なんだこれ。
今日のケンカのテーマは人生について。
かず君さあ、私のこと置いて先に浄土に行きやがったのさ。
あんだけ一生一緒にケンカしながらやっていこうって言ってたのにさあ!!
「ひょろひょろしてっから吹き飛んじゃったんだよ!!」
「うっせえデブ!!」
「なんだよ!!お前なんか肉体ねえくせに!!!」
醜い罵り合いが夢の中に響く。
あーあー、一緒に波乱万丈の人生楽しむって話だったのになあ。
こんなはずじゃなかった。
でもまあ、かず君、ハスの葉に乗っちゃってるからなあ…。
私が極楽浄土に行くまで、かず君は一人ぼっちでそこにいなくちゃいけないわけで。
「まあね、あんたも気の毒だとは思うけどね!」
「お前こそ気の毒じゃねえか!!!」
あかん。
何話してもケンカにしかならない。
「「たった一人でそこにいないといけないなんて」」
でも、気が合うんだよねえ…。
命の切れ目が縁の切れ目?いやいやいやいや…。
共に生きると決めた意志は、命が終わろうと、続いているのですよ。
それは、例えば、命の終え時に、ずいぶん開きがあったとしても。
私は夢の世界を忘れたあとの、自分の悲しみを知っているからね。
未だ悲しみに包まれる、現実の私。
夢の中の私は、こんなにもケンカップルを楽しんでいるというのに。
現実で共にいた時、あんなにも憎しみあっていたというのに、忘れられないたった一人の私の伴侶。
かず君を想って、前を向けない、私。
「あー、目、覚ましたくねええええ!!!」
「起きろよ!!寝坊すんなって!!」
「こんなクソみたいなやつのことで胸を痛めてる自分が気の毒すぎる!!」
「なんだと!!ゴルァ!!!」
死してなお続くこの関係。
現実世界で、手軽に気軽に、一蓮托生の誓いを立ててる人も、いるようだけど。
よーーーーく、考えないと、危ないよ? 怖いよ?
ほら。あそこでも。
ほら、ここでも。
よく見ると、殴り合いしてたり、罪を擦り付けあったり、諍いの絶えない蓮が目立つのよねえ。
…うちはほら、ケンカップルだから、まあ、うん。
「さーてと、悲しみに、暮れてきますかあ!!」
「めんどくせえなあ!!一人ぼっちはよ!!」
「あんたもな!!!」
でっかい蓮の上にただ一人。
私とかず君があえるのは、私が眠りについたときだけ。
会えない時は、お互い一人ぼっちで過ごす。
次に会えるのは、いつかな?
夢の中か、極楽浄土か。
どっちでもいいや、会えるなら。
「またね!!ぼっち乙!!」
「お前もな!!!乙!!!」
げんこつタッチで、さようなら。
ああ、目が、覚める。
悲しい気持ちが。
私を、包んだ。




