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反映ーreflectionー  作者: たかさば


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狂乱

すんごいイケメンでした(*´ー`*)

ずいぶん前に、アイドルの握手会イベントを行った。


私はそのアイドルをほとんど知らなかった。

アイドルという人に会ったことがない私は、正直身構えていた。


ものすごく怖い人だったらどうしよう。

気を使わなければ。

気持ち良くイベントを終えてもらわないと。


若かった私は、緊張度がハンパなかった。

なんでこんな未経験の新入社員にこんな大仕事を任せるのか。

会社の方針にも辟易した。

しかし投げ出すわけにはいかない。


必死にステージを組み、スポットライトを用意し、音響をそろえる。

初めてのことでまるで勝手がわからない。

舞台はまさかのビール箱4つとコンパネ。

動かないよう必死でビス止めし、きれいな布で覆う。


手作り感あふれる看板も用意した。


…ダメかもしれない。


こんな、こんなしょぼい舞台に、アイドルを?!


しかし無情にもアイドルはやってきた。

「本日はよろしくお願いします、すみません、一生懸命準備したんですけどっ!!」


もうどうにも申し訳なくて頭を下げる私に、アイドルは優しかった。


「手作り感あふれるやさしいステージです!ありがとうございます!!」

にっこり笑うその目には、くっきり笑いジワが刻まれていた。


かくして開かれたステージは。


まさに狂乱のステージであった。


小さなステージに、かぶりつきでお客さんが!!!

歌うアイドルを、ファンが囲む。

「ギャー!!素敵いいいいい!!!!」

「キャアアアアア!!!!!!」

「ネバーーーー!!!ネバーーー!!!」


ステージが小さかったことで、至近距離でアイドルに接近できたのがお客さんのテンションをフルマックスに上げたのだった。


ものすごいソロコンサートが終わった後、サイン会が開かれる。


先ほどの乱痴気コンサートが嘘のように静まり返り、サインCDをもらうため、おとなしく並ぶお客さんたち。

私はアイドル横に立ち、未開封のCDを渡す係。


1枚、1枚、CDにサインを入れて、握手をして、一言、二言、ファンとお話をする、アイドル。

目じりの皺は、揺るがない。


用意した200枚のCDが、どんどん減っていく。

ふとお客さんを見ると。

あれ、この人何回か並んでるな…。


???


CDを渡してサインを入れてもらうことに集中していた私は気が付かなかったが、お客さんは何度も並び直していたのだった。


こっそりお客さんのカバンを上からのぞくと、CDがわんさか入ってる!!

そんな人が何人もいるという、この事実。


先ほどのコンサートの、動の狂乱とは違う、静の狂乱をしかと見た。


CDはすべて完売し、イベントは無事終了した。

イベントが終わってアイドルが帰る際、ご挨拶をさせていただいた。


「今日は本当にありがとうございました、いろいろと不手際があったと思います、すみませんでした。」

「いえいえ、とても暖かいイベントでした!ありがとうございました。」


にっこり笑う、その目には笑いジワ。

笑顔が、洗練されている。


プロのアイドルを、しかと見た思い出である。


久しぶりに、そのアイドルを見る機会があった。

年月が過ぎた往年のアイドルは、今も目じりにしわを寄せて、ニコニコしていた。


変わらない、笑顔のアイドル。

あの日のアイドルは、今も確かに、アイドルなのだと知った。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 48/49 ・まさか実際に行ったんですか!? 後半がすごい生々しい気がする。 [一言] イケメンすげぇ^_^
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