ミツバチとスズメバチ
まあまあ、仲良くやりましょうや。
「蜂生に、乾杯。」
クマバチのバーに、ミツバチとスズメバチがやってきた。
今日は、久々の、休息。
いつもは仲間とじゃれ合う彼らだが、たまにはこうして、酒を酌み交わそうと、集まったのである。
「お疲れ様です。」
働き者のミツバチが、モスコミュールを掲げて、乾杯を待つ。
「お疲れ。」
乱暴者のスズメバチが、ジントニックを掲げて、カチンとグラスを合わせた。
「最近、どうよ。」
ジントニックのすっきりした爽快感を楽しみながら、スズメバチが問う。
「イチゴ農園で繁殖させてもらってますよ。」
ライムの香りを楽しみつつ、ミツバチがこたえる。
「相変わらず、人間の手下やってんだな。」
クマバチが、グラスを磨く手を止め、視線をあげた。
「あなたは相変わらず、高い攻撃性をお持ちのようで。」
バーの空気が、ピリッと、緊張感を纏い始めた。
「僕らは人間に愛されていますからね。」
自信に満ち溢れた返事をする、ミツバチ。
「俺らだって、俺らをモデルにしたヒーローが大人気だぜ?」
自信に満ち溢れた返事をする、スズメバチ。
クマバチは、視線をグラスに戻し、また磨き始めた。
「僕らは駆除されることはないですからね。安泰ですよ。」
くいと、モスコミュールを、一口。
「俺らは駆除されたところで、次から次へと繁殖してるけどな。」
くいと、ジントニックを、一口。
「大した繁殖能力ですね。」
グイっと、一口、二口。
「おめーらが弱すぎんだよ、数ずいぶん減ってるらしいじゃねえか。」
グイっと、一口、二口。
「ディスってんですか?!」
モスコミュールを、一気に呷る。
「本当のことを言ったまでだ!」
ジントニックを、一気に呷る。
「やっぱり肉食ってる蜂は獰猛でデリカシーのかけらすらありませんね!」
ガチャンと、空になったグラスを置く。
氷が激しく、グラスの中で回った。
「なんだと、ぐぉらぁ!!!」
ガチャンと、空になったグラスを置く。
氷が激しく、グラスの中で回った。
「みじめですね!動画サイト運営者に食われたり遊ばれたり飼われたりしてるくせに!」
ずいっと、スズメバチに顔を近づけ、ミツバチが睨みつける。
「オメーこそチョーク病かかってカビだらけになって全滅してこいや!!!」
ずいっと、ミツバチに顔を近づけ、スズメバチが睨みつける。
まさに、一発、触発。
ミツバチは、体温を上げ始めた。
スズメバチは、カチカチと顎を鳴らし始めた。
「もう、閉店ですよ。」
クマバチが、磨き終わったグラスを置いた。
目線は、まだ、下を向いたまま。
ブーン、ブーン、ブーン、ブーン。
クマバチの、エリマキが、羽の振動で、ふさふさと揺れている。
「…うらのバーに、メロン農家の方と、蜂収集家の方が来ているらしいんですよね…。」
ブーン、ブーン、ブーン、ブーン。
クマバチの、エリマキが、羽の振動で、ふさふさと揺れている。
「…大学の研究チームが左の居酒屋でなにやら決起集会をしている模様ですね。」
ブーン、ブーン、ブーン、ブーン。
クマバチの、エリマキが、羽の振動で、ふさふさと揺れている。
「…間もなく前の量販店で、人気のゲテモノ食いビューチューバーが実食中継するらしいですよ。」
ブーン、ブーン、ブーン、ブーン。
クマバチの、エリマキが、羽の振動で、ふさふさと揺れている。
「何を、実食すると、思います…?」
クマバチが、ゆっくり目線を、上げた。
クマバチの目の前には、すでに蜂は、いなかった。
「無銭、飲食、ね。」
クマバチは、ただ穏やかに、飲み干された空のグラスを二つ、片づけた。
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