鉄壁
水鉄砲の威力を知るが良い(。>д<)
私は自分に誇りを持っている。
私の前に出たものをなぎ倒し。
私に立ち向かうものを切り捨て。
鉄壁と呼ばれた私。
誰も私を突き抜けることなどできず。
誰も私を乗り越えることなどできず。
勇敢なものが、私を征服しようと乗り込み。
無謀なものが、私を制圧できると信じ、命を散らす。
鉄壁の名を持つ、私を、ただの人が。
ただの、人が。
ただの人は。
知恵を持っていた。
私の鉄壁を前に、ただの人は、水鉄砲で応戦した。
何の威力もない、意味のない攻撃。
私は鼻で笑って、人々をなぎ倒した。
幾年が過ぎ。
私は突如、朽ち始める。
鉄壁の崩れ去る音が響く。
何千万のただの人を退けた鉄壁が、崩れ去る。
体を蝕む、茶色いしみ。
しみが私を、覆いつくす。
崩れ去るのは、長い年月鉄壁を誇った私にとって、一瞬の出来事であった。
誇り高き私は、茶色い屑となり果てた今も、鉄壁であったことを隠さない。
ただの人は、私を讃えているではないか。
―城塞城壁門(出土品)―
透明な箱に囚われてなお、私は、私の誇りを失うことは、ない。




