早朝
夜明け前に目が覚めがちです(。>д<)
今日も夜が明ける。
ああ、また僕は寝ることができなかった。
僕はこのところ、眠れない。
長い夜を、文字を認め、過ごす。
夜は少々、感傷的になり過ぎて、いささか物語が闇を纏いがちだ。
物語を書く自分に、酔っているのかもしれない。
僕の世界は、闇を纏うと、かなり、艶めく。
明るくなってきた。
時刻は、4:40。
僕はパソコンの電源を切り、椅子から降りて背伸びをすると、ウォーキングに、出かけることにした。
早朝、人はほとんどいない。
誰ともすれ違わず、いつものウォーキングコースについた。
木々の香りが心地良い。
少し湿った、水分を含んだ自然の空気が、僕を包む。
「森林浴、か。」
森の中というわけでもないけれど、ここには確かに、ヒーリング効果を感じる何かが、ある。
一周1.5キロのウォーキングコース。
二周して家に帰ると、ちょうど早朝の時間が終わる。
ベンチにはまだ誰もいない。
…少しだけ、この空気をゆっくり座って楽しむ。
芝生がキラキラと輝き始めた。
木々の隙間から、朝陽が届き始めて反射している。
タッ、タッ、タッ…
ジョギングをする若者が向こうからやってくる。
ここは大学が近いので、若い学生のランポイントとして人気が高い。
僕が学生の時、この公園があったらよかったのに。
そんなことを漠然と思いつつ、美しいフォームで駆けていく学生を見送る。
「さ、いくか。」
立ち上がり、コースを一人、巡る。
この公園には大きな池があり、そこからは時折カエルの鳴く声が聞こえる。
も~、も~。
ウシガエルだな。
…小学校の時、たけしが泥だらけになって捕まえて、教室に持ってきたな。
逃げ出して大変だったんだ。女子が泣き出して、先生が怒って。
毎日歩くこのコースで、毎日カエルの鳴き声を聞き、毎日あの頃を思い出す。
記憶はいつも、僕を穏やかにさせてくれる。
穏やかな気持ちを胸に、マイペースに、ゆっくり歩く。
「おはようございます。」
「おはようございます。」
早朝すれ違う老人は、なぜかコミュニケーション能力が高めで、挨拶を交わすことは少なくない。
知らない誰かから声をかけてもらうのは、少しだけ面倒で、少しだけ、うれしい。
僕の存在が、認められているような気がするから。
少し、公園の周りが騒がしくなってきた。
この公園は、幹線道路の横にある。
出勤する人たちの車が、どんどん増えてくる時間帯。
そろそろ、二周する。
家に、帰ろう。
帰宅し、シャワーを浴びて、髪を乾かす。
その隙に、コーヒーを淹れる。
ああ、ペーパーフィルター、新しいのを買ってこないと。
僕は少し猫舌だから、髪が乾くまでは香りを楽しむことにしているんだ。
耳障りなドライヤーの音が鳴り響く中、時折ふわりと漂うコーヒーの香りに、頬が緩む。
…いい香りだ。
髪の乾いた僕は、一人掛けのテーブルで、少しぬるくなったコーヒーを頂く。
僕はミルクも、砂糖も入れない派だ。
頬杖をつきながら、一口一口、香りを楽しみながら、飲む。
目が覚めるという、コーヒー。
カフェインの覚醒作用は、誰もが知るものだ。
けれど。
僕は飲み干したコーヒーカップを洗うと、キッチンの食器棚に置いて、寝室に向かった。
…朝陽が差し込んでいる。早朝の時刻は、朝の時刻へと変わった。
柔らかだった日の光が、力強く輝いている。
僕は、その日当たりの強さに少々辟易しながら、分厚いカーテンを引いた。
朝陽はカーテンに遮断され、部屋の中には、闇が広がる。
「ふぁああ…。」
早朝のリラクゼーションを余すところなく浴びてリラックスできた僕は、今から眠りに落ちる。
コーヒーが目を覚ます?いやいやいやいや…。
僕にとっては、安眠前の、至福の一杯さ。
今日もいい夢、見るつもりだよ?
「おやすみ。」
 




