赤/紅
最近の赤い髪人気にあやかりまして(嘘
こちらの作品は、ノベルアップ+さんにて連載中の「恋のお話を、いくつか」にも掲載しています。
異世界転生って、聞いたことある?
実はあたし!!
日本って国にいたんだけどね!!
ある日突然さあ、こっちの世界に来ちゃったんだわ。
トラック突っ込んできたなあって思ったらここなんだもん!
トラックってね、鉄の、生きてない魔物みたいなやつなんだけど!
まあそりゃあびっくりしたわ!!!
でさ、いきなり森の中に飛ばされちゃって!!
ぎゃあぎゃあ魔物はうるさいし、ホントテンパっちゃってさあ!!!
半泣きでうろうろしてたのよ!!
そしたら薄暗ーい森の奥からさあ!!
真っ赤な何かが見えたわけよ!
何だろうって目をこらしたら、真っ赤な髪の男の人でさ!
あたしのこと、助けてくれてね!
あたしここでは背が低い方だから、ずっとその人の真っ赤な頭、見上げてたの。
あたしのいた日本ってところはね、みんな基本的に髪が黒くて。
こんなにも赤い髪の毛って、見たことなくてね。
珍しくて珍しくて!!
男の人もさ、あたしの髪の毛、相当珍しかったみたいで、ずーっと見てたの。
森を抜けるまでの間、いろいろ話して、仲良くなってね。
ちょっとだけ、おうちに住まわせてもらって。
この世界って、ボチボチ異世界人が来るらしいね!
あたし、町の偉い人のところに行くことになっちゃってさ。
行ったらさあ、なんかいきなり、俺の嫁になれとか言われちゃって!!!
在り得ないでしょ!! あたしその時まだ18だよ?!
ハゲ散らかしたおっさんがさあ! これは決定だとかいうんだよ!!!
でもあたし、なんもチートとか持ってなくってね。
ああ、チートってのは、すごい能力ってことよ。
もうどうしようもないな、あきらめるかって、思ってたんだけど。
赤い人がさ!!! 乗り込んできて、くれたのよ!!!
ものすごく、怒っててね。
赤い髪が、逆立ってて。
髪の毛の色が、怒りを纏って、紅に染まってたの!!!
赤い人、町の偉い人ぶちのめしちゃってさ!!!
…めっちゃ、カッコよかったの。
あたし、その人と一緒に、その町飛び出して。
「で、今、ここにいる…と。」
僕の目の前には、おしゃべり上手な、おばあちゃん。
「あたしの髪はね、黒かったんだよ。」
「今の姿からは想像もつかないな…。」
白い髪を長いみつあみにしたおばあちゃんは、ニコニコと笑ってる。
黒い髪の人なんて、この世界じゃほとんど見たことないんだけどな。
おばあちゃんは、この村一番のお話上手で、いつもいつも、子供たちに面白い物語を聞かせてくれるんだ。僕はもう、ずいぶん大人になってしまったけれど、時折おばあちゃんの話を聞くためだけに、この村に立ち寄るように、している。
「想像つかないっていうならあの人見なよ!!!」
おばあちゃんが指差す先には、スキンヘッドのおじいちゃん。
「ああ? なんだなんだ! 騒がしいな、おい!!!」
お茶を三つ持って、こっちのテーブルにやってくる。
おじいちゃんのお茶は本当においしくてね、僕大好きなんだよ。
「今でこそ一本も残ってないけど、この人は真っ赤な髪をしていたのさ。」
「ええー!! 僕一回も毛が生えてるの見たことないんだけど!!!」
この二人は、僕がウンと小さいころから、ずっと白髪とハゲだったはずなんだけどな…。
「今でもあたしの目には、あの日の燃えるような、赤い、紅の、髪の毛が、見えているんだよ。」
「俺だって!! カナの黒い髪の毛が今でも見えてるぞ!!!」
「はいはい、ごちそうさま。」
僕は年季の入った、ラブラブ夫婦を目の前にして。
うらやましいなあと思いながら、お茶に口を付けた。
…本当に、おなかいっぱいだよ!!!
こちらの作品は、ノベルアップ+さんにて連載中の「恋のお話を、いくつか」にも掲載しています。




