表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/135

ひつじの群れ

何匹数えたところで。

どうにも、こうにも、眠れない。


明日は、五時起きだというのに。


いま、23:00ちょうど。


まずい。


今すぐ寝ないと、仕事がきつくなる。


寝よう。


眠れ。


寝るんだ。


眠れない。


……。


そうだ。

ヒツジを、数えてみよう。


眠れない時は、ヒツジを数えるものだ。


ヒツジが一匹、ヒツジが、二匹。


俺はあまり想像力が豊かでないから。


ヒツジが三匹、ヒツジが、四匹。


目を閉じた俺の脳裏には、ヒツジはいない。


ヒツジが五匹、ヒツジが、六匹。


目の前は真っ暗だ。


ヒツジが七匹、ヒツジが八匹。


真っ白なヒツジを思い浮かべなければならないというのに。


ヒツジが十匹、ヒツジが、十一匹。


頭の中に、羊の群れが見当たらない。


ヒツジが十二匹、ヒツジが、十三匹。


いないヒツジを読みあげるだけ。


ヒツジが十四匹、ヒツジが、十五匹。


いないものを数えるなんて。


ヒツジが十六匹、ヒツジが、十七匹。


意味あんのかな。


ヒツジが十八匹、ヒツジが、十九匹。


意味ねえな。


めんどくせえ。


もういいや。


俺はスマホを手に取って。


読みかけのネット小説を、読み始めた。


気が付いたら、外が明るい。


ああ、今、夜明けって、早いのな。


カーテンを開けて、ぼんやり外を、眺めてみる。


雲が、朝日を浴びて、もこもこと空に浮いている。


俺はベッドに転がったまま、空に浮かぶ、ヒツジを眺めた。


ヒツジが一匹、ヒツジが、二匹。


ヒツジ雲かな。


ヒツジが三匹、ヒツジが、四匹。


うろこ雲かも。


ヒツジが五匹、ヒツジが、六匹。


わた雲もあるかな。


ヒツジが七匹、ヒツジが八匹。


今日は晴れそうだ。


ヒツジが十匹、ヒツジが、十一匹。


羊の群れかあ。


ヒツジが、十二匹、ヒツジが、十三匹。


のんびり、してそうだよなあ…


ヒツジが十四匹、ヒツジが…


いいよなあ・・・。


・・・。


・・・。


・・・?


・・・!!!


今、何時だ?!


慌ててスマホを手に取るが、昨日小説を読みすぎたためか、充電が…ゼロ!!


しまった!!充電器にセットするのを忘れてた!!!


という事は!!!


アラーム!!!


アラームもならなかったってことなんじゃ?!


サーっと体温が、下がってきた。


ヤバイ。


ヤバイ。


とにかく、まずは、充電だ。


テレビ、テレビを、つけるぞ、つけないと!!



ぶぃん


……ごくり。


ゆっくり、テレビの、画面に映る、時刻を、見る。



ぎょーーーーえーーーーー!!!!



9:36だとおおおおおおおおお?!


もう、ダメだ。


詰んだ。


会社に連絡を入れようにも、充電ができていない。


一人暮らしの俺は、スマホしか電話をかける手段がない。


そもそも、スマホの中にしか、連絡先が入ってない。



「ま、仕方なかんべ。」



開き直った俺は、コーヒーを入れて、充電を待つことにした。



窓の外は、雲一つない、青空。



今朝がた数えた、空に浮かぶ羊たちは、すでに皆、出勤したようだ。


「まったく勤勉な奴らだよ。」



社会人としての自覚が欠落した俺は、真っ青な空を見上げて、悪態をついた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 16/16 ・あるある〜 [気になる点] よく動画を見まくって学校に遅刻したものです。最近はなくなったなぁ [一言] 想像力に感服
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ