雨ざらし
僕は三輪車。
このおうちの、お姉ちゃんと、弟君が、大喜びでのってた、三輪車だよ。
初めてこのおうちに来たのは、もう15年も前なんだよ。
お姉ちゃんが三歳になった日、僕はこのおうちにやってきたんだ。
お部屋の中で、お姉ちゃんが僕に乗って遊ぶ。
最初はおっかなびっくり、だんだん上手に乗れるようになって。
上手になり過ぎて、ふすまに突撃しちゃったりして。
ケガがなくてよかったけど、ふすまの穴が、目立っちゃって困ったんだ。
お母さんが笑いながら、ここは今日からシールを貼って遊ぶ場所になりましたって宣言しちゃって。
和風の部屋の、和風のふすまに、ホワイトボードがいきなりついて。
アレはなかなか楽しかったよね。
お姉ちゃんはだんだん大きくなってきて、僕に乗ると、畳が傷むようになってきちゃって。
フローリングに、僕は移動することになったけど。
お姉ちゃんの体重は、フローリングさえもへこますようになっちゃって。
残念だけど、押し入れの中に、引っ込むことに、なっちゃった。
僕の代わりに来たのは、自転車。
僕の出番は、なくなった。
ずいぶん押し入れの中で過ごしていたけれど。
ある日僕に、声がかかった。
弟君が、二歳になったから。
お姉ちゃんと弟君は、十歳年が離れているから、八年ぶりの、お姉ちゃんとの再会。
お姉ちゃんは、大きくなりすぎて、もう僕には乗れないけれど。
弟君が、これから僕に、乗ってくれる!
弟君は、僕がお気に入り。
部屋の中で、僕を乗り回す。
お姉ちゃんとは違って、少々乱暴だけど、無謀な運転はしないみたい。
弟君は、僕がお気に入り。
僕と一緒に、外に行きたいんだって。
僕はおうちを飛び出して、近所の公園まで、弟君と一緒に、毎日繰り出すことになった!
毎日毎日一緒に遊んで。
弟君も、大きくなった。
僕はもう、弟君をのせるには、小さい、存在。
弟君は、自転車に乗って、お友達と出かけてしまった。
庭に置き去りにされた僕。
このおうちには、外で遊びまわった僕を収納する場所がないみたい。
僕は庭の端っこで、たったひとりで、雨に打たれて。
お姉ちゃんと遊んだ思い出。
弟君と遊んだ思い出。
いっぱいいっぱい、思い出したよ。
僕は涙を流すことはできないけれど。
雨が、僕に降り注ぐから。
ちょっぴり、泣いた、気分に、なれた。
ずいぶん泣いた、日もあった。
「ちょっと汚れてるけど、どうぞ!」
お母さんが、誰かと話をしているみたい。
僕は、庭の片隅から縁側まで連れてこられた。
久しぶりに見上げた弟君は、ちょっとカッコよくなっていた。
「あげるの?」
「うん、うるちゃんとこの子が、欲しいんだって。」
「じゃあ、きれいにしてあげないとね。」
僕は、弟君と、お姉ちゃんに、タオルでごしごし、ごしごし、されたよ。
ぼくは、ぴっかぴかになった!!
雨に打たれて、ホコリを浴びて。
薄汚れた僕だったけれど。
僕を必要としてくれる、誰かがいたんだね。
「遊んでくれて、ありがとう!」
「今まで外に置きっぱなしでごめんね。」
「うるちゃんとなかよくしてね。」
うん、僕、行ってくるね。
今まで、ありがとう。
僕は、今日、新しいお友達に会いに行くため、このおうちから、旅立ちます!
今、三件目の出向先にいらっしゃるという話です(*´-`)
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