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反映ーreflectionー  作者: たかさば


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118/135

讃美歌

えらいことになった。

なんと、クリスマスのイベントで…旦那がステージに立つことになったのである!!


「なんか山平さんがね、ぎっくり腰で立てないんだってー!」

「ちょ…!!そんな重大な任務、二つ返事で…請け負うな!!!」


まったくもって何も考えていない旦那は、代理で舞台に立ってくれないかなあというお願いに、お願いにぃイイイイ!!!


「そもそもあんた讃美歌なんて歌ったことあんの!!まったく知らないくせに歌えるわけねえだろうが!!!」

「大丈夫だよー!明日練習あるから、歌える歌える!!」


絶対歌えん!!!!市民祭り会場で周りをドン引きにした己の歌唱力を知らんのかああアアあ!!!

…あかん、これは被害者が出る前に何としてもやめさせなければ。

私は明日、旦那に同行する事を決めたのであった。




「あ、会長!!ありがとね、ピンチヒッター!」

「どういたしまして、でも僕全然知らないから、教えてね!」


クリスマス会の運営を任されている、地区会長の宮崎さんがニコニコして出迎えてくれたのだが。


「あの、この人合唱経験ないし、やめた方が絶対いいんです、でね、」

「大丈夫大丈夫!!ここにいる人はみんな経験なしから始めたんだよ!!」


「経験とかそういうレベルじゃなくて、」

「まあ、駄目だったら考えるわ!とりあえず様子見様子見!」


ダメだ!!じじいは人のいう事なんか聞きゃあしねぇ!!!


なんでも、男性がただでさえ少ないのに貴重な山平さんが抜けちゃって、混声合唱団に重低音がなくなっちゃって困っててって話なんだけど…。助っ人で入る旦那は、重低音どころか、究極破壊音しか出せないんですよ、ねえ、正気ですか、合唱団の皆さん…!!!讃美歌どころか、鎮魂歌になりかねない、今日練習して、明日本番でしょ?!ムリムリムリムリムリムリ(ヾノ・∀・`)


「こんにちはー!ええと、こちらが助けてくれる方?」

「どーもー!」


「あの、この人合唱無理なんです、やめといたほうが、」

「大丈夫よぉー!みんなで声を合わせれば、おのずと麗しいハーモニーが生まれるの、安心して!」


ダメだ!!ババアも人のいう事なんか聞きゃあしねぇ!!!


「はいはい!!じゃあね、まず一回通しましょう、で、そのあとパート別に分かれて練習ね。」


♪もーろーびーとーこぞりいて~♪


ああ、なんかクリスマス会で聞いたことある曲だ。ふうん、こういう歌詞なのか。やけに煌びやかな声の人が多いな。…そうか、ソプラノが多いんだ、なるほどねえ。


「じゃあ、会長入って!一回聞いたからわかるでしょ!!」

「うん、わかったー!」


でかい体を揺らしながら、テケテケと…壇上に上がってゆく旦那!!!

あのへらへらした顔は…絶対に分かってないやつだ!!!!


お嬢さんの演奏が始まり、ピアノが心地良く、鳴り響き…。


≪≪≪ぼーえ――――!!!≫≫≫


厳かな雰囲気をなぎ倒す、恐ろしいまでの不協和音が!!!

クリスマスの舞台に心地良く耳に届かねばならない歌声が、たった一人のだみ声でここまで穢されようとは!!!

正直、歌い終わるまで聞き続ける気力、気力がああアアあ!!!


針のむしろとはこのことか。困惑するおばさまがたの顔!!おかしな表情の指揮者!!ピアノを弾く女子も顔が引きつってるじゃん!!!



「わかった、会長は声が低すぎるんだ!!あのね、会長は無理だわ。うちはバス要員は必要としてないっていうか…。」

「ええー!せっかく来たのにー!」


はりきって練習会場にのこのことやってきた旦那は、戦力外通告を受けてやや憮然としている。

いや、妥当だ、むしろお前はここにいてはならん!!


「奥さんちょっと入ってみてよ!!声低いよね、アルト?テノールパート歌えるんじゃない?」


ギョ――――――エ――――――――――!!!


「無理、無理ですよ、わたしゃ歌なんか歌いたくない、無理無理!!」

「そんなこと言って―!市民祭りでアニソン歌ってたの見ましたよー!!」

「あ!あれ奥さんだったの?!見た見た!!オタ芸打ってた人がいたやつでしょ!!!」


ちょ!!!


「奥さん、まさかこの空気このままにして帰るつもりじゃないですよね、入ってください。」

「は、はい?!無理、ちょ、ちょっと!!」


無理やり、壇上に引き込まれた私、私ぃイイイイ!!!



クリスマスイベント当日。

会場は駅前商店街の広場に設営され、大きなクリスマスツリーとステージ、出店がたくさん並んでいる。

美味しそうなフードやかわいいおもちゃ、フェイスペイントのお店などがにぎわっているのが見える。


「ねーねー!お母さん歌うの?ウケる!!動画とっちゃお!!」

「かっこいい。」


白いポンチョと、派手なクリスマスハットを被されて、私はステージ、ステージに上がることに…。くそう、どうしてこうなった、何でこうなった。


「ねーねー!あっちでターキー売ってるよ!!」

「マジで!!あたし食べたい!!!」

「僕も欲しい。」


「ずるい!!私の分も!!」

「奥さーん、こっちこっち!!!」


ああ、私はターキーすら食べることができないというのか。まあいいや、歌い終わったら即刻衣装を脱いでいの一番にターキーの列に並ぼう。


かくして舞台に上がり、ガツガツと肉を食い千切る旦那と娘、息子をステージの上から見つつ、出番を終えた私だったんですけども。


「あ、奥さん、これ参加賞ね、もらって!」

「はあ、ありがとうございます…。」


小さなケーキをもらって、私は旦那と子供たちの元へ。


「あ、いいな!!なにかもらってる!!」

「ずるい!!」

「ずるいってなんだ!!これは私の出演料だよ!!!」

「おつかれさま。」


息子には分けてもいい!!!だが、娘と旦那にはやらん!!!


ターキーを買い、クリスマスケーキを買い、美味しそうなクリスマスプレートを買い、クリスマスアイスケーキを買い、クリスマスちらしずしを買い、家に帰ってようやく落ち着いて、一息…。


「ねーねー、これめっちゃうまい!!」

「うーん美味い、バクバク!!!」

「ずいぶんおいしい。」


一息、付けない…!!!

ここで一息ついたら、今夜も晩御飯がなくなる事必至だ!!!


私はとっ散らかった食卓の上のごちそうに、勢い良く手を伸ばしたのであった。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 118/118 ・歌えるっていいですね。いやいや大変だったんでしょうけど [気になる点] >ダメだ!!じじいは人のいう事なんか聞きゃあしねぇ!!! >ダメだ!!ババアも人のいう事なんか聞…
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