心色
僕が色を持たない人だと気が付いたのは、いつのことだろう。
僕はやけに、色のない子供だった。
同級生たちが、おいしい給食のメニューで浮かれているとき、やけにキラキラと輝いているのを見た。
同級生たちが、クラスの誰かが隣のクラスの誰かと二人で出歩いたと聞いて色めき立ち、やけに色が舞ったのを見た。
同級生たちが、どのアイドルがかわいいという話をするとき、やけに教室の中が輝いた。
同級生には、皆、色があり、時折色を強めて、ほかの色とまじりあい、さらなる演出をしていた。
だが、僕には、色が、なかった。
色めき立つことができない、僕には、色がないのだ。
皆、心に色を持っている、けれど、僕は色を持たない。
心の色を、皆がクルリクルリと変えているというのに、僕は変える色を持たない。
心に色がないのだから、色を外に出せるはずがない。
何をしていても、色がない。
周りに合わせて、色を持っているふりをする。
何もない空間に身を投げ出した瞬間でさえ、僕の心に色はつかなかった。
僕は、色を持たずに生まれてきてしまったのだ。
空の色を目に焼き付けて、僕は色のない世界の住人になるために一歩踏み出した。
おかしなことに。
あれほど色を持たなかった僕の目の前に、鮮やかな、赤が散る。
ああ、この色は。
僕の中に、確かに流れていた、命のあかし。
次第に冷えてゆくからだが、赤い色をぼんやりとにじませ始める。
僕は、色のない、世界へ。
色の、ない、世界へと。
この、世界に。
別れを。
わ、か…




