表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
反映ーreflectionー  作者: たかさば


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

114/135

情、無情

きっかけは、落ち込んでいた、あの日の君の目。


ずいぶん騒がしい教室の隅で、君は間違いを悔やんでいた。

なんてことのない過ちを、君はやけに悔やんでいたね。


少しでも、気分が晴れるのであれば。


僕は、君に、声をかけた。


僕の言葉は、少し不格好で、あまり頼れるものではなかったけれど、君にはずいぶん力を与えたようだった。


君は、どんどん、僕の言葉を欲するようになったね。

やけにフレンドリーに、僕の心の中に入り込んできた、君。


いつしか僕は情を持ってしまったんだ。


なぜだか、いつも、姿を追ってしまう。

なぜだか、いつも、背中を見てしまう。


なぜだか、いつも、君の姿を探してしまう。


君は、いつの間にか、僕の中で、ずいぶん大きな存在になっていたんだ。

君の中でも、きっと僕の存在は大きくなっていったんだろうね。


離れて暮らしながらも、いつも君がいる。

君は離れた場所にいるというのに。


僕の心の中の、ほぼほぼを君が占める。

君の心の中の、ほぼほぼを僕が占める。


いつのころだろうか、情が愛情へと変化したのは。

ただの情は、愛を得て形を変えた。


互いに思う気持ちを伝え合い。

互いに願う気持ちを心に抱き。

互いに愛情を交換し合う。


いつのころからか、君はやけに欲張りになってしまった。


僕の気持ちを独占しているのに、それでけでは満足しなくなってしまった。


どれだけ言葉を送っても、満足しなくなってゆく。

君は僕に言葉をくれなくなった。

けれど、君は僕に言葉を求める。

君は、なにもくれないというのに、僕の言葉を欲しがる。


君はもらう立場で、僕は与える立場。


僕だって、欲しい。

僕だって、欲しい。

僕だって、飢えている。

僕だって、寂しい。


いつしか僕の中から愛が消え。


僕に残ったのは、ただの、情。


今まで共に過ごした年月が、君を見捨てられない。


君にあるのは、ただの情。


君は僕の情を得てもなお、愛情を求め続ける。


僕以外の人からも、情を求める。

僕以外の誰かからの言葉を求めて、君は僕の前で情を乞う。


僕じゃない誰かの情を得てもなお、僕の情を得ようともがく。


ああ、これ以上、僕から奪ってゆくのはやめてくれ。

ぼくにはもう、君に差し出せる情など残って。


…残って、いないと、気が付いた。


気が付いてしまえば、あとは。


欲張りなただの顔見知りの前から、僕は姿を消すだけだ。


君は僕の知らないたくさんの誰かから、たくさん情を奪い続けたらいい。


僕は欲張りは嫌いだ。

僕は、欲張りは、嫌いだ。


僕の情を得て、愛情を得て、愛情をすべて奪い、情をすべて奪い。


君の前から、消える事ができる。


これで僕は情を奪わない誰かを探しに行ける。


君に残るのは愛情ではない。

君に残るのは情ではない。


ただ、執着心だ。


君は僕から何を奪いつくしたのか気が付かないまま、生きていけばいい。


さようならも言わず、僕は…姿を消す。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 114/114 ・んがあああ、やばいよ。軽くホラーです [気になる点] うーむ、そういうものなのか? コミュニケーションは難しいものです。 [一言] やっぱりホラーかもしれない
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ