志
自分の無計画っぷりといったらもう。
こちらの作品は、カクヨムさんにて連載中の「オカルトレベル(低)の物語をどうぞ。」にも掲載しています。
―――おじいさんと、子供たちが集まってお話をしているよ。
「志は高く持ちましょう!」
≪≪≪はーい!≫≫≫
僕はパイロットになるよ!
あたしはおよめさんになる!!
「うーんと!将来なりたいものではなくてね?」
≪≪≪よくわかりませーん!≫≫≫
じゃあ、僕は優しい人になろうかな!
じゃあ…あたしはわがままな人になろう!
「君たちは相性良さそうだから縁を結んでおこうかな!」
わーい!よろしくね!
わーい!よろしくね!
≪≪いいなー!≫≫
「もう少し具体的に言うとね、志ってのは目標の事なんだよ。」
むつかしいや!
きれいな人になりたいっていうのはだめ?
「きれいな人になって、何をしたいのかな?」
皆にきれいだねって、褒めてもらいたい!
ほめてもらってもしかたないじゃん!
自慢できるんじゃないの?
私褒めたい!!
「そうだね…じゃあ、君はそれでいいかな。行ってらっしゃい。」
はーい!
―――女の子?は雲の向こうにかけていったよ。
「褒めたい子は、いろんな人をほめるっていう目標を持ったらどうかな?」
うん!私いっぱいいろんな人、褒める!!
「じゃあ、君はそれで。行ってらっしゃい。」
はーい!
―――女の子?は雲の向こうにかけていったよ。
「やりたい事とか、ないのかな?」
僕はいっぱい勝ちたいや!
「勝つという事は、負ける事もあるんだけど、それでもいい?」
ええー、負けるのは嫌だな…。
…戦わなければいいんじゃない?
バーカ、じゃあどうやって勝つんだよ!!
誰にも負けない強い人になりたい!
「じゃあ、君は誰にも負けない強い人になってごらん。行ってらっしゃい。」
はーい!
―――男の子?は雲の向こうにかけていったよ。
「志はあんまり高くてもね、駄目なんだよ。」
じゃあ、僕は普通に生きたい。
普通なんてつまんないじゃん。
「普通に生きることは案外難しいよ?それでもいい?」
うん、それでいいや。
「じゃあ君はそれで。行ってらっしゃい。」
はーい。
―――男の子?は雲の向こうにかけていったよ。
「普通がつまんないなら、常識を超えるのを目標にしてみたら?」
それ、おもしろそう!
「じゃあ君は、これで。いってらっしゃい。」
はーい。
―――男の子?は雲の向こうにかけていったよ。
「さ、君で最後だけど、どうしようか、志、決まった?」
…僕は生まれたくないんだ。
「どうして?」
ここで、ぼーっとしていたい。
おじいさんは、男の子?の頭をそっと撫でたよ。
「君は…ああ、志が高すぎた子だったのか。」
なんか、疲れちゃったんだ、僕。
「高すぎる志はきつかったでしょう?」
うん、その疲れが取れないんだ。
「じゃあ、今度は低い志を持って生まれたら楽になるよ。」
…せっかく生まれるんだから、高い志を持とうと思ったんだ。
「その気概は素晴らしい事だったと思うよ、ただ…挫けてしまっただけなんだよ、君は。」
人を否定し続けることがこんなにも心を貧しくするなんて思ってもみなかった。
「ああ…君、前の人生の記憶に引っ張られ始めてるね。」
忘れても滲み出す位、深く刻まれちゃったんだ。
「じゃあ、今度の人生は飛び切り幸せなものにしないといけないね。」
とてもそんな人生を送れると思えないよ。
「じゃあ今度は、すべて受け入れることを目標としたらどうかな。」
僕は消えてしまいたい。
―――うーん、これはいけませんね。少々、記憶を消して差し上げましょうか。
―――はい、完了。
「何も考えず、人生を楽しんでおいで。」
はーい!
―――男の子?は雲の向こうにかけていったよ。
「純真無垢で生まれることになっちゃいました。」
―――傷ついた心が癒されるといいんだけどね。
「幸せに人生を送れたら癒されるはずなんですけどねえ。」
―――癒されるような人生を送るのが難しい時代だからね。
「志を持たない魂は増えていく一方ですよ。」
―――純真無垢で送り出すのも、ある意味危険だね、言いたいことに遠慮がないから。
「私はすべての魂に志を持たせてここを出ていってほしいと願ってるんですよ。」
―――それはずいぶん、高い志だね。
「志は高く、それが私のモットーですから。」
―――高すぎるとだめになるんじゃないの。
「高すぎるから、こんなことになってるんですかね…ちょっと落ち込んできました…。」
―――まあまあ、次のグループがもうじき来るよ、頑張って。
「やる気が出なくなりました…。」
―――仕方がないなあ…。子供にするかあ…えいや。
―――おじいさんは、あっという間に、男の子になったよ。
―――おじいさんは生まれる時のナビゲーター。
―――たまに人生終えた魂の中からポッと出てくるんだ。
―――ふつうは子供の形になるのに、なぜかおじいさんになってしまう、変わり者の魂。
――あー。
―あーあーあー。
「あー、あー。」
「えへん!本日は晴天なり―!」
「僕、久々におじいさんになったよ。」
ねえねえ、僕はどうしたらいいの?
「君は…もうじきお友達が六人来るからね、その子たちと一緒に、志を決めるんだよ。」
ふーん。
≪≪≪あっちだってー!!≫≫≫
「さあみんな、こっちへおいで。」
≪≪≪はーい≫≫≫
「さあ、みんなで今から、お話をしよっか。」
〈≪≪≪はーい≫≫≫〉
―――はは、かわいいなあ。
「…僕子供大好きなんだよね。」
あたしもすきー!
「じゃあ、君はたくさん子供を育てることを目標にしたらどうかな?」
はーい!
―――あんまり神様業さぼるとまずいけど、まあ、今は緊急事態だし。
―――とりあえず、次のおじいさんが来るまでは。
―――全員に志持たせることを僕の目標としよう。
「みんな、志を持って生まれていくんだよー!」
≪≪≪はーい≫≫≫
雲の上に、明るい子供たちの声が、響いた。




