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カードレース・スタンピード!!  作者: 能登川メイ
episode 8 本当の悪の目覚め。???vs良襖&千里vs???
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堂々決着!! ホムラvs千里その⑩

ーーーー引き当てたそれは、これまでも千里を助けてきたカードだった。


それこそ、最初の最初から。


御旗チエカとの、最初のレースの時から。


彼の相棒、グレイトフルトレインと共にAi-tubrを打ち倒して来たカードだ。


最初に試練を打ち破った時も、このカードが切り札となった。


そして、今。


「…………まさか、最後にコイツで決めることになるなんてな」


このカードは、当初の誰の予想をも超えた成果を上げる。


「ホムラ、お前に見せてやる。手繰り寄せた奇跡って奴をな!!

ーーーー手札から《クライマックス・ラン》を発動ッッッ!!」


「ッ!?」


その切り札は、地響きを引き起こす。




《クライマックス・ラン》✝

ギア4アシスト スカーレット・ローズ

◆【捨て札のギア3マシン一枚を選択】選択したマシン一枚をセンターの上に重ねて呼び出す。その後、センターの下のギア1を可能な限り場に出し、このカードをセンターの下に重ねて置く。




高まりゆく地響きの中、ホムラが恐る恐る問う。


「その、カードは……初期の初期の最初期のカード!? 儂らAi-tubrよりも先に開発されたカードだぞ!!」


「ああ、そーみてーだな。俺もこのゲームが始まったばっかの頃、チエカとのチュートリアルで使ったよ!」


大地がひび割れゆく。


混迷を極める戦いに終止符を打つように、逆転の音が鳴り響く。


「コイツは捨て札からギア3を復活させ、その周囲に取り巻きを呼ぶカード!! 俺が呼ぶカードは…………わざわざ言うまでもないよな?」




ーーーーGOSYAAAAAAAAAAAAAAAA!!




そして轟音を立て、大地を突き破り現れるのは千里の相棒。


深緑の人面列車。


グレイトフルトレイン。


「そしてコイツの横に呼び出すギア1はセンターの下から選ぶ!! さーてとなにが残ってたかな?」


「今センターに置かれているのはチエカと…………まさか、まさかまさかまさかぁ!!」


戦慄する。


前のターン、極限の中で既に布石は打たれていた。


「ああ、残るギア1はたった二枚!! 来やがれ《グリーンタートル》と《アイギス・シールド》!!」


トレインのついでのように、湧き出る彼らこそがキモだ。


POW0の防御用マシン。


それを攻撃に使うからこそ良い。


「バトルだ!! 三体の連携攻撃で妲己威を攻撃!!」


最後のバトル。


妲己威を打倒可能とする唯一の一手が打たれる。




三体連携ステータス…………POW10000+0+0=10000!!




DRAW 妲己威DEF10000vs10000POW三体連携 DRAW




「お前が狙っていたのは…………相打ちかっ⁉」


「ああ。なんのためにチエカのコストを支払う時、パワー0のマシンだけを残したと思っていやがる?」


「まさか……あの時点でそこまで考えて……!!」


このカードを引くことをわかっていた、訳では無い。


他の勝ち筋もあるにはあった。だがそのうえで、更に別の勝ち筋を作り出すために手を打っておいたのだ。


奇跡とは手繰り寄せるもの。その言葉を思い知ったことだろう。


人面列車の顋が妲己威に迫る。


妲己威の切り返しが顋を迎え討つ。


激突。




ーーーーガブッ!!! グシャグシャズグシャアアアアアアアアア!!




「ぐぎぃ!! ぎゃあああああああああああ!!」


上半身を噛み潰され、なおその体は砕けない。


だがその下半身をプレスするように、両側から二台のマシンが激突する。


不可思議な守りが剥がれ、ついに妲己威のボディが砕け散る。


閃光。


爆裂。




ーーーーDOLOOOOOOOOOONN!!!!




双者相殺。


4機のマシンが崩れ落ちる。


ただの狐アバターに戻ったホムラも。


トレインに乗車していた千里も吹き飛ばされる。


だが、最後に笑うのは…………!!


「……センターのマシンが破壊された時……『下になったマシンが表に出る』……か!」


「ああ……俺のセンターに残っているのはたった一枚!! もーひと仕事だぜチエカ!!」


砕け散る列車の奥。


ぎらりとホムラを睨む碧眼があった。


「ーーーーさーてと。覚悟決めてくださいよ?」


「は……はうっ!!」


瓦礫の向こうから、ぎらりと睨む視線にたじろぐホムラ。


もはやどんな手も残されていない。


ゆくべき道はひとつ。


ゴールまで七キロの走行地点まで吹き飛ぶも、それでもなお高らかに叫ぶ。


切望した勝利、それを確定させる一手を!!


アクセルをかける。


かける。


駆けるッッッ!!


「ウイニングラン!! 行くぜ、勝利の導き手チエカでGOALだ!!」


「あーあー、まもなく最後の走行となります。コースの内側に立ち尽くしてーーーー思いっきり轢かれやがってください!!」


「あ……ああっ…………!!」


為す術なく、まともなアバターも無く、言葉すら紡げず、ついでに吹き飛ばされる意味すら失って。


ホムラは。


良襖の心を壊し、ガタガタのゲーム世界カードレース・スタンピードを立ち上げる要因となる株式会社タギーを立ち上げ、自らの手で千里や仲間たちを苦しめ続けたタギー会長にしてAi-tubr《試練の与え手ホムラ》は。




すれ違うように、などと生やさしくなく。


真正面から、金色のバイクに撥ね飛ばされる。


「の…………のわあああああああああああああぁぁぁ!!」






千里残り走行距離…………7→3→0=GOAL!!







ホムラの体が崩れ落ちる。


全ての権利が彼からこぼれ落ちていく。


強烈な苦痛と自由の剥奪を以て。


ようやく…………ここに、巨悪の一柱が討たれた。











激戦の結果廃虚のようになったゴール地点にてそれでも千里とチエカは小躍りして勝利を祝う。


「やりましたーーーー♪ わたしたち、大ッ勝利!!」


「ああ、勝った勝った!! さーてと……」


ギロッと睨まれ、震え上がる中型動物の姿があった。


敗北によりチエカのアバター体を完全に喪い、それでも小さな獣の身ひとつでそろりそろりと逃げようとしたホムラだ。


「よー。どこに行くんだァ?」


「お、お主と一緒に、罪を償う準備だぁ!!」


「日本語おかしーだろーがよこら黙って逃げんなッッッ!」


「ひ、ひぃっ!! こ、こうなったら霊体化で……」




ーーーージャキィッッッ!!


「んひっ!!」


背筋を凍らせたのは、キルスイッチこと《ガイルロード・ジューダス》を構えた音だ。


「逃げようとしたら、さっきみたいにジューダスの種で眉間撃ち抜いてやる」


「そ、そんなッ!?」


「さあ観念して大人しくしろ!!」


むんずと掴み、吊し上げる。


「さーてどう料理するか……」


「あーの千里サン? 一応ゴロータイの精神なんであんまり酷いことしない方が……」


「酷い事? 友達や仲間を立て続けに傷つけられ、犯人を追ったらゲームの世界に引きずりこまれ、訳のわからないうちに火あぶりにされるみたいな事か!!」


「……オッフ」


あまりの酷さにたじろぐ。


彼女でも説明抜きにそれをやられたらしんどいかもしれない。そういえばホムラに乗っ取られた()()も酷い混乱に陥ってた気がする。


さて彼のつらさは如何程か。


「コイツには少なくても奪ったもんを全部返してもらう。良襖も詩葉も或葉も全部無事に返してもらうまではきっちり絞らせて貰うぜ!

そーさな……始まりの街(シュガーマウンテン)のカフェテリアのパラソルに縛り付けて、コイツが好きそーな和のスイーツを、コイツが辛抱たまらなくなるまで心底うまそーに喰ってやる!」


「なんじゃその凄い地味じゃが地味に一番効きそうな拷問ッ!!

やめろ儂はこんな所で引き回されとぉ無いッ!!」


「だったらとっとと全員無事に解放しろってーーーーのぉ!!」


「ひ…………いーーーーーーやーーーーーーーっ!!!!!!」


…………なんて感じの。


悪ふざけ気味のおしおきタイムは、まだしばらく続きそうだった。

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