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カードレース・スタンピード!!  作者: 能登川メイ
episode 8 本当の悪の目覚め。???vs良襖&千里vs???
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大いなる箴言!! 千里vsホムラその⑦

チエカ「そーいえば急いだ方がいいかもですよ? 今或葉さんが魂かけて時間稼いでくれてるんで♪」


千里「ばっかオマエそれ先に言えよ!?」

「千里よ…………」


「お前がなんでここに居るかの見当は大体ついてる。守ってくれよーとしてたんだろ? 守られてたぜ、ちゃーんとさ」


向き直り、宿敵へと視線をやる。


「チエカの奴からカラクリは聞かせてもらった。お前が持ってるチエカのカードで『新しいチエカ』を作って降参宣言させるつもりだったな?」


「…………チッ」


舌打ちが漏れる。図星だ。


「んなことさせっかよ。さーてと続きやろーぜホムラ。お前の相手はこの俺だ」


「続きじゃと? 今更なにを馬鹿げた事を。…………状況を見ろ愚か者!!」




ホムラ残り走行距離…………5


千里残り走行距離…………20




「差は歴然! 儂の場には儂自信を含め三体のギア4が控えている! この戦力差をどうひっくり返す!?」


「さーてなぁ? ドローしてから考えるよ」


千里はもはや気負わない。


気負えば連中のペースに乗せられるし……何より馬鹿らしい。


娯楽は楽しむべきもの。


そもそも眉間に皺を寄せてあれこれ考えること自体が色々おかしかったのだ。


そんな千里を敵が笑い飛ばす。


「カッカッカッ!! 夢のある話は結構じゃが……地に足を付けねば夢物語として一蹴されかねんぞ? ……こんなふうに、のぉ!!」


不意に、千里の身体が後方に吹き飛ばされる。


「千里っ!?」


「お主も観客席に戻らんか!」


「っ!?」


ゴウッ!! とシステムの烈風が或葉を、千里を在るべき場所へと戻していく。


夜の風を切り遥か後方へ。


「或葉、オマエも完全にこっちに……!!」


「拙者のことは気にするでない!! おぬしは……おぬしの成すべき事を成して欲しい!」


「っ!! わかった……あまり長くは待たせねぇ!!!」


そうして一時の別れ。


やがて静かに着地するは、15キロの遥か後方。


並み居る巨影を率いるホムラに対して、こちらの味方は()()()()()人面列車一体のみ。


すぐ側に、ホムラの幻影が現れ煽る。


「儂は既にターンを終えた。さあお主のターンだ。ここから逆転できるものならやってみせるがいい!」


「…………そーさなぁ」


あくまでも気楽に、千里は答える。


「まーやるさ。確実にな。俺のターン、カードドロー」


千里は静かにカードを引いた。


なにを引くかは、なんとなくわかっていた。


「ーーーーゴールデン・グース、ハイウェイキッド、でもって相棒! お前たちの力を借りるぞっ!!」


「……?」


幻影のホムラが首を傾げる。


この状況でなにを言ってるのか、なにをしようとしているのかがわからないのだろう。


だから、構わず吐き捨てる。


「このカードな……いつの間にか入ってたんだ……。きっとあいつは、良襖はいつか自分がどーにかなっちまうってわかってた」


「? さっきからいったいなにを……」


「だ、か、ら、ワイルドカードを仕込んでおいた。自分が暴走したときに、その場に最も適した力で自分自身を裁いてくれるよーによぉ!」


「…………ッ!?」


ホムラの目が見開かれる。


先の展開を予感したのだろう。


だがもう遅い。準備は遥か前に済んでいる。


「その力は今! 俺に託されたッツ!! 喰らいなホムラ、俺の……俺達の全力全開をよ!!

俺は、このマシンをセンターのトレインの上に呼び出すッ!!」


地響きが始まる。


愛機グレイトフル・トレインに異変が起こる。


芽が出て、蔦が伸び、根が貼られる。


急速に植物が生い茂り、巨木の塊と化してなお侵食は止まらない。


世界が侵食される。


本人でさえ忘れ去っていた、無垢な頃の彼女が仕掛けたセーフティー。


それが解放される。


幻影のホムラの顔が面白いように青ざめていく。


「まさか……まさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかァァァァ!?」


「おーよ! お前言ってたよな!! ひょっとしたら良襖は、この世界を壊すためのスイッチを握ってるかもしれないってよ!!

それがコイツだ。つい少し前、このゲームをシャットダウンに追い込んだ悪魔だ!! 欲しけりゃ取りに来な。ぜってー渡さねぇけどなーっ!!!!」


大量の花粉を撒き散らしながらも、巨木は明確な形をとる。


まるでサバクトビバッタを巨人の形に進化させたような禍々しい外見。


薄羽広げ、樹皮の掻き爪を握るその姿は、小さな魔王への箴言も厭わない『魔王の配下』に見えた。


ーーーー今、ホムラはどうなっているだろう?


腰を抜かして倒れているか、それとも未来がこぼれ落ちていく感覚に襲われ絶望しているか。


いずれにしろ構わない。


なにを犠牲にしてでも我欲を叶えようとし、事実幾人もの精神を攫い切り刻み焼き払っていった者の安否を気遣う道理はない。


ただ、高らかに口上を述べるのみだ。


「ーーーー街路樹は勝利を目指さず。ただ道を切り拓くのみ。

誇り高き裏切り者よ、我が物顔で歩む主の群れに大いなる箴言を叩き付けよッ!!!!」


そしてその目に光は灯る。


未来見据える朝焼け色の光が。


「来やがれ、最高最善ド有能!! 《ガイルロード・ジューダス》!!!!」




ーーーーーーーRuloooooooooooooooooNN!!





咆哮が響く。


世界を壊す理の再誕だ。





《ガイルロード・ジューダス》✝

ギア4マシン スカーレットローズ ATK9000 DEF9000

◆【このマシンの登場時/場札三枚を捨て札へ】()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()





ぎょっとする腐れ外道の幻影にに、千里は言ってのける。


「良襖の奴がよォ……前に言ってたんだ。『対策法も作らずに化け物を野に放つわけないでしょ』ってさ。ジューダスの効果、グース、キッド、トレインを捨て札に」


三枚の鋼を喰らい、悪魔は凶悪な砲身を創造する。


世界を灰に返す威力を秘めた凶悪なガトリングガンだ。


そして。


乾いた声とともに引き金を引く。





「今なら、よく分かるよ。よーくな。効果起動、全てのアシストカードを破壊するッ!! 喰らえテラフォーミング・ランページ!!」






ーーーーーーーズガガガガガガガガガガガガガガガガガガッガガガガガガアガガガガガガガッガガガガガガッガガガgガガガッガガガガガガアガガガガガガガッガガガガガガッガガガガガ!!!!






その掃射が、15キロ先を地獄に変えた。


ボーリングボール台の種の雨が空を埋め尽くす。


一発一発が隕石並の破壊力。


着弾点からは樹木が生い茂っていくおまけ付きだ。


結果、歴史がありそうな建物は崩れ桜並木は一撃で弾け飛び川は数発で埋め立てられる。


「ーーーーーーーっひいいいいいいぃぃぃぃイイびゃあああああ!!?」


そんな地獄そのものの光景の中、それまでの威厳が嘘のように列車の上を駆け逃げる。


焦るのも無理はない。なにしろ今のホムラはアシストカード扱い。この効果による破壊の対象だ。


何頭もの馬の亡霊や燃え盛る大車輪、結局ホムラのカードしか破壊しなかったウッドスパイクまでもがズタボロに破壊されていく中。


ーーーーーーージャキィッ!!


「ヒィッ!?」


遂にホムラに照準が定まる。


「……おめでとうホムラ。何もかも間違いだらけのオマエの正しさがひとつ証明されたぜ?」


千里が幻影を介して語りかける。


「確かにオマエは、どんな手を使ってでもこのキルスイッチを回収するべきだった。……ま、もっとはやく握っておくべきだったがな」


「!? そうかくそうサービス開始前に縛り上げていればこんなことには……!!」


「そこじゃねーよ」


呆れた声で、最期のアドバイスを送る。






「やりたい放題したいなら……最初から、てめーらの力だけで作っとけってーの」




タァン…………と。


ホムラの正中に向けた弾丸は、確かに着弾した。

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