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カードレース・スタンピード!!  作者: 能登川メイ
episode 8 本当の悪の目覚め。???vs良襖&千里vs???
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心を賭けた戦い。 ホムラvs千里その⑥

戦地サムライ・スピリット。


小さな勇姿と獣との対峙は続いていた。


「全てが為せる……か。くだらん幻想よの」


「幻想。幻想か。かもしれぬ」


かたや電子の最高幹部、巨影の本性を背負い嗤う化け狐、ホムラ。


かたや管轄される側、単なる一人の少女にすぎない存在、丁場或葉。


ひと睨みで決着がつきかねない位の差に、しかし少女は一歩も引かなかった。


彼女は、確固たる強さを持ってこの場に立っていた。


彼女の力は乏しい。


「で、あるが」


しかし、彼女には状況を切り開く言葉がある。


「だからこそ拙者にも勝ちの目があるというものにござろう。なにしろここは電子の遊び場。『幻想を叶える場所』であろう?」


「戯言じゃのぉ」


ホムラは嘲笑う。


無垢なる願いを踏みにじる。


「あらゆる夢にはカラクリがある。輝かしさを支える糸が数えきれないほど垂れ下がっている。

お主らはその糸に絡まっているに過ぎん。今なら解いてやろう、さあ乾いた裏舞台から立ち去るがいい」


「ほう。夢を売るべきヌシらが夢を否定するか」


ぴしり。


ホムラの眉間に、ひび割れたような皺が生じる。


「拙者らは遊びに来ておった。そのおりに糸を見つけ、近ずいた結果がこの始末よ。

糸を隠しきれぬはそちらの不手際。この世界には無限の広がりがあると信じ込ませて欲しかったものよの」


「であれば、大人しく『遊ばせて貰っている』立場を貫くべきじゃったの」


冷めた瞳が或葉を見下ろす。


一触即発の空気が夜を満たす。


「今は我らにとってもっとも重要な時。他のなにをかなぐり捨ててでも得たいものがある。まさしく『死守』せねばならんこのゲームの要じゃ。

此処は今、ゲームの世界であれど遊び場ではない。君のようなごく一部のもの達もこういう状況を見越して見て見ぬふりをするものだ。

…………わかるな聡明なるものよ。夢の世界を守るためにこそ、この場でだけは夢を見てはいかんのじゃよ」


不意に、怒りを潜める。


怒りの刃を鞘に収め、なだめるようにホムラは言う。


「だからおさがりよ。ここは戦場。此度に限り、お主がくるべきところでは無い」


「否」


或葉は、欠片も怯まず山札を構え歩みを踏み出す。


「ここが戦場であるは百も承知。……だが悲しきかな、それは正しき姿を忘れたがゆえ。この世のどこを探れば、遊び場で友を失う『正しさ』などあろう?」


論説が突き刺す。


正しさこそが悪を討つ。


「であればこそ、拙者は守るための戦いに臨む。侮ってくれるでないぞホムラよ。拙者とて護られるだけの弱者では無い。

言葉の力は通じないならば次は『幻想』の力を見せつけるまでよ」


「それに儂が取り合うとでも?」


「取り合うとも。或いは、それこそがヌシに残った良心であろうからの。

いや……あるいは在りし日を裏切りきれぬ『未練』とでも言うべきか」


「…………そうか。そこまで、儂を語るか」


そうして、ホムラは目の前の少女への認識を改めた。


「儂は夢幻列車砲に《金剛の馬鎧》を装備してターンエンド。その効果でエンドフェイズの破壊から守る。

……これで、儂のマシンが破壊されることもタイムアップ負けになることもない。存分にお主の相手をできるというもの……」




《金剛の馬鎧》✝

ギア3アシスト サムライ・スピリット

【装着】(このカードはアシスト置き場ではなく、指定マシン一枚の下に重ねる)

◆【このカードを疲労させる】このカードの上に存在するマシン一枚の破壊を無効にする。




化け狐が睨む。


目の前に立つのは子供ではなく、自らの『敵』なのだと認識を改める。


「そうかそうか。そこまでの覚悟で我の前に立つという事は……当然ッ! 容赦なく打ち倒される危険も覚悟の上でじゃろうのぉ?」


アバター体の背後、半透明の巨獣が吠える。


「…………厶」


仮想の大気が震える。


気迫の塊が爆裂する。


「お主こそこの試練の与え手ホムラを侮ってくれるなよ? ヤワな鍛え方はしておらんよ。そこまで臨むなら、お主から先に打ち倒してくれようぞ!!」


「これはこれは。なんと光栄なことか。是非とも手合わせを願おう」


冗談めかした、気負わない口調ながらも、彼女は全てを理解していた。


(これでよい、にござる)


或葉はすべてわかったうえでやっていた。


(きっと拙者は敵わないであろう。状況の因果関係くらいは理解できる。負けたら、この世界に閉じ込められてそれまでか)


それでいい。と彼女は思った。


彼女が護りたいと思ったものを護れるなら、それで…………







「待ちな、ホムラ」


しかし少年は悲劇を拒む。







「…………まだ意識があったか」


「おーよ。戻ってきたぜ、天国からよ!!」


先駆千里。


誰よりも悲劇を望まぬ少年。


彼こそが、状況を止める切り札だ。

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