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カードレース・スタンピード!!  作者: 能登川メイ
episode 8 本当の悪の目覚め。???vs良襖&千里vs???
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裏の裏のそのまた裏。 千里vsホムラその④

「詩葉……良襖は大丈夫なのか⁉」


「ああ大丈夫だ今は近所の診療所で休んでいる。それよりもだ…………」


「……………………」


黒ずくめの男性型アバターに見下ろされ、化け狐は妙に黙り込む。


「その、良襖への対処の理由だが…………ほんとにそういう理由か?」


「…………」


「どういうことだよ詩葉? まだ事態には裏があるってのか?」


「ああある。さっきの話も間違っちゃいないんだろうが全てじゃない。だから信じるなよそいつの話を。情に流されてそいつに負けたが最後だ」


「その言葉をそのまま返してやろうか」


目を細め、化け狐は嘲る。


「部外者になにがわかる。貴様になにが知り得ると言うのだ?」


「『知り合い』が全部話したよ」


なんてことないように放たれた、言葉がホムラを深く抉る。


「ビジネスパートナーの管理はよくやっておく事だな。奴の話だとホントの理由は二つある。一つは、さっき良襖をさらった手品に関わる話」


「…………!!」


場の険しさが一気に増す。


どういことかと千里が訪ねようとする。


「そしてもうひとつはーーーー」


それより先に。





ボフッ!! と。


ふいに詩葉の体が獄炎に包まれる。






「ぐふっ…………………ッッッッ!!」


「な、なにぃーーーー!?」


苦悶とともに、焼失していく詩葉のアバター。


驚愕に染まる千里とは裏腹に、化け狐の対応は淡白なものだ。


「外野の分際で……語りすぎじゃわい小童め」


「今の……テメェの仕業かホムラ⁉」


「左様。罵倒したくばすればよい」


ギリリと奥歯を嚙みしめて、言葉は吐き出される。


怒りが吹き荒れる。


「テメェ……やっぱなんか隠してたんじゃねぇか! あと何枚捲れば『真相』って奴にたどり着くんだ!?」


「たわけめ。そうそう奥の奥までたどり着けるものかよ。第一」


すう、と息を吸い込むのが伝わった。


「たどり着かれたところで儂は止まらん!! 我らは必ずこの世界の未来を掴む、そのために突き進む!!

ーーーーさあ問答は終わりだ小童よ! 打つべき手は打ち切ったであろう、大人しくターンを明け渡すがいいッ!!」


「ぐぬぬ……ターンエンドだコノヤロー!!」


「うむ! 儂のターン、カードドロー!!」


支配権が移る。


ギア5に特化した《サムライ・スピリット》の5ターン目。


恐怖が始まる。


のだが。


(あいつの手札は三枚、センターのギアは2。……大丈夫だ。大したことができるわけがない。このターンはろくに動けない!)


千里は冷静に分析しているつもりでいた。


だがやはり見落としはあった。


()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


「儂はギア3、二枚目の《夜馬車の黒棺》を呼び出す! 更に手札から《千夜城の財宝》を発動!」


「千夜城……財宝?」


ジャララッ!! と景気のいい音を立てて小判の雨が降る。


聞きなれない、しかし嫌な予感しかしないカード名に、千里は恐る恐る詳細を確認にかかる。


そして絶句する。




《千夜城の財宝》

ギア3アシスト サムライ・スピリット

【使用コスト・場札四枚を疲労】

()()()()()()()()()()()()





「おまっ…………これ…………!!」


「毎度お馴染みのドローソースというわけじゃよ。残念だったのぉ削り戦術が打ち消されて」


あんまりだという心情を無視し。


とはいえ、とカードを引きながらホムラは語る。


その言葉には確かな愉悦が滲んでいた。


「お主の戦術も無駄ではなかったと言えよう。なにせこのカードを使わざるを得なくなったがために、儂の切り札の着地を一ターン先に延ばすことになったのだからのぉ!! …………では、ひとまず地ならしと行こうか?」


前方よりの圧が爆発する。


ギア3を起点とした、手札四枚分の可能性が押し寄せる。


かくて口上は述べられる。


「ーーーー担い手は西へ東へ。饗宴を背負い牝馬は駆ける。輝きを撒け!! 荒ぶる魂を掻き立てよ! 夜をかき消し眠れぬ國に薪をくべよッ!!」


幾たびも生まれ変わる牝馬の武装が、これまでで最も賑やかなものになる。


輝かしい黄金の馬鎧を纏い、巨躯をゆらして戦場に金色を撒く。


その名は。


「ーーーー駆けよ疾走の原典。我が愛騎《競轟王サクラ》ッ!!」





《競合王サクラ》✝

ギア4マシン サムライ・スピリット ATK14000 DEF9000

◆【このマシンの登場時】山札の一番上を裏向きのまま、アシストカード扱いで設置する。

◆【自分のカード一枚が破壊されるとき】場のこのカードを代わりに破壊できる。

◆【使用コスト・場札を五枚疲労】発動後次のターン開始時、山札から()()()()()()()()()()()()()()()()()()()





「ちっきしょ……進化の土台用のマシンか……!!」


「左様!! お主が場を乱したおかげでその効果はつかえなんだが……それはまあ良い。楽しみはまだまだあるからのぉ!!」


化け狐の展開は止まらない。


次の一手で()()()()()


「ーーーーわが刃は鞘に収まらず。獣の摂理に反旗翻し、終わりなき神話の世界へ汝を誘わん。

刮目せよ! 幻想を抱き水面に沈め! 誘いの使徒に血肉なき身を委ねるがいい!!」


金色の毛並みが舞い散る。


降り注ぐ輝きが、降り立つ者の壮大さを証明していた。


影は九と一つ。


神話の妖狐が君臨する。


他ならぬ、宿敵の現身。






「ーーーー出でよ我が分身!! 《試練の与え手ホムラ》!!」





ーーーーGOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOONNNNNNN!!




疾風、轟音。


咆哮とともに、真なる化け狐が戦場を支配する。

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