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カードレース・スタンピード!!  作者: 能登川メイ
episode 8 本当の悪の目覚め。???vs良襖&千里vs???
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原罪との対決。駆けよ反逆の疾走者!!

(今のあの人に、ワタシの権能は通じません。別なワタシの体に引きこもってますから)


(別なワタシって……よくわかんねーが、わらわら居る味方なら裏切り対策用のなにかが使えるんじゃねーか?)


(あー、粛清的なアレですか。それも使えませんねー、なんせ『人間が操るアバター』が重なってますから)


(うげ)


チエカと千里は秘密裏にやり取る。


不穏なワードはこの際目を瞑る。


(でもってあのおじいちゃんをワタシの体から締め出す方法は一つ。『御旗チエカにゲームで勝つこと』)


(…………!!)


(それしかありません。あの状態じゃあユーザー追放コマンドと同族粛清コマンドどっちも使えませんからね)


(細かいところはスルーして一番重要な事効くけどよ……ああまでやれるバケモノに勝てるのか?)


(何言ってるんですか)


チエカは。






(ワタシはアナタを信頼しています。この世界のいろんなゴタゴタが霞むくらい、アナタの心は輝きに満ちているとおもうので)






平然と、なんてことないことのように言ってのけた。


(…………!!)


「さっきから……なにをごちゃごちゃと言っとるかァ!」


と、ここで狐ジジイが痺れを切らす。


背面に広がる九つの尾をしならせ、前方に叩きつけにかかったのだ。


もはや彼は、カードで決着を付けるつもりすら無いらしい。


振りかざされる脅威に対し、両者は散開を余儀なくされる。


影が墜ちる。


大地が割れる。


轟音が遅れて響く。


世界が崩れる。


暴君の在り方だ。


災いの中心、チエカを乗っ取り、ゲームマスターの座を乗っ取り、世界を乗っとらんとする老害が。


吠える。


「……確かに、儂はAi-tubrを名乗った。じゃがここでその責務を果たすとは言っとらんわっ!!

まどろっこしい駆け引きはもーうんざりじゃて! うぬら小兵の相手などいちいちしていられるものかァ!」


手が振り下ろされると共に、ビルを叩きつけるような衝撃が電子の世界を襲う。


その後には、アバターを焼き尽くす青い炎が広がっていた。


あれに飲まれたらおしまいだ。


「先駆千里! うぬはもうもう用済みじゃ! そこなキナ臭い看板娘共々、世界の外に墜ちるが良いわ!!」


言葉と共に、二撃三撃。


一人を潰すために、世界を壊す嵐が吹き荒れる。


圧倒的な暴虐に呆然としながらも、手近な鳥居の影に隠れる千里。


廃墟と化しつつある和の景色の向こう側、矢倉の中に潜む本来のチエカが見えた。


全力で叫ぶ。


「それでよォ! あの暴れジジイをどう嵌めるってんだ⁉」


「ワタシにいい考えがあります。あなたは手持ちのマシンで突っ込んでください!!」


「……!? 雑だなオイ⁉」


「あとはワタシが合わせます! 彼を戦場に引きずり込んだら……あのアンポンタンさんを必ずカードレースで叩き潰して下さ……」


遮るように烈風が来る。


視界塞ぐ土煙が質問の権利を奪った。


やるしかない。


そう認識した上で。


「…………くそったれ」


吐き捨てるようにぼやく。


「ああもうくそったれ、くそったれくそったれくそったれくそったれくそったれッ!!! マトモな選択の権利もねぇなぁチクショー! 流されっぱなしじゃねーのか俺はァーーーーッ!?」


思えばいつだってそうだった。


兄にゲームを紹介され、級友の心を守るためにゲームにのめり込み、頂点を目指すも全てはゲームマスターの思惑の内だった。


挙げ句そのマスターへの反逆の権利すら奪われ、新たな敵との対決を余儀なくされてしまった。


そもそもプレイヤーである時点で、運営に背くこと事態がおろかなのかもしれない。


一旦後方に引き、櫓の頂点に座す狐を睨みつけながらそう重い知る。


「……だがよ」


それでも自由意思はある。


膨大な可能性の欠片くらいは握っている。


「俺にもあんのよ意地くらいはヨォーッ!『何で』決めるかくらいは選ばせてもらうぜ!

俺の手持ちで信頼できるって言ったら……コイツだよなあ!」


自分の手持ちの中でもっとも信頼に足る愛機を思い浮かべる。


引き入れる。


繰り出す。


睨めつけ吠える。


「おいジーサン!! さっきから好き放題言ってるよーだが舐めてんじゃァねーぞ!

用済みだろーがなんだろーが、俺がやりたいことは俺が選ばせてもらうぜ! ましてそれがテメェ個人の自分勝手だってーんなら……」


そして切り札は呼び出される。






「そのくそったれな野望は、俺が纏めてぶっ壊す!

ーーーー来やがれド有能!! 《グレイトフル・トレイン》!!」






大地が『内から』割れる。


世界に競りだす衝撃。


巨大な顔面を掲げた列車が、地のそこから現れ出でる。





《グレイトフル・トレイン》✝

ギア3 スカーレット・ローズ/マシン ATK10000 DEF10000

◆《自分のマシン一枚を捨て札に》コストカードのステータスを自身に加える。




「行くぜぇ相棒ッ!」


列車の上に跨がり顔面に足をかけ、宿敵へ向かい空の線路を駆ける。


悪意は笑みを崩さない。


「ハッハッハ小手先千番!! 言ったろう我はAi-tubr!! その体は超性能のマシンカードと同義! そんな毒にも薬にもならんしもべなぞ相手にならんわっ!!」


宣言の通りだった。


仙孤の本質。九尾の狐の力は、先駆千里の操るマシンを大きく越えていた。






《試練の与え手ホムラ》

ギア4 ステアリング/マシン ATK11000 DEF14000

《??????》??????????????????

《??????》??????????????????






防御型のステータス。効果までは記憶していなかった。


だが効果抜きの優劣は明確だった。


「このゲームのルールを忘れてはいまいな! マシン同士のバトルは攻撃側のATKと防御側のDEFを比較、下回った方を破壊する!

この場におけるうぬの破壊は、則ちアバターの死を意味すると思え!」


化け狐による一方的な宣告。


確かにこのままでは、防御側14000vs攻撃側10000のバトルとなり敗北。千里のアバターは電子の風となって永久に消えるだろう。


だが関係ない。


最早引くものか。


「だからどーした」


戦士は。


愛機に跨がり凶悪な敵にめがけ駆ける先駆千里は吠える。


「細かい事はサッパリだけどよ……お前に好き勝手させちゃいけないってのはスゲーわかる。

だからぶっ勝つ! 『あの時』みたいにぶっ飛ばして終わりじゃねーぞ。テメェをレースの場に引っ張り出して必ず勝ってやる!」


「ハッ!! やれるものならやってみるがいいわッッ!!」


視線が交錯する。


敵意が爆裂する。


反逆の照準が、静かに化け狐を射抜く。


狐が刃を構え。


千里が更なるカードを取り出し。


そして咆哮は放たれる。




「「ーーーー行くぞォ!!」」




激突が、始まる。

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