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カードレース・スタンピード!!  作者: 能登川メイ
節目の決戦。千里vs魔王・夜ノ神!!
65/190

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《科学の担い手アルジ》

ギア4 ステアリング/チューン

POW10000 DEF15000 RUN20

◆《デミ・ゲストカード》

◆『自分の場に四枚以上のマシンが存在する』このマシンとセンター入れ換える事ができる。

◆『手札からこのカードを捨てる』レース中一度のみ、自分の残り走行距離を25減らす。

◆『このマシンの行動終了時』山札からギア5一枚を手札に加える。このマシンを、次のターン開始時に呼び出せる。




大地を溶かし突き出威張るは、科学みなぎる蒸気帆船。


その船首に白衣の彼は居た。


千里たちと同じような年の少年だ。


船の積み荷から、キラリと輝くカード……効果でサーチされたギア5が舞う。


魔王の手札に加わる。


アルジ自体は大したスペックには見えないが、それでもしっかり20の走力を持っていた。


当然走行が来る筈だが、まだセンターに置くための条件を満たしていない。


だが魔王の手札には《酸性豪雨》の効果で加わったギア1が存在する筈だ。


「ここで手札から《赤塗りのパトライド》を呼び出す!」


「お前も……そのカードを!?」


「アタボー!! あっさりと追加攻撃を可能にするド有能、フルで入れるに決まってるじゃない!

……し・か・も・ここでセンター下の《コズミック・エッグ》の効果起動! ターン中一度のみ、呼び出されたギア1を培養する!」


ゴゥ! と暗黒色の雲が溢れた。


雲が収まるとともに、二台並んだマシンが表れる。




《コズミック・エッグ》

ギア1 スカーレット・ローズ/マシン

POW 0 DEF 0 RUN5

◆『このマシンがセンターに置かれている/ギア1マシンが呼び出される』



これで魔王の場には五台ものマシンが揃う。


アルジの移動条件が満たされた。


にちゃりとした笑みがみなぎる。


魔王の号令が、科学の申し子を起動する。


「さぁ走れ! 科学の担い手アルジで走行!!」




夜ノ神残り走行距離→165→145




走行距離が磨り減る。


だがまだ終わりではない。


「ここでパトライドの効果! この子をセンター下に置くことでアルジは回復する!!

それも走力5を追加してね! 当然再走行!」


スカーレット・ローズの基本戦術。


魔王は当然履修済みだ。




夜ノ神残り走行距離……145→120




「これで、あたし……こほん、私はターンエンド!!」


一反は舵を手放した魔王。


だが千里がドローすれば、アルジの効果で引き入れたギア5が飛んでくる。


ギア5。


未知の領域。


それを出迎える準備はいかほどか。


「…………」


世界を眺める。


七色に輝くサーキット。そこを駆けるは千里の操る重機の巨影。


夜桜を思わせる空は低く、巨躯の高みからはなお低く感じられた。


この世界の閉塞を感じるようだった。


そして背後には、わざと半透明のテクスチャで描写された魔王の姿があった。実際の彼女は、遥か後方にあるはずだ。


率いるマシンは四台。その中にはギア4《アルジ》や、追加攻撃を可能にするギア1《パトライド》もあった。


ダンマリだったギア2バニラ《ハイウェイキッド》も見過ごせない。さっきまでギア4だった《クォーター》はセンターからの移動によりギア3になっているが…………


「あ」


戦慄が走った。


偶然にしてはできすぎだ。


場にはギア1、2、3、4が全て揃っていた。


まさかとは思うが。


「おい待てよ……」


「あらその様子……ひょっとしてバレた?」


「待てって言ってんだろ……」


「そーよ。この子を呼び出すためには、特殊な条件を満たさなくちゃあいけないんだもの」


震えが止まらない。


複雑な条件を満たして現れるマシンは強いと相場が決まってる。


ましてや最高のギア5となると……


「さぁ……ドローしなさいチャレンジャー。そして……」


「やめ、ろ……」


「私と共に! 未来の今へと向かうのだッッッッッッ!!!」


「やめてくれえええええ!!」


意味のわからない脅迫から逃れるように、千里はカードを引く。


引いてしまう。


そして。


魔王が全霊の笑みを浮かべた。




「待っていたわ…………この時を!! 時よ巡れ! 『グローバル・リスタート』!!」




世界が壊れた。


空間が捻れた。


光が消えた。


概念を疑った。





そして、千里はどこかに放り出された。


頼もしかった重機王の姿はどこにも無い。ただの一人の味方も確認できない。


「何、が…………?」


辺りを見回す。


世界は平らになっていた。


何一つない地平に彼は居た。


方眼紙みたいな網目の大地の上で、千里は拘束されているような気分だった。


拘束。


拘束?


「…………スタンピードのルールでは、センターのギアが下がった場合は並走するマシンを手札に戻す」


声が聞こえた。


「では、あり得ない事だけと……往復ターン数が下がった場合は?

こちらもやはり手札に戻す。スタンピードの成約では『往復ターン数を越えるギアは使用できない』となっているものね」


悪夢のような声が響く。


その声は下から聞こえた。


「その『あり得ないこと』を引き起こす力が、この子にはある。

私の最大最高の切札にはね!!」


声の主は夜ノ神だった。


千里はコース上空に締め出されて居たのだ。


網目の檻の下に、鮮やかな青の巨人が見えた。


ルイズではない。シャープなシルエットは、彼の人型決戦兵器を思わせた。


「…………吠え叫べ。《マスター・フォーミュラー》ッ!!」




《マスター・フォーミュラー》✝

ギア5 スカーレット・ローズ/マシン

POW15000 DEF15000 RUN30

◆《召集制限……自身の場に、ギア1から4までが一枚ずつ全て揃って居なければこのマシンは呼び出せない》

◆《三回行動》

◆『このマシンの登場時』現在の往復ターン数は0になり、以後このマシンのギアは往復ターン数と常に同じになる。



「なんだよその効果……もう一度言うぞなんだよその効果!?」


「凄いでしょ? これで使用率バリ低いんだから環境ってわからないものよねェ……」


存在しないギア0への変化。


そしてその理不尽のツケは相手が払う。


「今の貴方にはなんの権限もない! 重機王は組まれる前に一巡した!」


王はネジが溢れるように分解され、崩れながら千里の手札に戻っていく。


「今の貴方にはなにもできない! 隔離はその演出よ!」


もう、なにもできない。


ただターンを終えるしかない。


「ターンエンド…………」


「あたしのターン、ドロー! マスター・フォーミュラーで走行!


一二で構える。


そして彼女は駆け抜ける



夜ノ神残り走行距離……120→90→60




「更に! 手札に戻ったパトライドの効果でフォーミュラーを強化回復する! 当然走行!」




夜ノ神残り走行距離……60→25




千里に迫る。


彼が蹴り飛ばされる。


少年はなすすべなく空を舞い、しかしまだ終わらない。


「そ、し、てまだなにか忘れてなーい? 手札に戻ったアルジを捨てれば、あたしは25の距離を走行できる!」


「ちくしょう…………」


巨大な三角フラスコが夜ノ神を包む。


射撃体勢。


魔王が叫ぶ。


千里にだけ届く醜悪な叫びが。


「ひは……ひはははははははっははははは! 楽しい! 楽しい!! 絶対的な力を使って絶対的な力を砕くのは!

あたしの遊び場! あたしを楽しませる遊び場! もちろんみんなが楽しいけれど、作ったあたしが楽しめないものなんてありえないわよねぇ!」


『本音』が溢れる。


「朽ち果てなさい。貴方が振るった最強最大の一手が砕かれるさまをその目に焼き付けながらね!!!」


勝敗は決した。


千里に勝ち目など無かった。


「ウイニングラン! アルジの効果でゴールよッッッッ!!!」


「ちっくしょおおおおおおおおおおお!!」


そして神は弾丸となった。


空を裂き。


千里のもとをめがけ。


「これが『あたし』! これが最強! 敵うものなど居ないのよ!!!」


そして。



◆ 謀   殺   楽   譚 ◆




千里は粉微塵に吹き飛んだ。





夜ノ神残り走行距離…………25→0=GOAL!!







「勝った…………勝った!! あたしが! 最強の駒に育った彼に!!

フヒアハハハッッハハ!! やっぱりあたしこそが頂点なのよ!!」


その醜い勝鬨を聞き遂げるものは、倒れ伏す千里を除いて他に無し。


決戦は、最悪の結末を迎えたのだった。

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