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カードレース・スタンピード!!  作者: 能登川メイ
episode6 絡めとる状況。千里vsユリカ!!
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結論提唱。乗り越えた先の邂逅へ!

「まだ、言うべきことを言ってなかったわね。もう人づてで聞いているかもだけど」


桃色の女王は、その四肢を妖しく組ながら語る。


幹部が来ているというのに、辺りはいつも通り流れている。


まわりには、ごく普通のアバターに見えているのかもしれない。


「やっぱり自分の言葉で伝えなくっちゃね」


律儀さがあった。


「貴方との勝負。本気でぶつかってきてくれたのを感じたわ。熱すぎて溶け落ちてしまわないかと思ったぐらい」


「ショージキ、俺も燃え尽きるかと思ったぐらいっすよ」


「命を燃やし尽くす音を聞いた。すべてを捧げる誠実さを見た。

極限まで楽しさを追及したレースを繰り広げた貴方は尊敬に値する」


その瞳は、いたく優しかった。


「だから、ね」


そして。


不意に。




ーーーーーーーーむぎゅ。




「…………!?」


柔らかく、温かなものを感じる。


不意に抱き締められた。


現実の彼女が。


ユリカこと遥が、自室に居た。


「来ちゃった。ま、無茶してないかの見回りも兼ねてたんだけど……やっぱり無理してたのね」


「えっ!? ちょ、ま……」


突然の事態に混乱する。


遥は構わず続ける。


「詩葉にもさ。こうしてあげてるの」


耳元で優しく語る。


「両親が居なくなったって言ってたでしょ。その時から、たびたびね」


はじめてこの店に訪れた時も、二人は抱き合っていた。


「一人っていうのは、本当に辛いから。戦いの果てが一人ぼっちの祝杯なんて、いくらなんでもあんまりでしょ?」


「一人きりの……祝杯?」


ぬくもりに包まれながら千里は答える。


人など現金なイキモノ。報酬が無ければやっていけない。


なのに。


千里はここまで、本当に死ぬ勢いで戦っていた。


楽しむために戦っていた居たはずが、気づけば詩葉と出会い運営との全面対決に突入していた。


癒しの拠点を手にいれようとしたら、逆にどろりとした大人の世界に立ち向かう事になり。


それを解決するために身を削るも、今度は更なる大人によって道を閉ざされ。


その妨害をこじ開けたと思ったら、今度は身内の手で足を引っ張られ。


最後には、大好きなゲームに止めを指され倒れた。


「…………あれ?」


ぽろり、ぽろりと涙がこぼれる。


自分はなんで、こんなに頑張っていたんだっけ?


「辛かったでしょう。苦しかったでしょう。もう大丈夫。これからは、いつでもうちに来なさい」


「そんな、でも、あんたは……あなたはAI-tubaっすよ!? あそこはあなたらの運営の拠点だ。

それを度外視したって詩葉の相手だってある。そこに俺が居ちゃいけない……」


「ホンットに、超が付くほどお人好しなんだから」


呆れたように言う。


それでも、と彼女は言う。


「でも大丈夫。あたし強いんだから。あのお店は、元々癒しを届けるためのもの。

だから、あなたが来ることになんの問題もない」


言葉は続く。


「それにね。あなたが来るって事は、あたしの最初の目的を果たすってことなの。

あのお店を開いた、最初の最初の理由は「わかってほしい」だったから。あなたがあたしたちを認め、普通に接してくれるってことがとても幸せだから、ね」


より深く。


優しく強く、抱き締める。


「貴方はなんの遠慮もする必要も無いわ。あたしが頼られるって事は、あたしが幸せだって事だから」


「あ、う…………」


溢れる。


決壊する。


楽しさで築き上げたダムが、崩れ落ちり…………




「うあ…………うあああああああああああああ……ああ……ああああああああああああ…………ああああああああああ!!」





「よしよし……」


大人の役割は子供を守る事。


そんな当たり前が、どれだけこの世界で実行されている事だろう?


それでも、今この瞬間だけは。


当たり前の遠き理想が描かれていた。


「それじゃ、改めて言わせてもらうわね」


そして、抱きしめたまま。


改めて、電子の幹部Ai−tubaとして告げる。





「貴方とのレース、骨の髄まで楽しめたわ。《娯楽恐悦の試練》、クリアよ」




千里、現在のクリア状況…………



    《初陣強襲の試練》……クリア済み



    《若葉の試練》……………クリア済み



    《百人切りの試練》……クリア済み



    《娯楽恐悦の試練》……クリア済み



    手付かずの《試練》……残り三つ




…………計七つの《試練》をクリアし、ラスボス仕様の御旗チエカを討伐した時、《カードレース・スタンピード》クリアとなる。





また一歩先へ。


先駆千里が、攻略の歩みを進めた瞬間である。




そっと、遥は千里から離れる。


その耳にはワイヤレスのヘッドセットが装着されていた。あるいは、それで下の階にあるパソコンと通信しているのかもしれない。


「あのあと、詩葉ともちゃんと話したわ。じっくりとね」


その瞳は優しげだった。


「そっすか……でも、もっと一緒に居てあげてくださいっすよ」


千里は心づかいの言葉をかける。


「たぶん、あの人は駆け引きに巻き込んだのを悔やんでる。思いっきり抱き締めてやってくださいよ。あの店は元々、詩葉のために作った店でしょ」


「ははは……思いっきり手段が目的になっちゃったけどね」


自嘲するように言う。


「ともかく、もう私達の事は心配いらないわ。敵対する理由も無くなっちゃったしね」


そして。


切り替えるように言った


「だから……続きはあちらの魔王としなきゃかも」


ハッとした。


示された先には。





赤毛の少女。


現実に似せたアバターを持つ、鳥文良襖の姿があった。





「……………………ッ」


「あれは止められなかった。ご武運を、祈って居るわ」


そう言って、ユリカは戦局から手を引く。


少なくとも千里たちにとっては、敵ではなくなる。


情報源になるとかいうことも特にない。


より深部がそこに居る。


ユリカが最後に忠告する。


「貴方のために行っておくわ。……その子、あたしよりヤッバイわよ」


そうして彼女は姿を消した。


ドアが閉まる音がした。


現実の自宅からも退出したのだ。


「…………さあ、いらっしゃい?」


魔王が誘う。


「お茶でも飲みながら、ゆっくり話をしようじゃない」







「このカフェではね。電子の紅茶を嗜みながら、現実でも呑むってのが作法なの」


慣れた調子で紅茶を配る。


つい先日入った新規ユーザーの立ち回りではない。


もっと古くからゲームに使ってなければ嘘だ。


あるいは。


彼女が、このコンテンツを作成したのか…………?


「……なあ。一つ良いか」


千里が問いかける。


「今(・)ま(・)で(・)、(・)ど(・)ん(・)な(・)感(・)情(・)で(・)見(・)て(・)い(・)た(・)?(・)」


「そりゃ、ね。悪いなと思ったりもしたし、あなたのゲーム愛にウルッと来たこともある」


わざとらしい声。


「でもね……残念なことに、あたしはあなたの敵って事になる」


それこそが魔王の有り様。


気圧されながらも、言葉を紡ぐ。


「なあ……もう二つだけ良いか」


「どうぞ。ただし……あたしを魔王だと突き止めた根拠を聞いてからね」


「大したもんじゃ無いと思うぜ」


千里は向き合う。


幼女の皮を被ったバケモノに。


「お前は、合宿と称して俺達を引っ張り出し、適当なデクとの戦いで俺を煽てた。

相手の陣地で作戦を練るっていう愚策をやらせるとともに、ナーフ予定の鬼コンボを使わせて試練を不合格にするためだ」


楽しいゲームが重要なユリカとの試練での地雷を踏ませる行い。


非道と呼ばざるを得ないだろう。


「しかもだ。一連の流れから大人の目線を除外するために、お前は詩葉に一服もった。

これらの蛮行に遥さんが気付かない筈はない。だから運営側、しかも遥さんと同格以上だと踏んだ」


「どうして? ただのコマ使いかもしれないのに」


「喫茶店で一服盛る手を店主が認めるか? 大方、あの人もお冠でお互い疎遠ってとこだろ」


千里は軽く罵るように言った。


「……それでも、どのくらいの地位かまではわからなかった。だからお前に「スタンピードのボスか」と訊いた。

この聞き方なら、ユリカさんの同僚、AItubaでも反応するだろう。だがお前は迷わず上司って言葉を使った。使い慣れてる言葉だからだ」


「口を滑らせちゃったって事か。我ながらなっさけないものね」


「ゲーム開発の一端も担うAi−Tuba。その上司は最初の開発者自身と、出資者のタギーくらいしかいない。

そしてかぐや姫の難題の顛末からして、タギーはお前の味方じゃあ無い」


「つまり、あたしが開発者って答え以外ありえないってわけか」


解説は終わり。


ここからは質問の時間だ。


「そーゆーことよ。……じゃあ、遠慮なく一つ目から聞かせてもらうわ」


そして突きつける。


核心を。




「ーーーーーーお前の目的ってなんだ?」

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