試練越える一手。千里vsユリカ中編!
◆カード解説 《キルハルピュイア》
攻守ステータス5000に加え、進路妨害と退場時一枚ドローという悪夢のような構成となっている。
ステータス5000はギア3のライン10000の半分であり、二体で殴りかかる事で相打ちにしつつ自分だけが二枚ドローできる。逆に相手が打点や効果に振っていたら一方的に打倒できる。
更に壁としても優秀で、いくつかのクラスで量産されがちなギア1の水準を超えている。故にこのマシン一枚がためにギア4が行動を制約される羽目になりかねない。
挙げ句、これを量産する術が確立されているのだから笑えない。
《ハルピュイアの暴走》✝
ギア1 ヘル・ディメンション/チューン
《使用コスト・手札4枚を捨てる》
捨て札、山札、手札のいずれかから《キルハルピュイア》四体を場に呼び出す。こうして呼び出したマシンはターン終了までギア1として扱う。
「エッグ……どんだけよ」
振るわれた一手に驚愕する。
いや違う。本当にエグいのはキルハルピュイアそのものか。
キツイコストがあるが、それらはハルピュイアの退場時に全て戻ってくる上20000点までの打点を選んで小分けにしながら処理できる。
千里の反応に対し、ユリカはなんの気無しに答える。
「これくらい。こっちは運営よ? 何が飛んできたっておかしくないってぐらい思ってもらわなくっちゃあね」
その目はどこか冷めているようにも見えた。
「確かに、キルハルピュイアのスペックはいただけない。それを取り巻く環境も上手くない。だから、ひとまずは修正して黙らせる事にもなっている」
遠くを眺めながら。
「だけどこの試練では引き続き《ハードコアハルピュイア》として利用させてもらうわ。」
「…………ッ」
「さぁ、地獄を楽しみなさい!! あたしは残る二体のハルピュイアであなたのセンターを攻撃!」
WIN ハルピュイアズATK10000vs8000DEFトレーラー Lose
現在ユリカの手札は二枚。
しかし、四枚も手札を捨てたヘル・ディメンションがそれを利用しない筈がない。
「あたしは《スケイル・ケイロン》を呼んで走行!」
ありがちなギア2バニラの走行。
ユリカ残り走行距離……80→70
「更に《グレイブ・ゴーレム》を呼び出すわ。走行して効果を扱う!!」
ユリカ残り走行距離……70→55
《グレイブ・ゴーレム》✝
ギア3 ヘル・ディメンション/マシン
POW 0 DEF12000 RUN15
◆『このマシンの行動終了時』捨て札からヘル・ディメンション/チューン一枚を選択して使用できる。
詩葉も繰り出したコンボが舞う。
「あたしがゴーレムの効果で使うのはバトン・グリップ! 効果でハルピュイア二枚を破壊。双方の効果で四枚ドロー!!」
《バトン・グリップ》
ギア1 ヘル・ディメンション/チューン
『使用コスト・自分マシンを任意の枚数破壊』
◆コストカードの枚数分ドローする。
カードレース・スタンピードは、展開に大量の手札を使う傾向にある。
四枚に増えた手札もガリガリ使う事になる。
「そして《スティージュ・ローラー》と《極上の乗り手ユリカ》を呼び出す」
前回と同じ布陣。
当然スティージュ・ローラーで走行する。
ユリカ残り走行距離……55→35
「まだ……まだまだまだまだまだ! あたしのカード効果でセンターに重なる! このまま走行!!」
ユリカ残り走行距離……35→15
「最後に、手札から新たなハルピュイアを呼び出してターンエンド。さああなたのターンよ!!」
トンデモを煮詰めたような流れ。
残り走行距離は15。だがユリカのデッドヒート値は20。
こちらが走ろうとしたら瞬間に負けが確定する。
それを見た。
千里は。
「あはは、はっっははっはははははっはははははははははははっはは!!」
「…………?」
こわれた?
そう思ったが違う。
ソイツはとびっきりの笑顔で言ってのけた。
「最ッ高だな! どうしよーもないッ!!」
笑って見せる。
「……へ?」
「情報量が山ほどあって頭がパンクしそうだったぜ……でもなんとか追い付いた」
千里は。
「なーんかミョーだとは思ってたぜ。やれ百人切りだの三百戦だのかぐや姫の難題だの言っておいて、クライマックスがコレってのはよー」
あくまでもフラットな目線で答えた。
「話をまとめるとさ。ゲームバランス的にキルハルピュイアがやばいのはわかっていて、修正も決まっているって事だろ?
だったらなにも問題はないってことじゃねーの」
その目線はどこか達観していた。
「地獄を楽しみなって? ああ楽しむさ。だからアンタにも楽しんでもらうぜ。地獄がぶっ壊れる様をだけどなァ!!」
アクセルをふかす。
デッドヒートを構える相手に、更に突き進む。
「俺のターン! ……俺の場にはまだ残ってる。頼もしい仲間がよ」
「パイクリートと、グリーンタートル……?」
「それだけじゃあない。センター下の《ゴールド・グース》の効果発動!! レース中一度だけ、センターの下から引っ張り出せる!!」
「あっ!?」
盲点。
「まだ行くぜ。三体の連携でハルピュイアを攻撃!」
WIN 三体連携ATK9000vs5000DEFハルピュイア Lose
疲労したギア1が三枚。
「コレで条件は整った」
手札の一枚が光輝く。
「ーーーー現れい出るは彼の日の陽光。彼方に輝く千遠火! 夜明けを見よ!! 地獄に伏した目を覚ませ!!
決着は来たれり。楽観を以ってこの瞬間を味わいやがれ!!!」
「起動しやがれ《必勝! ウイニング・チェッカー!!》」
必殺技が放たれる。
《必勝! ウイニングチェッカー!!》✝Winning_ran_checker…
ギア1 ステアリング/チューン
《コスト・センターを含め、疲労状態の三枚のギア1をセンターに重ねる》
《勝利の導き手チエカ》一枚を作成し、センターに重ねる。
「来やがれ最善ド有能。《勝利の導き手チエカ》!!」
《勝利の導き手チエカ》✝The_Winning_ruler_of_TIEKA……
ギア4 ステアリング/マシン
POW14000 DEF11000 RUN20
《デミ・ゲストカード(このマシンは自身の効果または同クラスとの入れ替えでしかセンターに置けない)》
《二回行動(このマシンは行動後、同名含め一ターンに一度のみ自動で回復する)》
◆『このマシンがバトルで相手マシンを破壊した時』このマシンをセンターに置く事ができる。
◆『このマシンの破壊時/コスト・センターの札二枚をスクラップへ』スクラップのこのマシンをセンターの上に重ねて置く。
「チエカの攻撃でハルピュイアを粉砕!! 更にセンターがギア4であることで手札から《魔弾の打ち手マアラ》を呼び出せる!!」
二体目。
《魔弾の撃ち手マアラ》✝Magic_bullet_MARA…
ギア4 ステアリング/マシン
POW 0 DEF 0 RUN 0
《デミ・ゲストカード(このカードは自身の効果、又は同クラスとの入れ替えでしかセンターに置けない)》
《拘束(このマシンは場にタップして置く。また、リペアフェイズにこのマシンは回復しない)》
◆『コスト・自分マシン一枚の破壊』このマシンを回復する。この時コストでセンターを破壊していた場合、このマシンをセンターに置く事ができる。この効果は一ターンに二回までしか使用できない。
◆『コスト・このマシンのタップ』以下のうちから一つを選択して使用する。
●カードを二枚ドローする。
●相手マシン一枚を選択して使用する。対象をターン終了まで-15000/-15000/-30で補正する。
●相手のディフェンス10000以下のマシン一枚を選択して発動する。そのマシンを破壊する。
●このマシンが走行可能であったならば使用できる。自分の残り走行距離を30減らす。
「効果発動! チエカを破壊することで二枚ドロー! だがチエカは敷き札二枚を取り除く事で復活する!」
集結する。
電子の象徴が集う。
「そして……コレで締めだ! 手札から来やがれ《剛鬼の狩り手ルイズ》!!」
豪腕が迫る。
ユリカを吹き飛ばす。
《剛鬼の狩り手ルイズ》✝
ギア4 ステアリング/マシン
POW 0 DEF20000 RUN15
◆《デミ・ゲストカード》
◆《二回行動》
◆《チューンナップ・GK(相手が残り走行距離を0にする行動を取るとき、このマシンを手札から呼び出せる。)》
◆『このカードの登場時』相手の残り走行距離を40増やす。また、このマシンは三度目の戦闘まで《進路妨害》を得る。
三体目。
一人のレーサーの元に、三体のAi−tubaが集う。
ほろり。
魔王の頬を涙が伝う。
「…………なんで。泣いてるの、あたし……」
デミ・ゲストカードが三体。
これこそが答え。
「デミ・ゲストカード。舵取りを意味する《ステアリング》の象徴。よもや舵まで制御不能とは言うめーな!」
「……そうね。確かにそれは拒めない!!」
ーーーー金色を纏う看板姫。
ーーーー魔弾掲げる白の少年。
ーーーー天突く青藍大巨人。
……それらを迎え撃つは、絶桃の女王。
世界が輝く。
ぶつかり合う。
四体ものAI-tubaが集う戦場。そこは熱気に満ちていた。




