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カードレース・スタンピード!!  作者: 能登川メイ
Episode.5 試練乗り越えた決戦!! 千里vsルイズ!!
50/190

合宿開幕。千里vs良襖!!

遥の一日は静かに始まる。


朝起きればシャワーを浴び、ゆったりとストレッチをしてから朝食へ。


熱い紅茶をゆったり飲みながら1日の予定を組み立てるのが彼女の日課だ。


店長といえど店に出るかは気まぐれで、時たま気晴らしに近場の街角に出掛けたりするのだ。


『常に余裕をもって優雅たれ』なんてことを大まじめにやらないと、女店主はやってられない。


そのはずなのだが……





「びっくりしたぜ。まさかお前からケンカ売ってくるとはよー!」


「そんな日もあらーねって事よ!」



千里残り走行距離……100


良襖残り走行距離……100



「負けるんじゃないぞ千里! 後から登録したユーザーに負けてるようじゃ連中には勝てんからな!」


「せっかくだから、僕は良襖さんを応援します!」


「どちらも頑張るにござる!」



わいわいがやがやざわざわどやどや。



「…………えーっと、朝からなんの騒ぎ? てかいつからウチに居たの?」


「昨日の晩から」


「ちょ!?」


場所は喫茶の二階、防音ネットブース。


そこは今、彼らに占拠されていた。


良襖の先行からレースが始まる。





ゲーム世界。


此度のレースは桜吹雪舞う花の城下町で行われていた。


「あたしのターン! センターの《騎馬王アカトバ》で走行してターンエンド!」



良襖残り走行距離……100→95



「俺のターン! センターの《ゴールド・グース》で走行! 更にギア2《パイクリート・サイドライド》《ゴールデン・ハイウェイキッド》を呼びだし走行!」



千里残り走行距離……100→95→85→75



「これでターンエンドだ!」


「ハン! 随分と控え目な走りじゃない!」


「いってら! 《スカーレット・ローズ》はここからが本番だってーの!」


序盤が流れる。


そもそもよほどの事がない限り長々とした決戦にはならない。


このゲームだって、場合によってはあっというまの決着だ。


「あらそ。じゃああたしのターン、アカトバで走行! 更に《戦国騎兵隊》を重ね走行!!」



良襖残り走行距離……95→90→80




《騎馬王アカトバ》✝

ギア1 ()()()()()()()()()()/マシン

POW2000 DEF2000 RUN5

◆『常時』自分センターが三回行動する度に、山札からサムライ・スピリット/チューンカード一枚を手札に加える。




《戦国騎兵隊》✝

ギア2 ()()()()()()()()()()/マシン

POW6000 DEF6000 RUN10

『自身の上か下にマシンが置かれる』山札から《戦国騎兵隊》一枚を選択して場に呼び出す。




サムライ・スピリット。


チューン一枚一枚を必殺技のように扱い、派手な闘いを得意とするクラスだ。


そのため、各マシンの素の打点は低い傾向にあるはずだが。


「さあここからよ! 重ねいでよギア3《機動城》!! これで走行して、更に戦国騎兵隊の効果で新たな戦国騎兵隊を呼び出すわ!」



良襖残り走行距離……80→65



それを感じさせる事はなかった。


「ここで騎馬王アカトバの効果が起動して《居合走法》を手札に加える。そのまま発動!」


良襖の手に、ひとふりの刀が握られる。




《居合走法》✝

ギア3 サムライ・スピリット/接地チューン

『使用コスト・自分マシンを任意の枚数このチューンの下に』

◆《常時》()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

◆『ターン終了時』このチューンの下のカード一枚を捨て札にする。そうできないならこのチューンを破壊する。



「使用コストには増えた分の騎兵隊を重ねるわ。これであたしはターンエンド!

……さ、好きなだけしかけて来なさい?」


「できるかぁ!?」


刃を構えた良襖の、豪快な無茶ぶりに頭を抱える。


しかし並走する観客席、イマイチ状況がわかってない二人の級友、或葉は首を捻って隣の姉に問う。


「どういう事にござる?」


「つまり、これで千里は次のターンに勝負を決められなくなった訳だ。

何せ自分が勝つ手を打ったら逆に負ける訳だからな」


居合走法は千里のターンいっぱいで自己破壊されるが、そのターンの間は千里の勝利を完璧に閉ざす。


スタンピードは『往復4ターン目の駆け引きで決着のあらかたを決める』ゲーム。


それを安全に踏み倒す事がどれ程勝利に繋がるか。


確実に到達した5ターン目に《サムライ・スピリット》の特色のギア5チューンが飛んでくる。


例えば、こんなカードとかが。




《秘剣・大蛇狩酒呑炎斬》✝

ギア5・ サムライ・スピリット/チューン

◆相手マシン一枚を破壊する。この時自分の残り走行距離がゲーム開始時の三分の一以下だった場合、自分は()()()()()()()()




一目でわかるくらいの『出したら勝つ』カード。


これを着地させるわけにはいかない。


先の先まで読んでこそのカードゲーム。そんなこと、千里ははとっくのとっくに把握している。


「俺のターン、ドロー」


心なしか声ものわよわしく千里がプレイを続行する。


手札は五枚。


何をどこまでできるかを考察する。


勝てないながらも、詰み王手をかけねば千里に勝ちはない。


そして結論は出た。


「……《ゴールド・グース》の効果発動。レース中一度だけコイツをセンターの下から引っ張り出せる」




《ゴールド・グース》✝

ギア1 スカーレット・ローズ/マシン

POW2000 DEF2000 RUN5

◆『レース中一度のみ』このマシンをセンターの下から場に呼び出す。




「続いてセンターにギア3《ダイナモ・アーミー》を置いて疾走。更にギア4《ブラック・グリズリー》を呼びだして走行!!」



千里残り走行距離……75→60→40



勝利への挑戦。


力強い走りが芯に迫る。


「更に手札から《魔弾の打ち手マアラ》を呼び出す! 効果でグリズリーを破壊して30キロ続行!!」




千里残り走行距離……40→10



マアラの効果は一ターンに二度使える。


本当ならこのまま勝てるはずだが、それを今やると《居合走法》の効果で千里の負けだ。


なので、準備だけを済ませる。


「最後にマアラのコストでゴールド・グースを破壊してターンエンド! このターンで居合走法は破壊されるぜ?」


「……?」


刀を手放しながら良襖は疑問に思う。


相手のターンにマアラの走行能力は使えない。そして次の千里のターンがくる前に勝負かマアラのどっちかは終わる。


だが。


直近の闘い、最近流行りのカードプール、千里の残り手札が二枚という情報から。


結論を導き出す。


「あー!! あ、あ、あ、あ、あー!! まさかあんた!?」


「さーて、どーだかなぁ?」


「ああもう、わかってても対策法が浮かばない!!」


混乱する良襖を見て困惑声を上げるのは傍楽だ。


「なにあれ! 多分千里が凄すぎてなにがなんだかわからない!」


ほとんどの面々が結末を察する中、彼だけがなにが起こっているのかわからない。


「わからないか? 千里は見事に詰め込んだんだよ……対戦者をな」


だとしても、と良襖が動き出す。


「《機動天守カチドキ》の効果! 自分ターン開始時に《機動城壁》二枚を展開する!」




《機動天守カチドキ》✝

ギア3 サムライ・スピリット/マシン

POW7000 DEF11000 RUN15

◆『自分のターン開始時』手札または山札から自分の場に《機動城壁(ギア3/サムライ・スピリット/マシン/7000/11000/15)》二体を呼び出す。




ギア3が三枚。


この三枚で走ればアカトバの効果が起動、確実に良襖の勝ちのはずなのだが。


それでも彼女が負ける流れなのだからこのゲームはわからない。


眉をひくつかせながら指令を下す。


「……あーもう絶対間抜けな奴じゃない! 走りなさいカチドキ!」


「だったら!!」


予定調和の返し手。


貫禄すら感じる圧倒的実力が吹き出す。


「ここで俺はマアラの効果を発動! 破壊するのは……俺のハイウェイキッド!!」


一見意味不明な行動。


しかし意味はある。


「ここで手札を一枚捨てて《死炎印(デッドヒートスタンプ)》を起動!!」


「……やっぱり」




死炎印(デッドヒートスタンプ)》✝

ギア3 ステアリング/チューン

《使用条件・自分マシンが破壊されるとき/手札一枚を捨てる》

◆ターン終了まで、このカードは使用条件となったマシンのRUNと同値の《デットヒート(相手が走行したとき、デットヒートの数値分走行する)》を得て設置される。





「あんたってば……人には流行りに乗るなって言っておいて自分はやるのね!?」


「調子の良いこと言ってスンマセンでした! ルイズにも言ってきた!」


炎が灯る。


千里がゴール地点目掛けて飛翔していく。


「そんじゃー、デッドヒートウイニング! 死炎印の効果でゴールだ!!」




千里残り走行距離……DH(デッドヒート)により10→0=GOAL!!



炎に包まれた千里がゴール地点に着弾する。


今日も千里は絶好調だった。





そして帰還したリアル。


黒のあぶくが甘く勝利を祝う。


ごくりと飲み干し、ぷはーと息を吐き。


「……なにやってるのコレ」


「合宿っす」


細い目で問う遥に千里は答えたのだ。


「なんか、良襖のやつに誘われて」


ハッとして隣をみる。


なぜかドヤ顔の幼女君主と目が合う。


我が魔王の信じられない行動に、恐れ慄く家臣の図である。

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