決着! センリvsチエカ!
チエカのカード紹介コーナー! 今回紹介しますのは、ワタシこと《勝利の導き手チエカ》! ギア4だけあってそのステータスはパワー15000、ディフェンス11000、走力20と超破格! 同名ターン一の縛りはありますが、自身を回復する事で二回行動を取れます! 前回登場したこのカードがいかに暴れまわるのか、それについては本編をご覧くださいください! ではでは早速本編へGo!
このゲームには現在、三種類のルールが存在する。
一つはギア上げのルールなどにより制約がかかる《スローダンスレース》。
レース時間が間延びし、爽快感がそがれる事もあるが…初めての人でも分かりやすくゲームに馴染める。
二つ目は走行距離が倍の《スチールハート・レース》。
過酷な耐久レースとなるが、初心者から上級者まで誰もが楽しめる。
そして三つ目が……現在センリとチエカが行っている《フルスロットルレース》。
一回のレース時間が短く、ダレる事なく決着を着けられるが…初心者に優しいとは言い難い。
そんなルールを初めてのユーザーへ全力でぶつけるのが《スタンピード》。
このゲームの辞書に手加減という文字は無い。
チエカと併走する、もう一人のチエカの姿を見て。
センリが、妙に納得したような声を出す。
「アンタの分身………《勝利の導き手チエカ》ってゲストカードだったのか…そりゃあそうか。タイマンのレースの中で、アンタはゲストそのものだ…」
「基本的にはそうなんですけどね?」
チエカの瞳に知略の炎が灯る。
「まあギア4ともなると、それだけじゃ立ち行かなくなる訳ですよ。せっかくの走力20、無駄にするのは勿体無いじゃあありませんか!」
「つまりアレか。センターに置く手段があると!」
「ザッツライ! ワタシはワタシ自身でアナタのセンターへ攻撃!」
「!!」
チエカのステータスを確認する。
チエカのステータスはギア4ゲストカードらしく、パワー15000、ディフェンス11000と破格だ。
対するグレイトフル・トレインのステータスはギア3にしてパワー14000のディフェンス10000。
妙に高いパワーは何なのだろうと思ったが、先程吸収したオポッサムのパワーが追加されていたのだ。
あえなく爆散。
その中から現れたのは。
「こいつは…さっき吸収したアンタのレッド・オポッサム!?」
「そらそうでしょうに。トレインの効果の仕様ですから……
さてここでワタシの効果! このカードが相手マシンを破壊した場合、センターに重ねられます!」
「げ!?」
「チエカはこうした自身の効果か《必勝!ウイニングチェッカー‼》の効果、または同じ《ステアリング》クラスのマシンと入れ替えることでしかセンターに置けないマシンなのです!」
「ちょっと待った! クラス!? ステアリング!?」
「まだまだ学ぶべき事があるって事ですよ♪ さあさ今こそ1つに!」
発言と共に、センターと並走者のチエカが一つに重なる。
その姿が、一段と豪華で可憐なものに進化する。
「ッ!」
「さてさて、先程見かけた通りワタシは二回行動…一ターンに一度の自力回復が可能! 当然走ります!」
「ちくしょう!」
実にひとっ走り20キロ。
チエカが更に突き放す。
「続いてメタルコートライダーの攻撃! と行きたい所ですが、この子が攻撃するためにはセンターまたは行動してないマシン一枚を破壊する必要があります。
困りましたねー行動してない他のマシンが居ませんねー?」
「……おいまさか」
「そのまさかです!」
チエカが右手を鉄砲のように構える。
自分のこめかみに向ける。
「ワタシは! メタルコートの効果でワタシ自身を破壊!」
「嘘だろォ!?」
「返して貰いますよォワタシのかわいーオポッサム!」
チエカの姿が爆発する。
直後、虚空を超えてフルフェイスメットのライダーが現れる。
そのままがセンリの眼前に迫る。
轢き潰す。
「うわぁああああああああ!?」
「驚かせちゃいました? 終盤になると演出も派手ですよ♪」
気安い声と共にオポッサムが爆散する。
しかしセンリはまだオポッサムに乗っていた。
「俺の、俺自身のオポッサムか…」
「さてここでワタシの効果!」
「まだあるのか!?」
「もちろん! このマシンが破壊された時、センターに三枚以上のマシンが重なっていた場合、上から二枚をスクラップに送りこのマシンを復活させる事ができる!」
「……確かアンタのセンターにはギア1、ギア2、ギア3の三枚が…いや待てよ一度破壊されて復活したってことは…」
「当然! 行動権も復活しています!」
「やっぱりかよぉお!」
「走れワタシ! 栄光の勝利へ向けて!」
決戦仕様に戻ったチエカが駆け抜ける。
センリはこのバトルの理不尽具合がようやく身に染みた。
ガチ過ぎる。
無理ゲーだ。
(これよりキツイとか、フリークエストのコイツはどういう化物なんだ!?)
「さーって見えてきましたよ始発地点! あそこにたどり着けばワタシの勝利です!」
「こちとら影も形も見えねーよ!?」
「ヘーキヘーキ案外アッサリ走りきれるモノですよ♪」
「今見せてもらったよたった今!」
最早余裕。
このターンの行動は終了だろうが、次のターンが回れば確実にチエカの勝ちだ。
しかもオマケまで飛んでくる。
「ここでギア1チューンカード《ファントム・オアシス》! 次のターン、相手の一走目の走行距離をゼロに変えます!」
「鬼かっ!?」
「さてそれはどうでしょう?」
(てか確か、あの人手札にグレイトフル・トレイン余らせてるよな!?
ギア上げできないからだ! トレインをセンターに置いたら自分の分身を出せなくなるからやらなかったんだ!)
「これでワタシはターンエンド! さてアナタは次のターンで勝利を収めなければいけません。
理由はもちろんおわかりですね? ワタシの元にオポッサムが戻り、センターと並べて走りきれるからです! てかぶっちゃけ片方でも走り切れます!」
「そらあと5キロだからな!?」
「ハイ! ではではアナタのターン!張り切って参りましょう!」
「ちっくしょう!」
嘆きと共に手札を確認する。
手札にはギア2〜4のカードが揃っている。
場のギア1と合わせて順番に走れば、走力は5+10+15+20=50。
ただでさえあと15キロ足りないのに、一走目をチャラにされてはどうしようもない。
恐ろしい事に手札のカードは全員効果無し。
このままではどうにもならない。
素直な手を打つだけでは足りない。
(なんだ!? 何が足りないんだ? これは負け確定だったのか!?)
「さあさまずはドローしないと♪」
「くっ……」
デッキからカードを引く。
引いたカードはチューンカード《クライマックス・ラン!》。
(えっと、ギア4のチューンカード? 効果は…スクラップのギア3をセンターに重ね、下になったギア1を可能な限り呼び出す?
何だこれ? こんなのセンターのギア下げるだけなんじゃ…)
そこまで考えたところで思い直す。
(まてよ? アレをこうしてこうすれば…)
思考を巡らせる。
勝利への道筋を組み立てる。
「……やってやる。乗り越えてやるぜこの試練!!」
最後の疾走が、始まる。
「俺はレッド・オポッサムで疾走!」
「先程のファントム・オアシスの効果で一走目はチャラです!」
「おうさ! 続いて重ねいでよ《ブラッド・ハーレー》! また走るぜ!」
「ほう!」
センリが10キロ進む。
残り55キロの壁がセンリを阻む。
「まだまだ! センターにさらに《ダイナモ・アーミー》! 走れ走れ走れェ!!」
「むっ!」
自衛隊の発電車みたいな緑の躯体が駆ける。
残り40キロ。
「そして化物のおでましだぜ!ギア4《ブラッグ・グリズリー》! 駆け抜けろ!」
「くっ!!」
漆黒の怪物マシンがコースをゆく。
これで残り20キロ。
だがここからが足りない。
チエカが騙る。
「ここまで……キレーに攻撃が決まったのは、前のターンに不要な攻撃を行わず、2から4までのギアを手札に確保したからです。それに関してはお見事と言う他ありません」
「そりゃあどーも」
「ですがここまで」
語気が強まる。
モニターを越した瞳がまっすぐにセンリを見つめる。
「ここからどう走りきります? このチュートリアルデッキに、ギア4は互い一枚しか入っていません。もう入れ替えも行えない以上、どうやっても走行距離は伸びませんよ!」
「……例え、アンタの全部が演技でもよ」
「ん?」
「あえて言わしてもらうぜ。『果たしてそうかな』ってな!」
「……まさか?」
「行くぜチューンカード!」
地響きが起こる。
どこからともなく太鼓の音が鳴り響く。
クッキーのコースがひび割れる。
その光景を、離れた所からツインテールのバニーガールが見つめていた。
「また一人……現れたわ……最速でこそ無けれど……」
「発動しやがれーーーー」
「……その高みに手を伸ばす者……!」
「ーーーー《クライマックス・ラン!》」
大地より、一台の列車が飛び出す。
「なんとぉ!?」
「クライマックス・ランは、捨て札のギア3以下をセンターに重ねて呼び出せるカード。そしてその後、下になったマシンのうちギア1を可能な限り呼び出す!」
「つまりアナタの場には三台のマシンが並ぶ!」
「おうよ! 大列車グレイトフルトレイン、レッドオポッサム、グリーンタートルだ!」
赤と緑のケモノマシンが吠える。
終盤は演出も派手と言うのは間違いない。
「そしてグレイトフル・トレインの効果! 場のギア1を吸収する事でその分のステータスを得る! 俺はグリーン・タートルを選択だァ!」
「むぅ!」
グレイトフル・トレインが緑のオーラを纏う。
「これでグレイトフル・トレインは走力が5追加されて20。残りの距離も20キロ。……見えたぜ。進むべき道筋が!」
「……ここまで、ですか。さあ、最後の手を売っちゃってください! アナタの栄光に繋がる一手を!」
「おう! 俺はグレイトフル・トレインで走行!ウイニングランだぁああああ!!」
そして。
センリの視界が加速する。
桃の景色を置き去りにする。
巨大な施設へと突っ込む。
寸前、チエカの姿とすれ違う。
瞬間見えた彼女の表情は。
太陽すら凌駕する、輝ける笑みに満たされていた。
「……お見事!」
「アンタは……」
直後。
轟音と共に、レースはセンリの勝利で幕を下ろした。
先に待つ新たな景色! 次回「次の景色へ!」をこうご期待!!