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カードレース・スタンピード!!  作者: 能登川メイ
Episode.5 試練乗り越えた決戦!! 千里vsルイズ!!
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決着のエピローグ。そして明日へ!

「お疲れ様」


「あざまっす」


リアルへの帰還。


銀髪の少年の同志達。


防音ブースには、観戦していたマアラと詩葉、そして遥が待っていた。


遥が切り出す。


「つかれたでしょ。コーンスープでも飲む?」


「飲みます! ……熱ゥ!!?」


「あーごめん、飲み物出す?」


「はいっす……」


あっつつ……と呟きながらスープとコーラを交互に流し込む千里。


その様子に苦笑しながら。


「それで、どうだった?」


遥が優しく問うと。


「バッチリっすよ」


少年は自身満々に答えた。


あの世界での結末は素晴らしいものだった。





「ーーーーよく来てくれたぜ相棒!!」


『まさか!?』


「来やがれド有能! 《グレイトフル・トレイン》」


デスティニードローの行く末。


大地突き破り、人面列車は現れる。





《グレイトフル・トレイン》✝The_great_full_train…

ギア3 スカーレット・ローズ/マシン

POW10000 DEF10000 RUN15

◆『自身がセンターである/コスト・自分の場のギア1を自身の下に置く』このマシンのステータスに、コストカードのステータスを加える。



「行くぜ? 強化されたルイズに三体で連係攻撃!!」


『!!』




WIN 三台連係41000vs40000レッドルイズ LOSE




赤熱の巨影は崩壊する。


視界塞ぐ朱が失せる。


そして、道は開けた。


『バカナ…………』


「んじゃ、行かせてもらうぜ」


呻きに返すように、勝利を宣告する。


「これが本当のウイニングラン!! 重機王で走行…………俺の勝ちだ!!」


走る。


走る。


双脚を振るい、前に前に前に前に前に前に前に前に前に前に前に前に前に前に前に前に前に前に前に。


そして道中。


大顋を捉える。




追い抜きざま。


すれ違うようにぶっ飛ばす。




『ヌーーーーワーーーーーッッ!!』




千里残り走行距離……60→35→10→0=GOAL!!




「とゆー訳っすよ!!」


一手の差をもっての圧倒。


文句無しの勝利であった。


「ははっ……最後は運が味方してくれたか」


嬉しさを爆発させる少年に、遥は苦笑しながら答える。


と、一呼吸置いて千里は答える。


「ええっす。つっても、味方はもっと居ますけど」


「?」


「良襖。傍楽。或葉。詩葉さん。なんならそこのマアラだって」


「いや僕いれないでもらえます敵なんで!!」


白いもこもこが否定するが千里は構わない。


「そんだけ多くの人たちが一緒に居てくれたから俺は戦えた。そう思うっす」


「はっ。言っちゃなんだけど羨ましい限りだわ。こちとら部下だの同僚だの、挙げ句パワハラ上司だのビジネスのつながりばっかで……」


「なーに言ってんすか」


千里は、何気ない事のように言ってのける。


「遥さんももう、俺にとって大事な人の一人っすよ。背中を押してくれた、そばに居てくれた大切な人の」


その言葉にはっとしたように。


「あたしも、大事な……」


「そ・こ・ま・で・だ」


流れに割って入るように詩葉が言う。


「そろそろ奴さんが起き上がるぞ」




ガ バ ン !!




ゲーム世界。


ゴール地点の地下からルイズの青顋が突き破り出でる。


その姿はひどく傷付いており、電気部分は明滅していた。


『グヌヌヌヌ…………随分とこっぴどくやってくれたものだ全く!!』


「おーよ。そりゃゲームのボスを全力でぶっ倒すのは当たり前の事だからな?」


「抜かしおる」


「では、総評を述べて貰おうか」


『ウ、ウム…………はぁ』


仕方なげに、ルイズは合否を告げる。


『お前は我が九十九の配下を打ち倒し、我自身の打倒を持って百の首を狩る偉業を成し遂げた!!

苦難の道のりを超えたことを此処に称えようではないか!!』


そうして結論。


『この一戦を持って《百人切りの試練》合格とする!! 見事であったぞ!!』


「オッス!!」


それこそが結末。


更なる高みへ少年は進む。




千里、現在のクリア状況…………


    《初陣強襲の試練》……クリア済み


    《若葉の試練》……………クリア済み


    《百人切りの試練》……クリア済み


    《娯楽恐悦の試練》……ボス戦以外完了


    手付かずの《試練》……残り三つ




…………計七つの《試練》をクリアし、ラスボス仕様の御旗チエカを討伐した時、《カードレース・スタンピード》クリアとなる。




また一歩先へ。


先駆千里が、攻略の歩みを進めたのだった。




「それじゃ、いよいよだな」


「ええ」


詩葉の言葉に、リアルで隣を見やる。


現実ではゆるふわな女店主。


そして電子の海では悪役令嬢同然の高飛車君主。


「……そうね、きっちり相手してもらわなくっちゃ」


遥…………七天のAi_tuba戌岸ユリカが、静かに敵対を強めた。





「さーって、いよいよほぼ半数が倒されちゃった訳か」


『まったまた。気が早いですよー? ワタシの試練ももう一回ありますし?』


薄暗い六畳間。


秘密の本拠地で鳥文良襖と……御旗チエカが会談する。


「いいえ…………彼は遥さんにもきっと勝つ。そして合格を受け取るわ」


「あの試練の合否は女王の手の平の上。貴女が言えば、不合格にさせられるのでは?」


「ちょっとそれはできないかな。あんな必死な姿を邪魔するなんて……それに」


「それに?」


わざとらしく疑問符を浮かべるチエカに言ってやる。


「今回は『タギー』が介入してきた。メインがあたしでも、巻き込めないならそれでいいって感じでもあった。

それって!我らが『支援者』にとっても彼らは厄介者ってこと……でしょ?」


「さて、どうでしょうねぇ……?」


画面の中で、言葉を濁す看板娘。彼女はどこか中立な立場を取る事が多い。


それでも、役に立つならそれでいい。


そんな在り方は最初に許容した。


「……ここで彼らを止めるのは上手くないわ。目の上のたんこぶにも痛い目見てもらわなきゃ。

勢いを殺さず両者を出会わせる、なんてのも良いかもね」


「いやはや、さすがラフマさんヤッバイいこと考えなさる♪」


「世辞はケッコー……さて」


良襖が制する。


それは策師の目だ。


「もうまもなく『絡めとり』は終わる。そのためにはもうワンアクション、必要かもね」


思案する。


確実な敵を見据え、級友を欺き、相棒さえ信用ならない中にあって。


それでも、その小さな頭脳には電子の海を熱狂に導く術がつまっていた。






そんな思考のさなか。


トントン、と。


部屋のドアをノックする音が響いた。






『おっと失礼。親子の時間を邪魔しちゃいけませんからねぇ?』


わざとらしい言葉を残し、画面からチエカが消失する。


そののち襖を開き現れたのは、見事な乳とどこか陰鬱な空気を背負う女性。


「夜食作ったよ。食べる?」


「うん……ありがと」


彼女の母親。


鳥文頼果だった。




鳥文邸。


向かい合う親子は、普通の間柄とは少し違っていた。


鳥文良襖がスタンピードの運営者であるように。


鳥文頼果も普通とは違う『人材』だった。


「どうして?」


「んー?」


「どうして『タギー』についたの?」


「……うん」


タギー。


スタンピードの出資者の名。


それに従うということは、愛する娘の邪魔をするという事だ。


「タギーの人にさ。言われたの。『あなたの娘は無理をしている』って。休むようにした方が良いって。

私にもね。良襖が無理していように見えて仕方がなかったのよ」


それは、娘を心配する母親の有りよう。


「あなたが天賦の才を持っているのは知っている。だけど、それは孤独を伴うんじゃないかって。すごく不安だったわ」


「……ごめん、心配かけて」


彼女は知っている。


良襖が開発者だと言う事も、大勢の客や大企業相手に戦っていると言う事も。


その上で。


「でも、心配要らなかったわね。だってあんなに頼もしい友達が居るんだもの」


チクりとくる、言葉を聞く。


何せ良襖は彼らを欺いている。


だからこそ問う。


「ねぇ、あたし……うまくやれてるかな?」


「わからない。でも、もし道を間違えそうになっても彼らは止めてくれる。そんな気がする」


「止めてくれる……」


「そう。そんな友達は貴重。手に入れようとしても手に入らないもの」


その上で。


「だからね。お母さんもう迷わないから。私は私ができる事をする」


決意。それは山より高く。


「《剛鬼の狩り手ルイズ》として。あなたを支えるわ」




カチャッ スーーーー……


ピッ。ピロリロリロ…………


「さ、やろうかな」


鳥文頼果。八重浜近辺に勤務するオフィスレディである。


仕事は真面目でそつなくこなすが、出世欲も無く陰の薄い女。


その彼女の裏の顔がルイズ。


仕事の疲れを仕事で晴らす。


そんな彼女をなんと呼べよう。




「よくぞ来た童ども!! 我こそは《ラバーズ・サイバー》の主、ルイズである!!』




あるいは、問いかけこそが無粋か。


ひとえに、愛ゆえの行動……そうしておくのが賢明だろう。





「……あたしがこうして運営できているのも、ママが書類上のトップで居てくれて居るから」


自室に戻りながら、感謝すべき状況を確認する。


「あたしももっとがんばらないと……今できる事といったら……」


ぶつぶつ。ぶつぶつ。


呟きが階段を転げる。


小さな頭の中で思考が巡る。


「彼らをタギーにぶつける……そのためにはまず逃がさないのが重要で……逃がさないためには場所を区切ることが……」


と、ひらめく。


全てがうまく行く、最高に都合の良い一手が。






そして翌日の放課後。


先駆千里の目の前に立ち、鳥文良襖は切り出した。


「…………合宿やらないっ!?」


「へ?」


魔王からの誘いが仕掛けられ。


勇者は困惑を返すのだった。

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