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カードレース・スタンピード!!  作者: 能登川メイ
Episode.4 試練開幕! ???vsユリカ!!
32/190

百合花舞う聖域の衝撃!

チエカのカード紹介コーナー! 今回紹介しますのは《ヒロイン・スタチュー》!!



《ヒロイン・スタチュー》✝

ギア1 サイエンス・ケミストリー/マシン

POW  0 DEF30000 RUN0

◆《守護の試練》はこのマシンを設置した状態で開始する。このマシンが場を離れた時、試練は失敗となる。



規格外の性能ですが、その実は《守護の試練》専用のイベントカード。執拗にこのカードを狙う相手から庇いきり、このカードを場に維持したままレースに勝たなければいけないのです。


しかもゆくべき道は200キロ。長期戦で護り切る難しさは押して然るべき。難易度は7つの試練の中でもバリ高です!!


さあさあ大惨事が巻き起こってしまった前回。では今回はどうなってしまうのか? 本編にGo!!

物語は、大惨事の約十分前に遡る。




晴れ渡る空のもと。


最近冷えてきた町並みをゆくは、大人と子供の『女子』の群れ。


一人はガサツな女。多少メイクに気合いを入れてるとはいえ、ほかはわりと普段通りの男女、丁場詩葉だ。


そしてもう一人は。


「……うぅ……恥ずい……」


耳まで真っ赤にした銀髪の童女…………


…………と化した、先駆千里。


「んで。結局どんなトコなんすか……その……」


「百合喫茶。オレの行きつけの店でな……癒やしの空間だ」


動揺しっぱなしの千里とは対象的に、詩葉はかなり上機嫌だった。


「キュアメイドカフェに近いが男子禁制。ただただ癒やしを求める女子が集う場所だ」


「げ……それで今日こんなカッコだったんすね……」


千里の今の格好は、ガッチガチの女子ファッションだった。


そもそもが艷やかな銀髪。それを普段は雑にドライヤーをかけて眼前からどけていたのだ。


その毛量はショートカットの女子と大差ない。丁寧にブラシをかければ若い毛並みはすぐに輝きを取り戻す。


そこへフリルスカートや彩度の高いコーデの武装を重ねれば、第二次性徴前の体はあっという間に女子のそれになる。


ーーーー想像してみよう。もしも自分が急に、ふわふわきらきらの服を着込んだ銀髪のロリータ少女になってしまったら。


恐らく、平常では居られまい。触れることさえ乏しい布地の感触で居てもいられなくなるだろう。


何より。


(は……恥ずいっ!! なにさこのスースーするの! 背筋がざわつくっての……!!)


白と橙のオーバーニーソの加護も『肝心な所』は守ってくれない。


何もかもが頼りない。


そんな動揺する彼を見て詩葉はくすくすと笑う。


「ぷっ……似合ってるぞ千里。いや今日はチサトとでも読んでやるか。言っておくが女装して入店するのは公認されているから安心しろ。

ただしもちろん、店の雰囲気を壊したら血の粛清が待っているので気をつけるように」


「血の粛清って何!?」


「そのままの意味だ。それとお前が現地でやれるのは『百合の真似事』であって『百合』そのものではない。ここも間違えると命に関わるからな、一発でスリーアウト制裁(ジャッジ)だ」


「怖いってレベルじゃねぇ!?」


千里は不穏なワードを警戒しながら、自分よりむしろジーパンタンクトップポニーテールの雑な格好の詩葉のほうがヤバイんじゃないかと思い始めていたが。


「さあ……着いたぞ。ここだ」


以外と派手な装飾を掲げず、外面から落ち着いた2階建ての店に着くなり。





無用の心配だと知る。





ガチャ……パタン。


「……()()()()()()()()()()()()()() ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


「はいはい。いらっしゃい、私の城へ。そしておかえり」


ムッギューーーーーー!!




「…………………………………………………………誰あれ」


店の長らしい女性と抱き合う姿に唖然とする。


「? なに固まってんだ?」


「いや、なんか。あんたも『女子』だったんだなって」


「ふん。()()()が女らしくして驚いって?」


自信満々に胸を張る。改めて見るとボディラインの良さがわかる。


普段女らしくしていないだけで、実は素のスペックは高いんじゃ無かろうか?


詩葉が、心なしか柔らかい言葉づかいで告げる。


「ま、ここでは一切合切気を張らなくて良いからさ。力抜いたらこんなもの。これがホントの意味で素のあたしだよ。改めてヨロシク?」


「あーヨロシクな。今後あんたにドキドキするかもしれないのでそのつもりで」


「りょーかい☆」


ウインクが不意に繰り出され、ガチで意識しそうになってしまったので千里は目を逸らし。






振り向いて。


絶句する。


相手と共に。






((なんでここに知り合いがっッッ!?))




赤毛の同級生を見つけた千里が硬直する。


可愛らしく変身した千里を見た赤毛少女が震えている。


先に口が動いたのは千里だ。


「ま……ままままさかオメーが居るとは。うちらの世界も狭いものよななななな」


ガクガクズタブルガタガタズッタァン……


全力全開で同様しまくる千里だが、それでも怯える美少女にしか見えないのだから天性のものがある。


「し、しょうがないでしょう? ううううち両親不在ばっかりで人肌が恋しくなるのの」


と、どうにかして答えるのは、千里の級友こと鳥文良襖だった。


ーーーーもちろん彼女は、前回触れた通り彼らが討つべき大首領《Yagami123》の正体なのだが。


通常の人間の思考なら、まずは逃げ隠れの算段を始めるところだろう。


しかし彼女は違った。




(ーーーーぷっはっはっは!! あれ千里じゃん! って事は後ろの女が相棒? なになになんなのこのなし崩し的にあたしもパーティー加わりそうな流れ! だっれもあたしがラスボスて気づいてないし!

ウケる! ガチウケる!! こんなのとびっきりの「取材」じゃないのよもー!!(((≧∇≦)/)




これが世界を回すものの思考回路。


いちいち憂いているようなら世界の創造などできない。


人知れずピクピク震えながら狂喜乱舞しているのだが、それを知る敵はどこにも居ない。せいぜいが千里同様の動揺なのだろうと思うことくらいだ。


「と、取り敢えず座ったら? カウンター席も良いものよ?」


「お、おおおおう」


「と……取り敢えずドリンクでも頼んだら?」


「あ、ああ」


会話は進む。


「うち、さ。共働きなおかげでお小遣いだけは無駄にあるから。ここにはそれをそれを使って温もりを買いに来るのよ(キリッ)」


「(キリッ?)ふーん、事情は色々あるのな。うちはアニキとべったりの……」


会話はぎこち無くかわされていくが、その心境は180度違っていた。


(最悪だッッッ!! 絶対明日学校で笑い物になる奴だわこれ! どうあがいても最悪の未来しか見えねぇッッ!!)


(最高よッッッ!! こんな逸材がこんな身近に居たなんて! どうしよどうしよどうしましょう! パックの看板にしたいくらい可愛いわッッ!!)


ラスボスと、ちっぽけな英雄。


その差は器の希望からして別物だった。


(降ってきたあああああああああ!! フィニッシャーのイメージが!! 壁をぶっ壊すアイデアがッッ!! うっわもうこの子に足向けて眠れないわ向けるけど!!)


かくして、彼女の中で、第三弾のパックカードのテキストデザインが完全に完成した。




《XXXXXXXXXX》✝

ギア5 ステアリング/マシン

POW  0 DEF  0 RUN 0

◆《場のマシンカードが合計10枚以上存在する》XXXXXXXXXX。

◆《ソウルカウント・3000/3000/5(XXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXX)》

◆『センターの敷札を選択する』XXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXX。

◆『相手フィールド上にセンター以外のマシンが存在しない/センターの敷札一枚を横にする』XXXXXXXX。




(テキスト確定ッッ(≧∀≦)後はデザインだけとかラクショーじゃないのッ!!)


「なーんかスゲー笑顔だけどどした?」


「気にしないで。アナタの美少女っぷりが眩しいだけだから(グッ)」


「悲しくなること言わないでくれよな!?」


なんか泣いている気がするが気にしない。


一人のユーザーの脳を啜った彼女は、仕事は終わりとばかりにだらけるだけだ。


そして心からの礼を述べる。


「いい目の保養になったわぁ……ありがと。これからそのカッコでちょくちょく会わない?」


「断るっての!!」


「けちー。絶対もっかい見てやるんだから」


ふててそっぽを向いてしまった良襖。


と、隣に詩葉が座る。


ビクッとする。


「はっ。ずいぶんな級友をお持ちのようで?」


「そりゃあドーモ」


毅然と答えたつもりだったが、とろんとした瞳で見られるとドキッとしてしまう。


(うっわ……これ拠点各保どころか……色々手に付かなくなる奴だわ)


「どう? この店は?」


不意に声をかけられる。


派手すぎないが可愛らしい制服に身を包むのは、雰囲気からして店主だろう。


ミルクティーベージュの髪を何束かに分けて流し、ゆるふわの空気感を作り出している。


だからといって若輩者を語るつもりは皆無だろう。仕事に必要そうなポシェットを敢えて隠すことなく見せている。


その表情からも、アイドルのようなキラキラより包み込むような慈愛を選択した事が受け取れる。


「す、スンマセン……ちょっと事件の連続でそれどころじゃないっす」


「いいのよ別に。ただし言葉づかいには要注意。せっかくの美少女っぷりが台無しよ?」


「き、気をつけます……」


「よろしい。……自己紹介がまだだったわね」


言って、女店主は向き直る。


「私は遥。涼詩遥よ、よろしくね?」


女店主……遥は優しく微笑んだ。

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