戦況整理。挑むべき道との邂逅!
チエカのカード紹介コーナー! 今回紹介しますのは《ウェブシーク・デーモン》!
《ウェブシーク・デーモン》✝
ギア3 ラバーズ・サイバー/マシン
POW 0 DEF15000 RUN0
《呼び出しコスト・手札一枚を捨て札へ》
『進路妨害(相手は進路妨害を持つカードが存在する限り、可能ならそれを攻撃する)』
前回、ど派手に妨害してくれたド有能君!! 完全な壁専用マシンで、ギア一つ分の軽さのおかげでエレナより気軽に使えます!
手札コストこそあれどソー・バット!! 現環境はドローの鬼。通常のレースでも十分コストを確保した上で繰り出せる事でしょう!
さあさここから物語は再始動! ついてきてくださいよりミナサマ!!
「ほう。調子良いじゃないか、千里」
「……ん? あー、詩葉さん居たんすか」
「ああ。借夏のやつに入れてもらったんだ」
リアル。
自室のPCの前、向かっていた千里は相棒の詩葉に声をかけられる。
『ゲーム中に気がついたら、自分の部屋に年の離れたおねーさんが居る』……と言えばその通りなのだが。
詩葉のスポーティーで男前な空気感がそれに一切気づかせない。なんだったら彼の実の兄借夏の方が女に見えるまである。
千里は兄譲りの中性的な顔を揺らし、詩葉に向き直る。
「おかげさまで頑張れてるっす。だいぶ慣れてきた。四対一でもなんとかなりそうっすよ」
「そうか……なら『次』は攻略できそうだな」
「そうっすね」
プー…………と終了のブザーが鳴った。
ーーーーそれは、執念を試す戦い。
『試練開始から合計12時間が経過した!! 現時刻を以て《『百人切り』の本試練》を打ち切るものとする! 残念だが試練は『失敗』だ!!』
剛列なる声が響く。
瑠璃色の巨影が『今日も』彼らを見下ろしていた。
「……ちっくしょ」
「100人中80人。初回でそれだけやれれば大したもんだ」
「そりゃどーも」
悔しげに背を投げ出す千里に、ぽんと詩葉が手を置く。
彼らの『勝利』はまだ足りなかった。
偉大なりき7つの試練。
待ち受けるそれらは、徹底的に挑戦者を打ちのめすのだ。
ーーーーそれは、極上を追求するタンゴ。
「ウイニングラン!! 私自身のカード《極上の乗り手ユリカ》で疾走!!」
「マ”ッ!?」
ユリカ残り走行距離……10→0=GOAL!!
「残念だったわね☆ アナタの実力で、アタシに挑むのは早かったようね!」
《極上の乗り手ユリカ》✝
ギア4 ヘル・ディメンション/マシン
POW16000 DEF9000 POW20
◆《デミ・ゲストカード》
◆『自分のセンターがギア4である』このマシンをセンターに重ねる事ができる。
◆『バトル開始時/センター一枚を横に』バトル終了まで対象のステータスを追加で得る。
◆《デットヒートXX》(XXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXX)
「ほらほらしもべ達!! そんなんじゃちっとも楽しめないわよ!!」
「あーその、自分一応さっき勝ちましたが……」
「なにー? か・ち・ま・し・たぁ!?」
ズイッツ!!
「ヒッ!?」
「最新のメタメタ厨戦法でハメ倒しただけでしょうに。自分勝手な子は嫌いよ! 《娯楽恐悦の試練》は『失敗』!!」
「そ、そんな!?」
「それと、さっきのコンボのパーツちゃんは評判につき修正が決まっているので次から使わないよーに」
「ぎゃふん!!!」
幾十人目かの戦士が崩れ落ちる。
桃色の短髪姫は今日も傍若無人に振る舞う。
ーーーーそれは、器を試す護りの試練。
「三体の連携で《ヒロイン・スタチュー》を攻撃」
「あっ!?」
WIN 三体連携POW32000vs30000DEFヒロイン LOSE
「……お前は守るべき姫を守りきれなかった。《守護の試練》は『失敗』だな」
《ヒロイン・スタチュー》✝
ギア1 サイエンス・ケミストリー/マシン
POW 0 DEF30000 RUN0
◆《守護の試練》はこのカードを設置した状態で開始する。このマシンがフィールドを離れた場合、試練は失敗となる。
「チクショウ……もっと強くなんねえと」
「強さより、心を試す試練だと思っているのだがな」
科学の少年は、今日も冷静冷徹に裁きを下す。
それは、業火潜る荒行。
「受けてみよ!! 《秘剣!! 大蛇狩酒呑炎斬!!》」
「!?」
《秘剣・大蛇狩酒呑炎斬》✝
ギア5 サムライ・スピリット/チューン
◆相手マシン一枚を破壊する。自分の残り走行距離がゲーム開始時の三分の一以下だった場合、自分はレースに勝利する。
ホムラ残り走行距離……65→GOAL!!
「そんな……最初に100キロもハンデもらってたのに!!」
「ふむ。修行が足りんようじゃな。《焔の試練》は『失敗』じゃ」
あやかしの幼女姫……を騙るナニモノカは、今日も揺るがない。
ーーーーそれは、電子の海を観測する追走劇。
『居たか?』
『いや、依然足取りは掴めてない』
『あの女は一体どこに……』
『おい! 時計塔でヤツの目撃情報があったぞ!!』
『『『何!?』』』
『よし今すぐそっちに向かう。無茶するんじゃあねぇぞ!!』
Buaaaaaaaa……kikitt!!
「……なんだ? 誰も居ないぞ!?」
「おい、あそこ見ろ!! 一人やられてる!」
gusyaaaaaaaa…………
「おい大丈夫か……いや待て、まさかお前『抜け駆け』したか!?」
「!?」
「ああ……前に『囲んだ』時は見つけたのにハブられたから……先に挑むくらい良いかなって……」
「…………色々とすまん」
「良かったらDMグループ組むか? 裏切りが出ないようによ」
「助かる」
「……頑張ってますけど……本日の《探査の試練》は『失敗』ですね」
死骨愛でるシャーマンは、今日も地を這う群れを見下ろしていた。
いくつもの試練が道を阻む。
未来へ続く道は、未だ堅く閉ざされたままだ。
状況を回想し、詩葉が再び口を開く。
「知っているか。チエカの上位フリークエストは今も健在だ」
「?」
「このゲームの今の最終目標は、七枚の必殺技カードを集めてイベントを起動し、最強の姿のチエカを倒し報酬を得ること。
だが奴のカード《必勝! ウイニングチェッカー!!》だけは二枚要る。一枚は『招待状』とやらに変換する必要があるからな」
「いや……でもアレは確か最初のカードプールで最強のデッキなんじゃ」
「もう最強じゃない。次のカードパックが出たからだ」
「え?」
ーーーーそれは、財布砕く衝撃…………?
「さあさ皆様よってらっしゃい見てらっしゃい!! 新パック《ノグァ・インパクト》発売ですよ〜!!」
「初回購入分には、明日最終回を迎える『チエカとマアラの初心者講座』の閲覧チケットもついてます! よろしければぜひ!!」
「悔しい……でも買っちゃう!!」
「俺も俺も!!」
「私にも五パック!!」
「拙者はボックス買いにござる!!」
「ハイナー♪」
旗担ぐ使者と若葉の少年。
彼らは今日も……あざとかった。
「マジすか」
「ああ。既に第三弾の発売も予告されている。どんどん多々買えって事なんだろう」
「深いっすね、闇」
戦々恐々とする二人。
その上で、詩葉は提案する。
「だからこそ、今後の攻略にはより強固な『拠点』が要るとオレは思うな」
「拠点?」
「ああ。この家の通信環境も中々だが、誰よりも先に攻略し『裏側』の問題を解決するにはプロ級の環境が要るはずだ。何より……」
ムンニュ。
「目、目の下に指!? 何すんすか詩葉さん!?」
「鏡見ろって話だ。ほれほれクマがくっきりだ!!」
「あ」
言われて見やると、確かに黒黒としたクマが浮かんでいた。
「今お前に必要なのは『癒やし』だと思うぞ。あそこならそれがラクに手に入るはずだ」
「あそこ?」
「オレの行きつけの店だ」
「マジっすか!」
詩葉の目は、自信に満ちていた。
千里の目も輝く。
「ひょっとしてス○バとかっすか? それとも無印なんたらの上にあるっていうネットスペースとか? タピる? タピっちゃいます? すっげーよヤベェよ大人の人が行く店とか初めてっすよ!」
「それはガキでも行く所だろう。さすがに小学生は見んが」
「え? そっすか?」
素で疑問符を浮かべる千里を尻目に。
冷や汗一つ、詩葉は思考しながら踵を返す。
「準備がある。一日待て」
「?」
「ドレスコードだ。然るべき場所に行くには然るべき格好をしなくっちゃーな?」
語る詩葉の顔は、ほんのちょっぴり悪い顔をしていた。
さて、こちらは薄赤い六畳間。
君主の領域は怪しげな雰囲気で満たされていた。
大いなる企みは、小さな小さな本拠地から発信されていた。
奇っ怪なオブジェクトが無数に並び、ヴラドの串庭のようになった室内。
そこで会話を繰り広げるのは、小さな君主と電子の姫君だった。
幼さなき姫が切り出す。
「さてと、これからの策を話し合いましょうか」
『オーライ☆ どんと来いです♪』
部下にも秘密の真なる聖域。
君主達の会談が、始まる。
次回! 『君主会談。危うき道との合流!!』をお楽しみに!!




