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カードレース・スタンピード!!  作者: 能登川メイ
Episode.3 開戦の狼煙。シルヴァーズvsマアラ!
22/190

本当の試練、始まり!

チエカのカード紹介コーナー! 今回紹介しますのはギア4マシン《サイバー・ライド・ZEROスフィア》!




《サイバー・ライド・ZERO・スフィア》

ギア4マシン ラバーズサイバー POW11000 DEF14000 RUN20

【手札を二枚捨てる】相手マシン一枚の攻守を0にし「【常時/潜伏】このマシンの上のマシン全ての攻守を0にする」を与える。

【自分ターン開始時】二ターン前までに自分が捨てた手札の枚数分、ドローする。




 クラスは現環境ことラバーズ・サイバー!! 走力20、パワー11000、ディフェンス14000の防御型マシン!

手札を二枚捨てて、現在のセンターと次に置かれるセンターのステータスをゼロにする防御的効果を持っています!

しかも自分ターン開始まで維持できれば使った手札は戻ってくる! とってもずる賢い、でもつよーい一枚です!


いやーあこんだけ強いんですからきっと大活躍するんでしょうね! さあ本編をダッシュで確認しに行きましょう!!

キィ……と。


桃色の領域にたどり着くなり、シルヴァ達は不穏な空気を感じ取る。


遠くに見える会場がやけに騒がしい。


「なんだ? 初心者クエストの割に妙に盛り上がってるな」


「確かに妙だ。嫌な予感がする……急ぐぞ」


電子の熱気。


シュガー・マウンテンに戻ってきたシルヴァーズを出迎えたのは、異様なほどの盛り上がりだった。


明らかに初心者クエストのそれではない。


「あーの一つ確認するっすけど、最初の……若葉の試練ってなんなんす?」


「なーに一番簡単だ。ただ勝つだけだからな」


「はっへーわっかりやすーい。……んでだ。どんくらいつえーんすかそのボス」


「生え抜きって感じだな。鬼のような強さでは無いはずだが……」


不穏な会話が、会場に近づくにつれ深刻味を増す。




「はぁーン!! 愛してるわヨン、マアラきゅーん♡」


「ちょっと良いか?」


「あ? 今観戦中なんだけどォ?」


会場。ファイアの問に答えたのは、レディース姿のモヒカンだ。アバターのゴツさや声からして確実にオカマユーザーだが。


「この盛り上がりはなんだ? いつもはマアラのファンがそこそこ居るくらいの筈だが」


夜桜を思わせる空の下。野球ドームくらいはある会場いっぱいが生の熱気に包まれていた。


盛り上げるためのモブの反応とは違う……血の通った熱気。


オカマモヒカンは興奮し、身をよじりながら答える。


「アッフーン! 今日のマアラきゅんは一味違うのヨン!」


「一味って……どれくらいっすか!?」


「気持ち三倍くらい♡ なにせ今日は15戦こなして一度も負けてないんだもの♡♡ アーン! アタシかっこカワイさに溶かされちゃうン!!」


「……サンクス。教えてくれてありがとっす」


言って、ハートは会場の中央……そのモニターに向き直る。


ファイアが説明する。


「あのモニターを注視すれば、アバター体を置いて意識を飛ばせる仕組みだ」


「?」


「霊体だけで、彼らと並走する観客席にワープするようなものだ。来るか?」


「…………」


「別に無理強いはしない。お前の出番までは間がある……試合を見たが最後、仮眠もままならなくなるかもしれんしな」


ハートは会場に置かれた時計と自分の順番を見やる。


その上で。


「……いや、行きますよ。ここで見ておかないと、俺は何かを後悔する気がする」


「いい返事だ」


シルヴァファイアは相棒の覚悟の強さを讃えた。


モニターを見やる。


そして。


「ーーーー行くぞッ!!」


「オッス!!」


二人は飛び込んだ。




道が二つあったとする。


片方を選べば、もう片方を選ばなかったことを後悔するかもしれない。


だが、だからといってもう片方が正解とは限らない。


後悔がどちらにも待ち受けている可能性を。




少年は思い知る。




加速する戦場を見やると。


そこでは。




たん………………と。


自らのマシンの弾丸に射抜かれる衣音マアラの姿があった。




「!?!?!?!?!?!?!?あああああああああああああああああ!!」


「やっぱり、いい気分じゃあありませんね……自分を撃ち抜くっていうのは……」


むくりと車体の上で体を起こす。


それを撃ったのは…………生き写しのゲスト。


《魔弾の撃ち手マアラ》。


(な…………なんだあの光景はぁっ!? ここはシュガーマウンテンだろ、アイツはここのボスだろーーーー!?)


「《魔弾の撃ち手マアラ》の効果……行動が終わったセンターを破壊しセンターに移る……そしてそのステータスは……!!」


魔弾の撃ち手マアラ

POW   0/DEF   0/走力  0


「元から全ステータスゼロ……これじゃあ俺ちゃんの《ZEROスフィア》の効果が腐っちまう!」


「環境に添えば勝てる……それほど甘くはありませんよ? このゲームは」


嘆く全身赤タイツアバターに向けてマアラが突きつける。


マアラの姿が、治りゆくとともに変化する。


白く柔らかな衣の上から、黒く研ぎ澄まされた外套を羽織る。


それは《魔術師(ウィザード)》の有り様だ。


「さあウイニングランです!! 僕こと魔弾の撃ち手マアラで走行!」


「ま、待てよ走力ゼロじゃあ……」


マアラ残り走行距離……50→20


「!?」


「僕の能力ですよ。魔弾の撃ち手マアラが自身の効果を使用したターン、行動する度に30キロ移動する!!」


差が消える。


両者が残り20キロ地点で並ぶ。


「アァン! ぶっ飛んでやがるな大体が! だがそこまでよぉ! 後20キロをどう走る!!」


「それはもちろん♪」


直後、マアラの銃口が、滑り走るクッキー・ソルジャーに向く。


撃ち砕く。


「こうやって回復するんですよ♪」


「はっは……ナルホドネ」


マアラはクッキーの犠牲のもと復活した。


暴食の王。


食物連鎖の頂点。魔術師の姿をした獣は静かに無情を振り下ろす。



「これぞ本当のウイニングラン。魔弾の撃ち手マアラで疾走!!」


「ハハッハ!! チックショーーーー!!」


そしてマアラは挑戦者を突き放し…………



マアラ残り走行距離……20→0=GOAL



「…………」


「…………」


シルヴァーズは、それをあ然と見つめていた。


「…………勝てんの、アレ」


「わからん。なんなんだあの化物は。一体奴に何があった!? 」


ファイアの焦りが、ハートに事の深刻さを伝えていた。


「今まであんなじゃあ無かったって事か? カードの効果が上がるわけでもあるまいし!」


「ああ上がりはしない! あたかも前より上がったように見せてるだけだ! それが途方もなくまずいんだろ!!」


「つ……」


あれに勝てるのか。


シルヴァハートは本気で心配になってきた。


そこへ。


通知が届く。



『siruva@heatさん。貴方の疾走まで残り五戦となりました。準備をお願いします。繰り返しますーーーー』



「……準備って、何の準備っすか」


「……覚悟の準備、だろうかなぁ……」


「なるほど……な」


つぶやき一つ。


少年は再び戦場を見やる。


見届けたいのは山々だが……休むなら今だ。


「この光景を、今見れて良かった……。今なら猶予がある。一旦引っ込んで来るっす。

このゲームは一戦約十分未満……20分、仮眠取るくらいの猶予はあるっすよね?」


「ああ。だがトイレや軽食、水分補給等も済ませておけ。決戦の最中にトイレに催したら話にならん」


「了解」


「それとログイン状態は維持しておけ。このゲームはまだ若い。ログインミスで戦い損ねる恐れがある」


「オッス!」


言って、アバターの霊体が消える。


元の会場に投げ出されたのだろう。


「……さて、と。悪いがお前の体は好きに使わせてもらうぞ」


言って、ほんの少し席を立つ。


広い会場を探すまでもない。()()()()()()()()()


「アルハ。一つ頼みがあるんだが」


せっかくなので、一人の女に世話をさせてみる事にした。



ーーーーDyurunndelyurururururu……



幼なじみの膝の上で目覚めるという貴重な経験をしたシルヴァハートは、耳まで真っ赤になりながら戦場に来ていた。


(なんだなんだあれぇええええ!! なんか雰囲気落ち着いて余裕出てるし俺を可愛いにござるとか言ってのけやがった!!

一回叫んだからだ!! 一回叫んで迷いが吹っ切れたから余裕出たんだ!)


なんか勝手になんとかなりそうな状況からひとまず目をそらし、まずは目の前の相手に集中する。


魔弾の打ち手マアラ。


こと、《シュガー・マウンテン》管理者衣音マアラ。


隣から、ビスケットを組んだ小さな小さな機関車にまたがる彼が話しかけてくる。


「あなたと戦うのははじめましてになりますね。対戦よろしくお願いしますっ!」


弾けるような笑顔。


だからこそ恐ろしいのは、チエカと同じ種類の恐怖だろうか。


それとも。


「……なあ、走る前に一つ聞いていいか?」


「はい、なんです?」


「アンタのカード……魔弾の撃ち手マアラっていくつも効果があるらしいが……今までアンタは攻撃的な効果は極力使わなかったらしいな?」


「はい。あまりに活用しすぎると難易度が上がり過ぎてしまうもので!」


「そっか…………んで今日どうした?」


「どうしたと思いますか? …………シルヴァーズの片割れさん?」


目がどろりと濁り溶ける。


シルヴァハートは何かを察した。


「……どーにもこれ以上聞くのは野暮っぽいぜ」


「そうですか。であるなら、我らに語らう手段は一つ」


信号が降りる。


紅い光がカウントを開始する。


「では参りましょう! 電子の合言葉の用意を!!」


「オッス! スーーーーー」


深呼吸。


空気を吸い込む。


そして。


信号が青に変わる。



「「ーーーーPassion for sprinting!!」」

次回「スイート・トラップ! その1」をお楽しみに!

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