表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
カードレース・スタンピード!!  作者: 能登川メイ
Episode.3 開戦の狼煙。シルヴァーズvsマアラ!
20/190

見据えるはうら甘き尖兵! 同士達との特訓へ!

チエカのカード紹介コーナー! 今回紹介しますのはギア4マシン《大魔女愛機 キルケー・ピグレット》!

所属クラスはマジック・サークリットで走力20。パワー14000ディフェンス11000はワタシと同値ですね♪ 使ったチューンをセンター下に吸収する効果の他に、相手センターにチューンが重なっていた場合はコントロールを奪う効果も!


クラスが違えば戦術も変わる! 気になる新顔さんの活躍はーっ、本編にGo!!

「店員さん、《アーキタイプ・フレーム》二パックたのんます!」


「ハイハーイ、二パックですね♪」


スタンピード……正式名称《カードレース_スタンピード》でのパック購入は独特だ。


ゲーム内の街を歩き、またはホワイト・エッグで走り回り、店まで出向き自らの声で注文するのだ。


広大な街に比例してショップの数も膨大。ショップごとに違う単品売りがあったりするし、同じカードでも違う値段だったりするが……それを気にできるほどシルヴァハートこと千里はベテランではない。


それはそれとして。


「いやー、毎日来てくれるもんだから嬉しいったらないですよええ!」


店員はチエカ。


「ハイハーイ、ヘル・ディメンションセール中ですよー!」


電子のビラを配るのもチエカ。


『本日午後7時からは初心者必須のクエスト『若葉の試練』を開催します! まだクリアしてない方は予約にGo!』


気球のグラフィック表面に映るのもチエカ。


「ハイハイどーぞどーぞ。本日は心が安らぐハーブティーを……」


その辺の喫茶店で飲み物を出すのもチエカ。


単体では非の打ち所がない美少女でも、大軍となってしまえばある種の恐怖を感じずにいられなかった。


「……冷静に見ると本気でチエカばっかッスね」


「だろ? わかったらとっととヘル・ディメンションに行くぞ。気が滅入る」


「はいよっす」


パックを受け取り、シルヴァーズは店を後にする。


「毎度、ありがとうございましたー♪」


見送りの暖かな笑みが、逆に怖かった。




移動をオートパイロットに任せ、シハとセンリのシルヴァーズはパック開封作業に移る。


「……チ。ブタか。課金分の三パックまで全滅と来た。……お前はどうだシルヴァハート」


「俺は……お、レジェンドレア来た!」


「何ィ!?」


「ってんだよヘル・ディメンションの《大悪魔サタン》かよ使わな……待てよシルヴァファイアさん話が」


スッ……ドン! と差し出されたのはデッキ程もあるカードの束。


「言わずもがなだ。そのカードとこのカード全部と交換してくれッ!」


「ちょダース単位で来たし!? んなスゲーのコレ?」


「そらレジェンドレアだからな。ルシファーや……チエカ達に並ぶレベルのド有能と言えばわかりやすいか?」


「ルシファー……それにチエカか!」


昨夜の対戦。空覆う四体の悪魔と化した一枚を思い出す。


そして、圧倒的だったチエカの立ち回りも……


「……もう一枚だけつけてもらっていいっすか?」


「良いだろう。何を所望だ?」


「その……《リーフ・エンブレム》を」


「ほう。レジェンドに次ぐゴールドレアをご所望とは良き図太さだ」


「そらま。必要だと思ったんで」


お互いに異論は無い。


トレードは即時決行された。


「どうやら、昨日出しておいた宿題はサボらなかったようだな」


「そりゃもう。自分の無力と無知が身に染みたもんで」


シルヴァハートは冷えた目で答える。




それは昨日の出来事。


ヘル・ディメンションでの練習レースでの事だ。


「……っダァ!! また負けたし!?」


「これで五連敗……そろそろ原因に気がついたんじゃあないか?」


「ああ……コンボが決まらないんだ」


「正解」


雲空の下、シルヴァファイアがハートを撫でる。


「お前のテストレースでのヤバイ立ち回りは、不足していたコンボパーツ《当然のマニュアライズ改》が供給されたからこそできた事だ。

だが残念ながらアレの実装は厳しいだろう……強すぎてテストを通過しないからだ」


「で、ですよねー……」


「だが諦めるのはまだ早いぞ?」


シルヴァは楽しげに語る。


「アレの下位にあたる《当然のマニュアライズ》なら既に実装済みだ。あれを上手く使えば同じことはできる」


「マジっすか!?」


「ああ。今から言う事を良く聞いておけ。聞くだけでいい。あとは脳が勝手に処理する。それと平行して」


シルヴァはあるカードリストを広げた。妙に強そうなのばかり並ぶが……。


「これは?」


「軸札……パワーカードのリストだ。グレイトフル・トレインだけでは辛いだろう。せめてもう一枚、柱となるカードを選んでおく事だ」




「……リーフ・エンブレムか。良いカードを選んだな」


「ええ。使えるんじゃないかと思ってはいたんすけど……これで四枚揃ったんすよ。デッキに組み込む準備が整ったってわけっす」


「もう一つの宿題は」


「もち、バッチリっすよ! 一晩寝て思い返すだけですらすらと!」


「よろしい」


と、道の先。


渦を巻くゲートのようなものが見えた。


ヘル・ディメンションとこちらを繋ぐゲートだ。


「であれば、後は試すのみだ!」


二人はゲートを通過する。


そして。




「学校が終わって則ログインとは、とんだ廃人よね彼らも」


「趣向が趣向。それも仕方ないだろ? なにせあいつらは」


「ハイそこまで」


「おっと」


語るのは、センリの友人のラフマとボウラだ。


最近アルハとセンリが学校終わりにすぐ一緒に帰る為に、残る二人で共に帰る訳だが。


ボウラの悪い癖が出る。


「なんか……このまま会わなくなったりしないよな? 怖くね? メチャ怖くね!?」


「相変わらずのビビリくんよねあなた。ま、こんなの風邪みたいなもんでしょ。私はこのままでもいいけど」


「やーだーみんな一緒じゃないと寂しい!」


「はいはい」


かの日、アルハが想いを語ったのを彼らは見届けていた。


入る余地はないと、確かに思った。


「やっぱり強かったわね、アルハ」


「だな。そらそーよな。ゲームの中でどれだけ離れてても、()()()()()()()()()()()センリの話に知らんぷりを貫いたんだ。あの神経の太さはバケモンだよ」


「ふふっ、あなたは素で気づかなかったようだけど?」


「う、うっさいな!?」


なんて会話。


二人はどちらともなく天を仰ぐ。


「これからどうなるんだろうな。アイツら」


「さあね。ただ……今はただ、生暖かい目で見守るだけよ。でしょう?」


「……そうだなぁ」


当たり前の会話が、日常の通学路に流れた。





目の前には、モヒカン頭の世紀末集団。


ギャハハと笑いながら黒の荒野に集う彼らを見てハートが問う。


「えーと一応聞くな。ナニアレ」


「見たまんまだ。アイツらの頭はヒャッハーしてるのさ」


シルヴァファイアも苦笑していたが……けしてバカにはしなかった。


「だが、ありがたくも愛おしい存在だ。あいつらは今走ることしか考えていない。云わば究極の『フリーお願いします』があの姿だ。

カカシ相手じゃ気づけないアレコレに気づかせてくれる。それでいてその過程を喜びとする……俺達カードゲーマーの成分を濃縮したようなヤツラなんだよ」


「……へぇ」


確かにあれほどわかりやすい好戦的(アクティブ)アピールも無い。


遠慮はいらない。


気負いも要らない。


勝っても負けても清々しく有れそうだ。


「まずは100戦、走る事だ。その中でデッキを調整し、不要なパーツを取り除いて行こう」


「オッス!!」


言って、シルヴァハートは一人のモヒカンの前に立つ。


「ちっと100キロ。ひとっ走り付き合ってくれます?」


「控えめだな。1000キロでどうだ?」


「すぐだな」


そうして戦いは始まった。





曇天の元声は響く。


「ギア3チューン、《リーフ・エンブレム》! このカードをセンターの下に重ねる!!」


「もしか……そのカードは!?」


「コイツの上が効果の無いマシンだった場合、敷き札二枚をタップする事で行動後に一度回復できる!」


「つまりバニラの二回行動化ってワケダ……だがそいつはステアリング! そいつを入れて決め札を突っ込む余裕はあるのか?」


「心配には及ばねーすよ」


センターに黒塗りの高級車が重ねられる。


「ギアアップ! 《ブラック・グリズリー》! コイツの二回行動でウイニングランだ!!」


「のわあああああああ! なるほどおおおお!!」


ハート残り走行距離……40→0=GOAL


「……っつはあ!! ちくしょう! 負けた! ヒャハハハ!」


「ヒューすっげー、負けたのに全力で笑い飛ばしてやがる……!


「心配するな、すぐ慣れる」


ハートの中にも、彼らへの尊敬の念が育ちつつあった。


状況は彼らを待たない。


「次は俺とだぜ!」


早速次を望む声が上がる。


「いや俺と」「馬鹿オレだって!」「アタイと戦いな!」「私も!」



ハート戦績……WIN10□□□□□□□□□■2LOSE



快進撃を嬉しむハートと対象的に、そろそろと顔が険しくなるのはファイアだ。


「じゅんちょーじゅんちょー! このまま行けばボス戦もなんとかなるんじゃあないか?」


「はたしてそうかな?」


「へ?」


不穏な呟きを補完するように、声が響く。


「覚えた」「慣らしたぞ」「そーゆーことね完全に理解した」「その剣、覚えた……」「だいたいわかった」


「え? え?」


言葉の意味はすぐに染みる。



「キルケー・ピグレットの効果! 相手センターにチューンが置かれているなら、センターのマシン一枚を剥がしてコントロールを得る!」


「んだとぉ!?」


「これで邪魔は消えた……ウイニングラン! 大魔女愛機キルケー・ピグレットで疾走ッツ!!」


「何っつ!?」


モヒカン残り走行距離……20→0=GOAL


ハート戦績……WIN15□□□■■■■■■■30Lose


「はっはっは! 愛してるぜ大魔女サマ! 俺達マジック・サークリットの勝利だ!!」


「なんだ? なんか負けが込み始めたぞ!?」


「そりゃあな。誰だって、不意を打たれちゃそりゃ弱い。だが慣れ始めれば相応の対応をするしメタも張られる」


「メタって、そんなのどーしようもなくないっすか!?」


「そこをどうにかするのさ」


シルヴァはゴーサインを出す。


「そろそろ教えたコンボを使ってみろ。今日のボス戦までに仕上げるぞ!」


「オッス!」


言って、少年の戦術に変化が起こる。



「ば、ばうっ……!?」「あんまりだああああ!?」「ごっバァ!!」「できる……」「オマイガーーーーッ!」


ハート戦績……WIN35□□□□□■■■■■35LOSE


「お前……そのコンボは!」


「おーよ。テストカードが教えてくれたコンボを、そこなシルヴァファイアさんが仕上げてくれたのよ! これで俺は…………」


戦機が集う。


一斉行動が始まる。


「……超! 強くなる!!」


ハート残り走行距離……50→0=GOAL


ハート戦績……WIN60□□□□□□■■■■40LOSE


「くっはぁ!! 楽し……めたぜ…………」


いうだけ言って、モヒカンたちは倒れた。


……たぶん、仮眠か食事のためにログインままに落ちたのだろう。


「勝率六割。一夜漬けでここまで仕上がれば上々だろう」


「アンタのおかげっすよシルヴァファイア! このデッキ超使いやすいですもん! 超爆速で回る回る!!」


「楽しめてもらって何よりだ。お前こそ、良くデッキを使いこなしていたぞ」


「サンクっす!!」


信頼関係。


短い期間で、彼らの間には鉄の結束が生まれていた。


そして、導くようにシルヴァファイアは言う。


「さて…………次は試練の時間だ」


シルヴァはもと来た道を睨む。


ぼちぼち、試練は始まっている頃の筈だ。




「ウェ……エエエエイ……? ナニコレ? なんでこんな勝てないのよぉ………?」


「インチキではありませんよ? ただの実力です♡」


次の試練。


幼くも獰猛な……白い獅子が、待ち構えている。

攻略ガチ勢シルヴァーズととマアラくんのレースが遂に始まる!としかしその前に語るべき事を語らなくては! 次回「チエカとマアラの初心者講座〜クラス編・急〜」をお楽しみに!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ