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カードレース・スタンピード!!  作者: 能登川メイ
Episode.1 疾走するカードゲームへようこそ!
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ニューゲームを始めよう!

ハイハーイ改めて始めまして、御旗チエカです! 画面の前の方は気分を明るくして現実から離れて読み込んで下さいね♪ このエピソードでは、プロローグに引き続きワタシが大・活・躍! いたいけな少年にアレコレ教え込んじゃいます! それでは早速ぅーーーー、エピソード、ドーン!!


『カードショップアーケディア 都合により閉店させていただきます 今までのご愛顧ありがとうございました』


からっ風吹く秋空の下、少年はその絶望と対面した!


(近所のカード屋が、潰れた!!)


時は2019年。大御所達は廃れ、有名作品を片っ端からカード化する文化もとうに廃れた!


となればその販売元であるカードショップが打撃を受けるのは当たり前の流れではあったのだが。


(もうカードバトルできねぇだと…!? 冗談じゃねぇよ俺の数少ない楽しみなのに!!)


彼こと先駆センリ十歳には耐え難い悲しみであった!


彼にとっては知らない大人と行うカードバトルは貴重な楽しみだったのだ。


とはいえ贅沢も言ってはいられない。


最早近所にカードバトルができる場所は無い。となれば後はやむ無し。


(バーチャルカードゲーム…カードゲームのゲームをやるしかねぇ!! こうなりゃなんでもやってやる!!)


センリは駆け出した。


彼はスマートフォンを持ってはいたが、通信契約を結んでないため家に帰りWi-Fiを繋げねばネットは使えなかったのだ。


だが、彼が新たな絶望を知るのはそう遠い未来の話では無かった……






〜一ヶ月後〜






その日は愛する弟を心配する声と共に始まった。


彼の部屋に、心配そうな声が響く。


「センリーそろそろ起きないとお兄ちゃんおこだぞ〜」


「………………………ハヘ」


「え?」


ガ    ダ    ン


「環境がアレ過ぎるよぉおおおおお!」


「朝っぱらの第一声がそれかッツ⁉」


兄を震え上がらせたのは、彼の小さな体全てから吹き出す絶望のオーラだった。


「なんかどのゲームも先行取ったら勝ちとかワンキルとかそんなんばっかなんだよぉおおお!!」


「知るかんなもん! 大体前やってたのも大概ワンキルだったろ大人しくそれのアプリ版やれよ!」


「前のはなんやかんや対策あったし同じルールでバトれるアプリ無いんだよぉ! 第一……」


「だ、第一?」


「相手の顔も声も聞けないからよぉ…悲しくなってくんだよ…」


「…………ハァ」


心の底から落ち込むセンリ。


兄は弟を見捨てられない。


彼は弟のためならなんだってやる男だった。


「……だったら向き合うのはスマホじゃなくてパソコンだ」


「はへ?」


「近々アプリ版もリリースされる予定ではあるが…ブラウザ版はスデにサービスが開始されている。


名前はスタンピード。始まったばかりのゲームだから必勝法も構築されてないし…


何よりボイスチャット機能がある。少しはお前の需要に合うと…」


そこで兄は気が付いた。弟の目がクエーサーを詰め込んだが如く輝いているという事に!


「アニキ大好きだぜぇ! じゃあ早速登録して…」


「まずは学校行けぇえええええええええええええ!!」


その咆哮には、かの熱く闘う者達に迫る熱量が在った。









「マスター・フォーミュラ。ギア5。パワー・ディフェンド共に15000。走力……30」


その頃、電子の世界に一人のカードバトラーが佇んでいた。

茶髪のツインテール、やや幼くも色香をはらんだ肢体を包むのはなんとバニーだ。



別にアバターのキャラとして目立つ恰好でも無かったけども、顔認証が反映された表情がヤバかった。


それは恍惚。


今にも溶けそうな、近寄れば巻き添えで溶かされそうな危険な表情だった。


「…たまらないわぁ。どうしてこんなにも早く走れるのかしら。

それに強くて…んふ、んふふふふふ…あははははは……」


極彩色の景色の中、人々は確かに彼女を避けていた。


その存在は、変人が来やすいらしいスタンピードの中でも異質。


故に、サービス開始後程なくして警戒文のテンプレにこんな言葉が追加された。


ーーーーYagami123には気をつけろ。










「センリー、放課後サッカーとかやんね?」


「ワッリィ今日だけは勘弁!」


「え"っ昨日まで普通にやってたのに⁉」


「ヂュッフッフセンリ君。さては何か良いゲームを見つけたでゴザルな?」


「おーよアニキの紹介だ! ハマったら後でお前らにも紹介すんぜ!」


「ほーん? なら今日のメシの後で《ライドボウル》に来いよ! 話聞くぜ?」


「ああ、あのゲームか了解! じゃあそんときこそサッカーしようぜ!」


「「「俺達車な!!」」」



一日などすぐに過ぎる。


仲睦まじく話す級友に別れを告げ、駆け足で帰宅する。


そうして迎えた登録の時。


長らく無用の長物と化していたウインドウに鞭を打ち、必要な情報を打ち込む。


「このゲームはカメラで顔認証をする。バトルするアバターと連動させるためにな」


「ああ、確かバーチャルNtubaとかがやってるヤツ?」


「そうだ。これにボイスチャットを合わせる事で、対面で戦っているかのような興奮を味わえる……そうだ」


「やっりーこれならうちでバトルし放題じゃん!」


「…たまには外で遊べよ?」


「わかってるわかってる♪ んじゃ楽しんで来るぜ!」


(…………絶対行かないやつだわこれ)


「いざ! カードゲームの世界へ‼」


少年は電子へ飛び込む。


それは遥かなる旅の始まり。










「ハイハーイ! 長ったらしいストーリーの前に颯爽登場! スタンピード専属バーチャルAiNtubaの御旗チエカでーっす!!」


「スッゲー出てきたぞ! ひょっとして本人が対応してんの⁉」


「もっちろん! このスタンピード内に数万体居るチエカそれぞれが本人!

たまにバグっちゃう娘も居ますが、皆このゲームを盛り上げるために頑張っていますよーっ!」


「…お、おう」


流石にそれぞれに魂が居るわけも無いかと思い直し、改めて目の前の金髪ロングのレースクイーン…チエカに向き直る。


白一色の世界の中、黒を基調としたその姿は、まるで生きているかのように細やかに動く。


先程の問答にも簡単なAiで答えたのだろうか。そう考えれば、彼女一人一人が本人という理屈も頷ける。


これが、これから飛び込む…いやもう飛び込んでいる世界。


「…そんなにまじまじ見つめられると照れちゃいますよぉ?」


「あ、ごめ……」


「ノープロブレム! よくある事ですので! ……ではチュートリアルの方始めさせて貰いますね?」


「オ、オッス!」


そうして、白一色の世界でのチュートリアルが始まった。


「まずこのゲーム、スタンピードはライフポイントの削り合いではありません!」


「え、そうなの?」


「はい! 手持ちの《マシン》を操り、相手より先に100キロメートル走った方の勝ち! 簡単でしょう?」


「そらそれだけ聞けば簡単っぽいけど…マシンって?」


「これです!」


白の世界に、二枚のカードが浮かぶ。


それぞれに対応したグラフィックも。


それはバイクと炎だ。


「世に言うモンスターやクリーチャーに該当するのがマシンです! これを乗り換えながらゴールを目指します!」


「乗り換え?」


「それについては後ほどやるとして…もう一方は《チューン》。こっちは呪文や魔法に該当するカードですね。これでレースをサポートします!

マシンを強化したり、相手を妨害したりします! それっ!」


「うぉっ⁉」


炎がセンリめがけて飛んでくる。


収まった後アバターを確認すると、きれいな黒焼きになっていた。


「うっげひでぇ⁉」


「ゴメンナサーイ☆ …まぁ、後の細かいルールは戦いながら覚えるって事で」


「戦う? 誰と?」


「決まってるじゃあないですかぁ」


焦げを払いながら問うと、チエカはもったいぶるようにしながら答えた。


「ワ・タ・シ・ト、ですよ♪」


瞬間。


笑顔に影が乗った。


「ッッツ⁉」


「素敵な世界へ一名サマゴアンナーイ‼」


ガゴン! と白い空間が裂けた。


それはピンク主体のお菓子の世界。


ビスケットの並木にスフレの山、空に輝くは飴玉の太陽。


芝生は抹茶の粉だろうか。進むべき道は黒々としたクッキーで舗装されていた。


「これが《レース》の舞台! チエカのお気に入り《シュガー・マウンテン》でーっす!」


「すげぇ…いやすっげぇええええけどなんか意外!」


「結構こんなノリなんですよー? まぁ戦っていけば好きなステージを張る権利も手に入りますので! そのためにもまずは…」


「アンタに勝つべし、ってか?」


「イエース!」


じりっと緊張が流れる。


アバターが降り立ち、クッキーのコースを踏み締める。


「ではではチュートリアルを再開します。今回は互いにほぼ同じデッキ、互いの最初のターンは行動が固定されてますので、そこから先はアナタ自身の実力でワタシに勝利してください!」


「戦利品とかペナルティは?」


「ペナルティはナッシング! 勝てばレアカードと、先行の場合このステージを指定する権利をご進呈♪」


「レアカード、か。なら勝ちに行かなくっちゃあな‼」


と、二台の白いバイクが出現する。


同時に画面右側に、プレイシートと思しき表示が出る。


「これがギア1のマシン、ホワイトエッグです。最初は任意のギア1を場に出してレースを始めます!」


「これにこう、跨がる…と?」


慣れない操作で跨がらせる。


レース番組で見た覚えのある信号が降りてくる。


振動が伝わって来るようだ。


「デッキは40枚! 最初の手札は五枚! 先行はドローも攻撃もできませんのでご了承を!」


「オーライ! んでそれを伝えるってことは、俺が先行ってことだよなぁ!」


「ザッツラィ!」


鼓動が高まる。


新しい体験に心が踊る。


やがて、信号が変わり始める。


「ーーーーそれでは行きますよ。覚えておいてくださいね、この世界の合言葉」


「合言葉?」


「ええ。Passion forーーーー」


そして、信号が赤に変わる。


「ーーーーsprinting!!」


疾走は始まった。


情熱と共に。

いやぁ驚かせちゃいました! 本編をご覧になればわかる通りちょっぴりくろーいワタシですが、そんなワタシにいたいけな少年は勝てるのか⁉


次回「チエカの激烈チュートリアル!!」をこうご期待!!

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― 新着の感想 ―
[良い点] いたいけな少年にあれこれえっちなこと教えるんじゃなかったのか! 嘘つき!チエカちゃん嘘つき!!……え?違うの? それはそうとして、2話目も楽しませて頂きました!✧٩(ˊωˋ*)و✧ 読ん…
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