スタンピードカードMiki《VITAー閉ザサレシ夢幻ノ郷ー》&創造主の困惑、n度目の再始動。
《VITAー閉ザサレシ夢幻ノ卿-》✝
ギア4フィールド ステアリング
【フィールドはマシンゾーンの奥に置く。場に一枚しか存在できず、新しいフィールドが出たら古いフィールドは捨て札にする】
【常時】場の全てのマシンの名前は 《永遠の囚人》としても扱う。
【常時】自分のセンターに置かれたマシンは場を離れず、センター以外のマシンは【進路妨害】を得る。
【自分のマシンが破壊される時】対象のマシンをこのフィールドの下に重ねる。こうしてこのカードの下に四枚目以降のカードを置いたら、このフィールドを破壊する。
STPDーEXで登場予定のフィールドカード。
全てのマシンに共通の名前を与える珍しい能力に加え、自分のセンターを守りつつ取り巻きを進路妨害化できる。ただし自壊用のデメリット能力を持ち、半時限式に破壊される。
■概要
一つ目の効果は、全てのマシンに追加で名前を与える能力。
名前を奪う能力では無いため、相手の名称指定カード等のメタにはなり得ない。主に同名マシンの存在が重要な 《大海の守り手エレン》とのデザイナーズコンボのための能力と言える。
あちらは相手の場に同名カードが二体以上ある限り無限に攻撃できるため、名付けることで無理やり条件を満たそうという算段である。
決まれば相手を選ばず必勝のコンボであり、その爆発力は計り知れない。
その火力を安定させるのが二つ目の能力。センターに離れない耐性を与えた上で、両脇のマシンを進路妨害化する。
これにより重量級フィールドでありながら「同格以上のセンターが居なければ手札に戻される」という弱点を半ば克服しており、ワンショットランの成功率も格段に上がる事となる。
返しのターンを凌ぐには取り巻きに相応のマシンを使う必要があるが、深く考えずとも同格のマシンを並べていけばそれなりの苦労は押し付けられる。
上記二つの効果の代償として、捨て札になるマシンを拘束した上で自壊するデメリットを持つ。
捨て札の利用が困難になる上、身代わりの進路妨害を四回使えば自壊してしまう事になる。
困りもののリスクだが、これが無いと進行不能レベルの事態になりうるので致し方なしと言った所か。
センターはこのカードの効果で離れず、センター以外のマシン枠は二枚なので、基本的には一ターンに二枚しか重ならない。このため普通にゲームを進行するなら二ターンは耐えることが可能。
これら特性を逆手に取り、敢えてセンターに進路妨害持ちを配置することで自壊した際に三枚目の受け札として起動する手もある。
これら特性を合わせると 《エレン》以外では 《フェルドスパーロード》との相性も悪くない。
あちらは取り巻きをばら撒く事で守りを固めるカードだが、本体はあくまで打点の高いファッティにしかなれず、妨害能力も取り巻き自身の性能に依存する。このカードなら不完全体として出たあちらを守りつつ、取り巻きも強化できるだろう。
またあちらを完全体として出すには場に十枚のカードを揃える必要があり、最大で四枚のカードを拘束するこのフィールドは素材役としての適性もある。定番の 《キルハルピュイア》を叩き割る戦術と組み合わせれば相応に手早く頭数を揃えられる。
捨て札利用が困難になるリスクを差し置いても 《大悪魔ルシファー》と組み合わせるメリットは高い。あちらは効果で味方を破壊し増殖するため、すぐさまこのカードで蓋をすればあちらの最大の弱点である攻撃後の隙を埋められる。
ここまでのパワーを誇り、相性の良いカードも少なくはない本カードだが欠点もかなり多い。
フルスペックを発揮するにはこのカードと 《エレン》でステアリング枠を二枚消費する事になり、最後の三枠目はあちらを踏み倒すための土台役が必然的に収まる。
先述の 《フェルドスパー》を用いたとしてもデッキ構築を大幅に制限されてしまい、ほかの汎用カードを投入する隙がほとんど無くなってしまう。
一つ目の効果を無視してこのカード単体で使うのも手ではあるが、噛み合うようで矛盾したような効果構成が難点。
上記一部のカードを除けば数で攻める戦術なら絶対的エースは不要であり、エースのパワーに頼るなら大概は進路妨害持ち。都合よく自壊させられれば良いが、そうできないならこのカードが足を引っ張る危険が高いのだ。
挙句、取り巻きに気を使う場合はそちらも元から進路妨害持ちを使うケースが多いのも実情。
急場でも適当なマシンを置けば最低限の仕事はしてくれるが、追い詰められた状況でギア4フィールドを張る余裕があるかは疑問。そもそもステアリング枠を使って防御「だけ」をするなら最低限ギア踏み倒しで出る 《豪鬼の狩り手ルイズ》を超える必要があり、その方面で張り合うにはこのカードは明らかに力不足。
前述の 《フェルドスパーロード》を使う戦術にしても、特化するなら 《虹採支配巨影ーチエカ・ストロングー》というライバルも居る。あちらは条件の狭さこそあるが場札の増加速度は早く、拘束枚数も多い上単体で大型に化ける素質があり、何よりギア1のスカーレットローズという軽さが強い。
しかし最も重い弱点は、ギア4フィールドであるが故に「大型を出す前に展開できず、除去へのカウンターとして使えない」点にあるだろう。
同じステアリング枠で比較すると、ギア3の 《リーフ・エンブレム》よりは確かにカードパワーが高い。しかしあちらはバニラ限定の追加攻撃効果を抜きにしても装備先の身代わりになる効果が強く、こちらよりギアがひとつ低く、何よりアシストであるため除去に対応して切ればちゃんとエースを守れる。
フィールドであるこちらは自分のターンにしか使えず、対抗するようには使えない。
こちらもギアをひとつ下げればまだ使い勝手は良かったかもしれないが、そうなると今度は一つ目の効果と 《エレン》の組み合わせが強くなりすぎるのが辛い所。
総じて俯瞰すると、色々と「惜しい」カードと言えるだろう。
名前も効果もあまりに後ろ向きな事もあり、今度何かしらの拡張カードや上位版が登場する可能性はあるだろう。
■挙動・テクニック✝
上記にある通り、タイミングよくこのカードを剥がすことで、時が来るまでセンターを守りつつ元来の進路妨害も利用できる。
事前にグリップ系カード等で自分のマシンを破壊して、敷布の枚数を調整しておけばおけば相手の攻勢に合わせられる。
自壊のタイミングは「四枚目以降のカードを」「自身の効果で」「置いた瞬間」だけ。
このため自壊タイミングのたびに破壊を肩代わりする効果を使えば場に残すことも一応可能。とはいえ破壊タイミングは何度でも来るのでそこまで実用的では無い。
またほかのカードの効果で敷布が増える分には特に問題はない。相手の 《コンクリート・チキン・ダイブ》などの敷布送りを喰らってもそのものは自壊のトリガーにはならない。
■余談✝
VITAはラテン語やイタリア語で「命」「生活」などの意味を持つ。
フィールドカードであることや後に続く語句と合わせると、次々とマシンカード(≒命)を格納し閉じ込めるこのカードには適した名前と言えるか。
ただし卿という字は「他者に対して敬意を込めて呼ぶ時に使う」言葉。『閉ザサレシ夢幻ノ卿』と全文合わせて読めば耐性を得るセンターマシンの事を指すと言えなくもないが、よりにもよってフィールドたるこのカードの名前として適切かは疑わしい。そもそも進路妨害を失うだけで、走行も攻撃もできるマシンは閉ざされていると言えるかは微妙。
別個、閉ざされている『何か』が居ると見るのが自然だろうか。
■関連カード
《大海の守り手エレン》
《虹採支配巨影ーチエカ・ストロングー》
「………………………なんじゃこりゃあ……」
ピーカン照りの空の下、鳥文良襖は頭を抱えていた。
知らないカード知らない用語のオンパレード。これほどまでの「なにそれ知らん、怖……」を自分が体感するとは思わなかった。
スタンピードにおける情報集積サイトMikiparodyrの編集は彼女の仕事だ。
だがこんなものは見たことが無い。
痛む頭を抑え、関連するページを辿る。
《大海の守り手エレン》✝
ギア4マシン ステアリング POW12500 DEF12500
【デミゲストカード】【自分の場のステアリングカード一枚を破壊】このマシンを手札からセンターに置き、ターン終了まで【進路妨害】を与える。
【このマシンによる、ターン最初のバトル時】バトル相手の名前を記録する。その後このマシンは、記録したカードと同名のカードが相手の場にある限り何度でも回復できる。
出てきたのは、このフィールドの主にして今回の宿敵。
そもそもこんなところに来ているのは、大雑把に言えば彼女をぶっ倒すためなのだ。
「コイツとコンボするってワケよね……」
勝手に記事が増えること自体は珍しくない。
Mikiparodyrの編集は誰でもできる。人気の上昇に伴いデマ記事も乱発し、不適格なものを削除した事も数知れない。
だがコンボの先が問題だ。
「未発表のエレンとのコンボカードですって……そんなモノ想像できるわけが無い。そんな事ができるのは……まあ本人くらいよねぇ」
なんのために?
腑抜けた頭脳で思考を回す。
「一種の宣戦布告? いやそれだけじゃないか……一貫性があるんだかないんだか」
隠したいのかバラしたいのか分からないが、無視するワケにもいかない。
それこそが狙いか?
(一番ありうるのは……ノイズか)小さな頭を抱えて保つ。(こういう時、無駄に情報を増やされるのが一番困る。木を隠すなら森の中ってね。調べられるとわかってるから。真偽不明の情報バラ巻いて隠れ蓑にしてるんだ)
状況が許せば 「無量〇処気取りかよッ!!!!!」 と叫んでぶん投げていた所だがそうもいかない。
今すぐ動けるのは、おそらく彼女だけなのだ。
なぜなら……
『右右! いや違うそのまま真っ直ぐ! あっ逃げた!』
『逃げたァ!!? どんなスイカ使ってんだオマエら!?』
『否! 彼処に見えるはかぼちゃにござる』
『待て待て待て。割った後どうするつもりだったんだよ? 予定はどうなってんだよ予定は!? まさかこの暑さで煮かぼちゃするつもりじゃ無いだろうな?』
『???』
『え……食べることとか考えてなかったわ』
『マジかよ最悪だぜ……まともに考えてんのがオレだけなんてな』
『あのー詩葉サン、ここゲーム空間なんで食べるか食べないかは人によりと思いますヨ?』
『……!?!?!?』
「ふふっ……いーわね、頭カラッポそーで」
この始末。
今はこれ以上彼らを動かせない。
休むのも仕事のうち。戦闘員たる彼らも無限に動けるのでは無い。自分が今そうなりかけてるように、彼らも脳の使いすぎで頭がパーになっているのだ。
ならばこそ、戦いに行けない自分がやるしかない。
「…………気張るかぁ……」
────────嗚呼、思えば長い長い休暇だった。
遊びほうけた陽気ももうすぐ終わり。
統率者の才能は、一度記憶を絶たれた程度で止まらない。
たっぷりと休んだギアに再び活を入れ、決戦の詰めに入るのだった……!!