スタンピードカードMiki 《殺人姫ジャックリーナ》
《殺人姫ジャックリーナ》✝
ギア3マシン ステアリング POW10500 DEF10500
【このカードを手札から捨てる】相手のギア2以上のマシン一台を破壊する。その後相手は山札から、破壊されたマシンとギア合計が同じになるよう、二枚以上のマシンカードを選んで手札に加えても良い(このときギア0以下のマシンは選べない)
【このカードの破壊時】自分は手札を一枚捨てる。そうできたなら、このカードを破壊する代わりに手札に戻す。
STPDー1で登場したステアリング・マシンカード。
手札から捨てる事でギア2以上のマシンへ除去を放つが、代わりに相手に展開を許す。マシンとして除去されると手札一枚を犠牲に帰還する能力も持つ。
激動の人生を歩んだ一枚であり、その評価は時代によって極端に別れる。
■概要✝
《死骨の愛で手シイカ》と共に、手札から切るフリー除去の開祖となったカード。ギア2以上ならとりあえず場から退かしてしまえるため、以降かなりの期間愛用されることになる。
まず場に出すマシンとしては、除去されても不要な手札と入れ替えで戻せる中型と言ったところ。
ステータスは攻守共に、一万を僅かに超えており安定している。往復三ターン目で、攻め手も無くやる事もない時はコレを置いて殴るだけでも場を繋げられる。
返しのターンにはコレを土台にギア4を出されるかもしれないプレッシャーも残せる上、除去しても捨てたい一枚を捨てられて戻って行くのだからたまったものでは無い。無茶な攻め方を躊躇わせる牽制としては十分だろう。
しかし実際には三ターン目にあまり動けない時点でかなり不味く、セルフハンデスは強制なので場合によってはかなり困る。
後半の効果の存在も相まって、このカードをマシンとして出した時点で手札事故気味なのはバレるだろう。あるいは能動的にコストにして別のカードに変換するなら別だが、そこまでできるならこのカードを立たせたままターンは終えまい。あるいはギア3アシストの発射台にはなるかもしれないが、それにしたって適任は別に居る。
やはりこのカードの真価は、手札から捨てることによる解体能力にあるだろう。
「手札消費一枚ごとに3000火力まで」 「ギアを上げればその分効率が上がる」という同期のシイカやマアラが打ち立てた大まかな基準をぶち破る、単騎による堂々の確定除去。手札一枚でギア1以外のどんな化け物でも除去できる。
凄まじい効果の代わりに相手はギア合計が同じになるよう、複数枚のカードをサーチして手札に加える。性質上同じカードをサーチする事は不可能な上、バトルフェイズに入った後なら場にも出せず死蔵させる事になる。
この効果のミソは「必ず二枚以上サーチしなければならない」「ギア合計が同じでなければサーチは成功しない」という点で、例えばギア3のマシンを破壊した場合相手は「ギア1+ギア2」または「ギア1×3枚」の組み合わせでサーチするしかない。ここでギア1をデッキに採用してなければサーチの失敗が確定して「手札一枚消費以外は無条件&追加コストタダで中型が除去られる」という悪夢のような光景が完成する。この特性から多くのデッキにシナジー皆無のギア1をねじ込ませたのはこのカードが原因である。
最初期の環境でこのカードによる除去を回避する手段は非常に乏しく、耐性があった 《勝利の導き手チエカ》でさえも事前に着地先を潰されてコースに出れないケースがあった。
後に破壊耐性を付与するカードが幾つか出てきたが、そちらと1︰1交換になるなら上等であった。
しかし。荒ぶる環境のうねりは、そんな事が気にならない程の理不尽を叩きつけるのだ。
■環境にて✝
当初はステアリングの枠に余裕があった事もあり四積みされた。
最初期は手札に戻ったカードも即座に使えるルールだった為、あくまでその場凌ぎといった役割だった。しかしギア3のマシンを解体すればサーチ失敗に追い込む目があったこと、よしんばサーチされても半端な打点しか揃わず当時の主流だった中~重量級の防御マシンを突破する事は不可能だったことから防御力は十二分だった。
逆に攻める時はその手の盾役を破壊しガラ空きにできるため、デッキスペースに余裕のあるあらゆる戦法にこのカードが採用された。
天敵の 《勝利の導き手チエカ》は流石に止められないが、それならと前座の殴り手を除去する事でジャストランを防ぐ事もできた。採用デッキの【スカーレットローズ】はギア1を十二分に使いまわせるが、どうせ上手く回れば自前で溢れるほど確保してくるので気にしたものでもなかった。また当時はギア2未満の質が悪く、ギア1が溢れるだけなら大した問題でもなかった。
だが環境がSTPDー2期に移ると状況は一変。
優秀なメタカードや中型ステアリングの登場で枠が狭まったのも辛いが、一番の痛手は 《キルハルピュイア》の参戦。ギア2と軽く、退場時のドローのおかげで除去されても痛くないばかりか自爆特攻すらしてくる始末。半端な打点のせいで相打ちにならないのはむしろ痛く、中型マシンとしてのこのカードの立つ瀬が完全に無かった。
更にこの頃になると、マシン律儀に一枚ずつ積んでいくのではなく一気にギア4を踏み倒す戦術がメインに。ギア4を解体したら当然、被弾側はギア2マシン二体をサーチできる。つまり前述のハルピュイア二体が飛んでくる危険を意味し、守りにこのカードを使う意義はかなり薄れた。
攻めに使おうにも踏み倒すタイプの大型マシンが緩い条件で新たな壁になる場合も多く、にっちもさっちも行かない彼女の採用率は低迷していく。
その後STPDー2後半に入り、大幅なルール変更によりフェイズ分けが敢行。守りに使ってもサーチされた手札が即飛んでくる事は稀になり、相対的に強化された。天敵ハルピュイアも大幅な弱体化ナーフを受け、久しぶりの天下かと思われた。
しかしここで兼ねてよりの天敵チエカが牙を剥く。大量のセンター肥やしと装備型マシンを駆使する【積みチエカ】となって環境に殴り込んだのだ。いくら除去しても足りないどころか、彼女本体をサーチできる 《ホワイト・エッグ》のサーチを許すのはことここに及んでは致命的であり、使えば使うほど道が塞がるという酷すぎる状態に。
そしてハルピュイア一匹が消えたところで「ギア4をいきなり踏み倒される」という根本的な逆風は収まっておらず、初期と違いギア2も粒ぞろいの為に解体の威力は相当に下がってしまっていた。相対的にも、たった三種類しかないステアリングの枠を奪い合うには力不足が否めなかった。
最悪すぎる天敵の存在、環境全体の逆風、そしてステアリングの充実による相対的価値の定価。これらによりこのカードは環境争いから消えざるを得なくなった。
その後のSTPDー3ではマシンではないがマシンゾーンを占領する『イベント』カードの登場で、もはやこのカードにとって悪夢としか言えない状況に。
『マシンではないのでマシン用の除去は効かない』裁定で多くの除去が悲鳴を上げるなかこのカードはもう笑うしかなく、攻撃力も半端なコレではHP削りにも呼ばれなかった。一方で同僚の 《暴虐皇カイニネウス》は長い冷遇を明け一時とはいえ注目されたのだからわからないもの。
よしんば除去を当てられたところで、ギア6の 《END of The WORLD-星が終わる夜-》をバラしたらギア4とギア2になって襲って来るため本当にどうしようも無く、僅かに残っていた愛用者の心を軒並みへし折った。
更にこの頃は 《原典妖-妲己威-》を初めとしたギア5サイクルが暴れ回り、こちらに除去を当てても悲惨なことになった。初期の『ギア1を採用してないとサーチすらできない』から『ギア1を雑に採用すれば一緒にギア4サーチできる』環境になってしまい、もうどう足掻いても撃つだけ損の存在に。
トドメとばかりに凡庸枠として最悪の天敵 《フェルドスパー・ロード》が採用され始める。
ステアリング枠を取り合うライバルなのは勿論だが、あちらが持つ能力【マルチギア】は『経過ターン数と同じギアを全て持つ』という反則的なもの。おかげで記載ギアは5なのに初手から最前線に出れる上、このカードのサーチで参照する際には何ターン目であろうとギア1として扱える。つまりあちらさえ入れていれば、このマシンを想定してわざわざ非力なギア1を入れる必要は皆無ということ。ギア1を含む以上は解体効果の対象にすらできず、このカードの存在意義は粉々に砕けた。
あちらが雑に採用するだけでも打点を増やすことが出来、重量級へのつなぎも自らトドメとなる事も自在にできたため、もはやこのカードにのみできる有意義な事はなにも無かったと言えよう。
■余談✝
元ネタは勿論殺人鬼ジャック・ザ・リッパー。
生涯、そして現在でも正体不明のダレカとして歴史の中にあり続ける怪人である。性別も不明のため、このカードのような創作では美人または美少女として多くの姿が産まれている。
たびたび有力な候補が見つかってもその度に否定され、現代の科学技術を持ってしてもとうとうその輪郭すら掴めて居ない。雲隠れするような擬似破壊耐性はそこに由来するのだろう。
同僚の 《暴虐皇カイニネウス》 《華麗剣デオーネ》共々、テキスト欄に【ワイルドステア】という謎の効果が表示されることがある。一枚だけならともかく、同時多発である事から不遇を解消するアッパーナーフへの予告演出ではと期待されている。
■関連カード✝
◆サイクル
STPDー1にて、性別が曖昧な伝承を煮詰めたマシン三台のサイクル。ギア3ステアリングで統一されており、カイニネウスで自身を含む三台全てを呼び出せる。
《暴虐皇カイニネウス》
《華麗剣デオーネ》
《殺人姫ジャックリーナ》