年越し特別編・予告詐欺だヨ! 反省会!
「ハイ反省会始めますよーーーーーーーーっ!!」
「…………………………………………ハイ?」
見覚えのある真っ白空間。
物語の主人公、先駆千里は気づけばそんな所にいた。
なんでこんな所に?
そう疑問を抱く間もなく、ペしーん! と竹刀が床を打つ。
音源は、看板娘の手元だ。
床に届きそうな程の金髪がチラつく。
「ッ……!!」
「いやはや。いくらなんでも音沙汰無さすぎるんでちょっとスレちゃいました♪」
少し離れた所から見下ろす、今までに無く険悪な雰囲気の美貌を見て状況を察する。
「ッ……わかったぞここお仕置部屋か! 聞いた事あんぜ……『運命/夜まで待て』とか言うPCゲーじゃ、ゲームオーバーになる度に剣道場に飛ばされるんだってな!? そーいや前もホムラに負けかけた時にココに来たよなぁチエカ!」
「さっすが千里サン! 唐突な展開にもしっかり付いてきてくれますねッ♪」
看板娘こと《勝利の導き手チエカ》は雑に褒めてくる……。
が、その笑顔の奥は笑ってない。
「で今度はなんだ……? 今は……えと、敵の本拠地に乗り込む手前らへんで、まだ勝敗決まるほどの盤面じゃあねーだろ」
「そこが問題なんですねー」
「ひょ?」
流石に情報が足りず、言っている事がよくわからない。
「てか、今のオマエ、コッチの事件知らないハズじゃあ……」
「いーんですよ今回はメタな話ですんでッ!! ああ遅ればせながらこの手の話題がニガテな方はブラウザバックよろですっ! ハイ良いお年をッ!!」
「はい!? ちょいッ待てっ!?」
「待ちませんッ!!」
流石に言動がヤバいと止めにかかるが、ブレーキのイカれた看板娘を止める方法などない。
「ぶっちゃけッ!! 時間かかり過ぎなんですよ番外編にッ!! 本編どんだけ放ったらかしだと思ってるんですかミナサマどんな話か忘れちゃってますよ!!」
「ウグッ……そりゃ仕方ないってヤツだろ、なんたってボスが四人に加え、ハルピュイアの群れも居ちゃあ……」
「そこなんですよッ!!」
「は?」
ビシィ!! と竹刀を向けられ硬直する。
「そこで困るのは、彼らの「その後」を思ってのコト。アナタのやり口はどっちかってーと和解寄りですからねー。容赦なくぶっ倒す話と違って冗長になりやすいんです。おそらくボス四人の方とも和解する気なんでしょう?」
「いやまあそれは、うん……」
「だ、か、ら、話が長く回りくどーくなるんです。初手からエリアごとブッパしておけばこうはならなかったでしょうに……いやまあソレは極端な例なんですが!」
「…………ぶっちゃけそれやれるんだったら、タギー社にロケットランチャーぶち込むとか、ウイルス仕込んで終わりだろーよ……」
いらいら、むかむか。溜まりに溜まったヘイトは呆れ顔の千里だけでは収まらない。
故に、チラリ目線をずらし。
「て、い、う、か! そもそもアナタも番外ボスなのにやり過ぎなんですよエレンさんッ!?」
「はぁ? エレンって…………ええええええええええええ!?」
視線を追うと、なんと隣にこれからぶっ倒す予定のエリアボス、エレンも平伏していた。
「ごめんなさい……癖を詰め込まれたデザインでごめんなさい……一時期あなたより関心集めてごめんなさい……」
「おいおいおいおいナアナアナアナアっ!!? 撃破前のコイツにこんな格好させて大丈夫なのかァどんな顔でボス戦すりゃーいいんだよ!?」
「知りませんッ!!」
もはや取り付くシマも無い。完全にキレてしまっている様子だ。
「だーってイマサラなんですもん! ご覧なさいな今日の日付けを! アナタ達がノンビリやってるおかげで年内完結宣言は破られますし! 予定なんてしっちゃかめっちゃかなんですからっ!」
「………………………………………………オイちょーっと待てコラ」
投げやりにも程がある、かつ肝心なことから目を背けてるチエカを前に怒りのスイッチが入る。
不在の神に祈る趣味は無いが、明確なカミサマが居るなら責任を取らせるべきだ。
「さすがに、今のは聞き捨てなんねーぞ。確かに俺たちはカミサマの予想を超えて突っ走る『命』だろーが、同時にカミサマに動かして貰わなきゃいけねーキャラクターのハズだぜ!!」
そう。何を隠そう本作、完結宣言が出てから四ヶ月で三十話も投稿してないのだ。
その間番外編ばかりやっていたのは確かに長すぎだが、そもそも毎日更新でもしていればとっくに終わっていたはず。
メタな話に突っ込むってんなら最後までだ、カミサマ出しやがれってんだよ! 俺やエレンより先にソイツだろーが、引っ張り出して鼻から年越しそばでも喰わせながら詫びさせーーーー」
「読みますね。
『この度は自分の無能でこのような事態になってしまい申し訳ございません。職場での過労、生活サイクルの破綻などの理由はありますが、年内完結宣言を守る見込みがなくなったのはひとえに自分の招いた事です。
締め日より丸二日が経過し、胃腸の悪化や全身の痙攣、異常な飢餓などの症状は何とか納まりました。恥ずかしながら昼間~夜の時間を使い、自分の心への飴と年末年始の備えも完遂出来ました。ようやく、しばらくの間とはいえあの地獄から解放されたのだという実感が湧いてきました。
おそらくこの休みだけで、予定した全ての物語を描ききることは不可能でしょう。再び長い断絶を迎え、また長く待たせてしまうかも知れません。
それでも、この心と体が動く限りは可能な限りの更新を行おうと思っております。せめてお待ちいただいた誰かに応える為に、魂を燃やして文字を紡ぐ所存です。
最後に、ブックマークやポイントを入れてくれた方々、いつもSNSで拡散してくれている方に重ねてのお詫びを。本当に、申し訳ございません。あなた方の期待に応える為にも、必ずや真のエンディングまで駆け抜けて見せます。
能登川メイ』
…………この人コレ以上いたぶります?」
「前言撤回ッ!! もう良い休めッ!! 休めッ!! 死んじまう! 明らかに胃に来てんじゃねーかッ!! てか絶対どっか身体悪いって病院行けとりあえず!! アンタ書いてる場合じゃねぇ!!」
わーわー騒いだが、結局の所は話を先に進めるしかないという話。
「それじゃあカミサマに頼れないとして……アナタガタどーします?」
「…………ああうん、ハイ、気合い入れる&無駄話しないように気をつけマス……話を先に進めるのを意識しておきます……」
「わたしも……このエレンも、まどろっこしい手は控えますので……何卒……」
「ヨロシイ。ワタシもエンディングの事後処理くらいだったら手伝えますので、早いとこ番外を締めて本筋に参りましょう。
…………それでは、ポチッとな♪」
ガ コ ッ
「は? ってうぉおおおおおおおおおおおおお!?」
「ひゃああああああああああああああああああ!!?」
スイッチひとつ。千里とエレンの足元が大穴と化し、遥か奈落へと落ちていく…………。
見送った看板娘チエカは。
「…………ていうワケでして。残念ながら年内完結は無理のようです。来年こそはワタシ達の戦いに決着が着くと思いますので、気長にお待ちいただければ幸いです。
これからも、『カードレース・スタンピード!』をどうかよろしくお願いします……ね?」
ぺこり、頭を下げて今年の幕を引くのだった…………。