始まりに向かうプロローグ!
チエカのカード紹介コーナー! 今回紹介しますのはギア2マシン《ガードナ・ケルベロス》! 所属クラスはヘル・ディメンションでパワー5000、ディフェンス8000の意外と防御型。手札を捨てるたびに、タップ状態とはいえ自身の分身を呼び出せます!
一見ディスアドに見えますが、ヘル・ディメンションは破壊と墓地利用がキモ! 手札一枚から二枚のカードを出力するこの子はありがたい主力だったりします!
まあそれは置いといて本編にGo! 今回で二章完結です!
『ハイハーイカードゲーム《スタンピード》専属Ai-TUBA御旗チエカです! 全国のレーサーさん元気で走ってますか!?』
今日も今日とて配信が始まる。
滝のようにメッセージのログが流れる。
『今日もイカしてるデース!』『付き合いたい!』『ビンタしたい3070万人のうちの一人です』『Triperのフォロアーです!』
『いやいや皆さんどうも! ……あービンタ勘弁してください。三千万とか流石にヤバイです……』
その中で。
『おや?』
異物が見つかる。
『挑戦状? なんですかこれ?』
一つのメッセージが目に止まる。
『えーと、これはいつも来てくれるPearlさんじゃあありませんか。これは一体……』
「…………」
画面と向き合っていたのは、Pearlこと丁場或葉だ。
彼女はタップを続ける。
「ある者よりの事づてにござる」
『ほうほう。こんなものを送りつけるように誰かが頼んだと。
……してそれは一体どこのどなたです?』
「二人組の男にござった」
打ち続ける。
暗闇の中、宣戦布告は続く。
「名を《Silva@fire》と《Silva@hart》。二人組の『シルヴァ』にござる!」
『ほうほう?』
チエカは興味津々そうに問う。
「その者は大胆不敵にも、拙者に事づてを頼んだ後にこう言い放った。『俺達はこのゲームを攻略するーーーー』」
そして。
放つ。
決定的な言葉を。
「『ーーだから覚悟しろ。お前を頂点から引っ剥がしてポンコツAiの印を押してやる』」
メッセージが止まった。
チエカの動作がが凍った。
放送事故に近いレベルのフリーズが起こる。
アルハの額に汗が流れる。
やがて。
『ぷーーーー』
「?」
「ーーぷわっはっはっはっはハッハッハハッハッハ!! そんな事が!! そんな事を言う人が出ましたか! いやー多くの方の目に止まるってのは辛いですねぇ!」
笑い転げるチエカ。
彼女は喜怒哀楽を隠さない。
故に彼女は至高の娯楽なのだ。
飾らない彼女は、つくづく底が知れないとアルハは改めて実感した。
そうして、ひとしきり笑い終わった後で、向き直って言い渡す。
『ハッハ……はぁ……だったら彼らにこう返してあげてください』
「ウム?」
「24時間、365日。左の額を開けて待っています。やれるものならやってみなさいな、って♪」
『負けないで!』『勝ったな(確信)』『シルヴァ如きが御旗チエカに勝てると思うな』『応援してます!』
滝のような支援メッセージが流れる。
彼女につく全員を敵にした。
宣戦布告は完了。
後は全面戦争あるのみだ。
それを眺めて。
「…………無事を、祈るにござる」
アルハは、静かに呟いた。
「センスある名前センキューな」
「気にするな。これからの戦い、本名のままでは無理があると思っただけだ」
そして「シルヴァ」両者は会談する。
既に時刻は明け方。ひと眠りした彼らは、ネットの反応を確認し合うために落ち合っていたのだ。
ヘル・ディメンションに、貴重な朝日が登ろうとしていた。
「んで? これからどーすんすか?」
「お前は表から攻略を進めろ。オレは裏から真相に迫る」
「それでうまく行くんすか?」
「ああ。ネットの流れを味方に付ければこっちのものだ。相手が攻略されたくないのはわかりきっている。
だったら最大限嫌がらせて、連中を交渉の席に引きずり出すまでだ」
「チエカ派は全員敵っすよ?」
「簡単だ。運営側の試練に打ち勝てばいい」
不敵に言う。
「良いかセンリ。この世界は7つの領域に分かれている。そしてその上に、それぞれに対応したAi-tubaがチエカ含め計七名、配置されている」
「なる。エリアボスって奴っすか!」
「ああ。コイツら全員と触れ、対応した必須レアを回収するんだ」
「つまりレースして勝つって訳っすね?」
「ちょっと違う」
シルヴァが頭を抱えながら言う。
「なにせ条件の中には『私が満ち足りたら合格』なんてふざけた条件で勝利者を不合格にする奴も居る」
「!?」
「ここで手に入れたカードを見ろ」
先程のバイトで入手したカードを確認する。
見ると、そこには桃色の髪の女のイラストと共に《最上の乗り手ユリカ》の名が。
「そいつがここの女王様だ。どうやら、今回のレースにはご満足いただけなかったようだ」
「チエカの時と同じゲストカード……残念賞か!? でもここでのチャンスは一回じゃあ……」
「ああ。後は本人を探してレースに誘うしかないな。それでも満足いただくまでどれだけかかるか……」
「マジかよ……」
「ま、気長にやろうじゃあないか」
「……そうっすね」
そこそこに、語って。
それから、照れくさそうに言う。
「……ありがとうな」
「別に。俺もエイリアンもどきに支配された世界は嫌だったってだけの話っすよ」
「協力の件、それもそうだが」
光滲む空を仰ぎ言う。
「アルハによくぞ宣戦布告の役割を与えてくれた。これで今後それなりの事があろうと気に病まずに済む」
「そらま……俺もアイツが泣くの見るのいやっすし」
「この」
軽く小突かれた。
臭いセリフとでも思われたか。
ともあれ。
「これから、よろしく頼むぞシルヴァ・ハート」
「こちらこそ。シルヴァ・ファイア」
二人は拳を突き合わせた。
日が登る。
夜明けの元で交わされた、シルヴァたちの結束の儀式だ。
そして数時間後。
7つのどれとも違う、謎の領域で会議が開かれようとしていた。
「《ラバーズ・サイバー》、良し」
「《サイエンス・サンクチュアリ》、良し」
「《ヘル・ディメンション》、良し」
「しゅ、《シュガー・マウンテン》、よし!」
「《サムライ・スピリット》、よし」
「《マジック・サークリット》、良し」
そして。
「《スカーレット・ローズ》……良し」
最後にチエカが締めくくる。
「では始めましょうか。最近おっかなーい方も頻出してるっぽいですし、ね?」
光源設定が狂った世界の中で。
妖しき心の会談が、始まる。
その様子を一人、見下ろす影があった。
「あはぁ…………今日も良い眺め♡」
幼気なバニーガール……Yagami123だ。
次回新章!Ai-tuba達の思惑が動き出す!「新しい朝」をお楽しみに!