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カードレース・スタンピード!!  作者: 能登川メイ
Episode.2 ローグとの邂逅! 〜センリvsシルヴァ!〜
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ヘルウェイ・ライディング! その4

チエカのカード紹介コーナー! 今回紹介しますのは、絶賛本編で大暴れ中のギア4マシン《大悪魔ルシファー》! 所属クラスはヘル・ディメンション。パワー・ディフェンス共に13000の走力20!

登場時に他の味方を全て破壊し、うちギ3以上のヘル・ディメンションの数だけ自分の分身を呼び出します!

新世代の脳筋戦術にうってつけの一枚! 皆様も一度お試しあれ!


戦局はまさにクライマックス。


蒼き悪魔が天を支配する。


このターンで決めるか否かの分かれ目だ。


「さあもう逃さんぞ。この四体の悪魔で必ずお前を潰す」


「く……」


「では行くぞ……ピットトリップラン(入れ替え疾走)だ!」


恐怖が来る。


合計80キロの走力で、センリを抜き去りゴールを決めようと襲い来る。


「まずは第一走! アリーエヴェルチ・ジュタッカ!!」


シルヴァ残り走行距離……75→55


「くっ……!」


「まだまだ行くぞ! 二体目のルシファーの疾走!アリーエヴェルチ・トロメア!!」


シルヴァ残り走行距離……55→35


「三体目ェ! アリーエヴェルチ・アンテノーラ!」


シルヴァ残り走行距離……35→15


震度が伝わる。


高台……十キロ後方に凄まじい爆撃のような跡が見えた。


「さあラストランだ! 行けルシファー! アリーエヴェルチ・カイーナッッッ!!」




「オレの勝ちだ!! 見晒せぇえええええ!!」


悪魔王が飛翔する。


勝利に向かう最後の飛翔。



その頭上に。


橙色の光が激突する。



「!?」


悪魔ごと地に伏せざるを得なくなったシルヴァ。


その視線の先には。


「オレンジ……イーグルだと!?」


「おーよ。今回のテストマシンだ」


センリは高速の中にあって静かに語る。


「疑問に思ってたのよ。ファーストマシンとしてのコイツに。先行が不利ならコイツは何なんだってよ。

んでよく見たんだ。なんかオマケが無きゃ嘘だって思ってなぁ!」


「まさか!?」


「おーよ! コイツの上にギア1が置かれていた場合、コイツをスクラップに送れば行動一回をキャンセルできるッッ!!」


「馬鹿なああああああああああ!?」


役目を終えたイーグルが消失する。


もう攻め手は無い。


守りの札もホラーショウ一枚。


だがそれでは。


「……ターンエンド」


「俺のターン!」


最後のターンだ。


「ギアアップ《パイクリート・サイドライド》! 疾走!」


「ッツ……だがオレにはアヴェンジ・ホラーショウが……」


「それもここまでだ」


ホラーショウ残り数値……13000→5000


「そいつの残り数値をこっちのマシンが超えりゃあよ! 何も問題は無いって訳だ! それならァ!!」


小豆氷(パイクリート)が砕け散る。


そこから現れたのは。


「ラストラン! グリーン・タートルで疾走!

コイツのディフェンスは7000! ホラーショウの残りを超えたぜ!」


「ア……ああああああああ!!」


最後。


しぶとく死神の影がついて来たが。


その影を、ミドリガメが突き破る。



ーーーーkekkkeke……………gugya……



センリ残り走行距離……5→0=GOAL



二人ぼっちのレースは、センリの快勝で幕を閉じた。






遅れてゴールしたシルヴァは、脳の疲労からかアバターを倒れさせてしまう。


そこに遅れてきたアルハがかけよる。


「姉上!!」


「だから……姉って言うなって言ってるだろ……が」


シルヴァが強がる中、センリは何か達観したような眼差しで近寄った。


「わかったよ。アンタが何を拒んでいたか」


「なに……?」


「レース中のアンタの反応だ」


センリは己の記憶を回想しながら話す。


「アンタは常にチエカを過剰に警戒していた。ギア1が三体並んだだけで補助カードによるチエカの君臨を警戒していた。ルール上まだ出せないのにだ」


全てがそうだった。


彼の警戒の本質は彼女だった。


「そして俺がステアリング三種を使い切った途端、アンタはやけに楽しみだした。チエカが来ないとわかったからだ。

それは戦術的な理由か? いいや違う。目の前でチエカが来るよりヤバイ事が起こっていても、アンタが過剰にビビったのはチエカの名を出した時の一回きり。

それ以外は、後五キロ走られたら負けの状況でも動じてなかった」


そして、結論は語られる。


「アンタはただ……怖かったんじゃないか? 『個人としての御旗チエカ』が」


「…………」


「アンタがこのゲームの事を大好きなのはわかった。それに娯楽としてのチエカを楽しめるってのも知ってる。だが個人としてのチエカが相手となるとアンタは一気に怖くなる。

……感じねーんだろ? アイツの人間味って奴をよ」


「…………お前はまだ知らないんだろうなぁ?」


シルヴァは嘲るように言い放つ。


「奴の本質は『のっぺらぼう』だ。このゲームのメインシティ、シュガーマウンテンのどこにでも居る。

そしてゲームの七枚の必須カード……別名ログボ札からいつでも湧く。その全てが御旗チエカ『本人』だ」


だからこそ恐怖する。


「体感すればすぐわかるはずだ。目の前の自分と会話しながら画面の向こうで配信を行ない、同時にサーキットではゲストマシンに乗って暴れその相手をレーサーとしてのチエカが務める。

……このゲームはチエカだらけだ。

運営の正気を疑うのはそういうことだったんだ。奴は頼っちゃいけないナニカだ……!」


アバターを震わせる。


真に震えるは、画面の前の本人だろう。


「奴は一体何者なんだ。複数人で演じてるにしたって無理がある。そのくせ全員が全員機械よりずっと滑らかに人間らしく話しやがる。人工音声が最も不得手とするはずのシャウトを乱発しながらだ。

オレには、アイツが未知のイキモノか何かに見えて怖いんだ。だから……」


「だったら、なんでそう妹に言わなかったよ?」


「……わからなかった、だな。ずっと漠然とした危機として認識していたものの本質にようやく気が付けた。そうさな……一言で言えば」


そして。


纏めるように言う。



「この世界はーーーー御旗チエカという『種族』に支配されていたんだ……」



言った後、シルヴァの口から嗚咽が漏れた。


センリにとってもよろしくない事実。


少年達は涙を幻視した。


「ああ……そうだよ……大好きになれたこの世界が、得体の知れない奴に支配されてるから怖いんだ! この世界にいる限り、オレたちは24時間、365日奴らに監視されている! その事実がずっと恐ろしかったんだ、ずっと目をそらしていたんだ……!!」


「姉上…………」


「アルハァ!!」


妹を向きシルヴァが叫ぶ。


「お前には自由に生きて欲しいんだ! だから頼む! 『心までは奴にやらないでくれ』!!

あの無限生産型にお前の面倒を見る気概などあるものか! 奴の挙動を楽しむなとは言わん! ただ割り切ってくれ! オレが望んでいるのは、たったそれだけなんだよぉおおおおおお!!」


「…………」


「アルハ……」


センリが心配そうに覗き込む。


俯いてる、ように見えたが違う。


それは覚悟と決意の眼だ。


「姉上……いや詩葉」


覚悟の現れか、真名を語り向き直る。


「心配されずとも、拙者は好きに生きておる。この口調も、格好も、遊ぶゲームも……そして惚れる相手も好きに選んだ」


「アルハ……だが、だがぁ!!」


「シハよ」


アルハが微笑む。


それには大地に太い根を下ろす大樹のような強さがあった。


「あぁ……」


「チエカ殿に面倒を見る気概がない? 何をあたりきしゃりき。彼女を動かす力は誰が注ぐと思っておる。

ソーシャルゲームを遊んで『面倒を見る側』で居ないで済むとでも? 搾取上等、重課金ご覧あれ。

例え彼女が何者であろうと! このゲームを本気で楽しみ! 彼女に本気で恋をした! それが両者の役割であり、拙者は彼等に十割十全に満たされておる!

例えチエカ殿が何者であろうと! それが事実にござろうッツツ!!!」


「ア、ルハ…………」


シルヴァはよろめき……数歩後ずさり、尻餅をついた。


「…………どーやら。コイツは重機でも動きそうにねーな」


「ああ……悲しいやら、言葉を聞けて嬉しいやら……」


苦笑が次元を貫通する。


一人の姉の複雑な感情が、電子の青年の表情に表れた。


「……んでだ。どーすんだアンタ。妹が良いって言ってるからもう話は終わりか?」


「そうさな……」


シルヴァは決意を示し見下ろすアルハを眺め、数旬空を仰ぎ……センリに向き直る。


「センリ…………一つ、頼まれてくれるか」


「おう、ドンと来いよ」


最早結束。


超速の世界を経て、二人は既に分かり合っている。

戦いを超え分かりあった二人。一人の少女の覚悟を聞き遂げた彼等の向かうべき道とは!?

次回第二章完結!「始まりに向かうエピローグ」をお楽しみに!!

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