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カードレース・スタンピード!!  作者: 能登川メイ
episode 11.5 外伝封入。電子の海の一大バカンス!!
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夏休み特別編〜電子の海にて会いましょう♪〜その3

《キルハルピュイア》✝

ギア2マシン ヘルディメンション POW5000 DEF5000

【マグネスイッチS/場から離れた時】カードを一枚ドローする。【進路妨害】




***********************(5000×4=)

Low チエカDEF11000vs20000POWハルピュイア群 high







嫌われ者の毒怪鳥が麗しの乙女を囲んで叩く。スペック上は彼らに勝るはずの彼女も、さすがに多勢に無勢の様子だ。


一方、状況に頭が追いつかない2人は。


「え……水着イベントのオープニングってこんな浦島太郎みたいなのだったの?」


「いや違うから。最強存在が初手で恥さらすワケないでしょ」


「じゃアレ何だよ……」


「あたしにもわかんない……」


とここで、割とドン引きの二人がいつまでも来てくれないのを悟ってかチエカが涙混じりに懇願しだす。


「あうう……もう、見てないで助けてくださいよぉぉぉ……そろそろ限界ですってばぁ……」


「ああもうしゃーないなー……片付けるぞ良襖。ヤれ《ブラック・グリズリー》!!」


「仕方ないわね……やりなさい 《マスター・フォーミュラ》」


仕方なし、の号令に従い、強力なしもべがポンと沸く。


機械音と咆哮を轟かせ、二台の魔神(マシン)が粉砕にかかる。




《ブラック・グリズリー》✝

ギア4マシン スカーレットローズ POW16000 DEF10000




《マスター・フォーミュラ》✝

ギア5マシン スカーレットローズ POW15000 DEF15000

【自分の場に、1~4までのギアが一枚ずつ全て揃っている場合のみこのマシンは場に呼び出せる】

【登場時】経過ターン数と自身のギアを0にする。以降、このマシンは【マルチギア(経過ターン数と同じギアを全て得る)】を得る。【三回行動】




ーーーーGOOOOOOOOOOOOOOOONN!!


『『『ピギ、ピギャーーーーーーーー!?』』』


ドガバキグシャリダムダムドゴボグシャアアアア!!!!




WIN グリズリーPOW16000vs5000DEFハルピュイア lose


WIN フォーミュラPOW15000vs5000DEFハルピュイア lose


WIN フォーミュラPOW15000vs5000DEFハルピュイア lose


WIN フォーミュラPOW15000vs5000DEFハルピュイア lose……




鋼の拳でズガゴンバキンと駆除されるハルピュイア達。ゲームマスターはもとより、千里ももうこの手のバトルは慣れっこだ。


「……もーちょい仕事したら?」


「ワリ」


軽口を交わす横で、よっこらせと立ち上がる。


「ぷはぁーーーー!! 助かりましたー! ありがとうございますありがとうございます!! ワタシ一人だと流石に全員相手するのはまーシンドくてもう!!」


すっくと立つ彼女は、どうもいつもと様子が違う。


清楚じみた白いワンピース風の水着を着用しているが、ギラッギラのキャラクター性と出るとこ出てる抜群のプロポーションのせいで全く清楚になってない。おそらく当人も良襖(さくしゃ)も自覚して狙っているのだろう。






《海岸の導き手チエカ・アクアコーデ》✝

ギア4マシン スカーレットローズ/ラバーズサイバー

POW14000 DEF11000

【使用コスト・手札二枚を捨て札へ】

【登場時】 《海辺仕様のスペシャルコーデ!!》一枚を作成し、場のマシン一枚に装備する。

【このマシンの破壊時】自分の場のアシストカード一枚を破壊しても良い。そうしたら捨て札のこのカードを自分のセンターに置いく。





「おやおや? なんですかーまじまじと見つめちゃって? 水着とはいえ照れちゃいますよもー♪」


「ああいや……こんな姿の人格がガチで『アイツ』の片割れだと思うとアレだなって思っただけで」


ちょっとクラクラしかけたのを誤魔化していると、生みの親のはずの良襖が疑問を投げる。


「それで……なんであなたがここに? てかどうやって? 《チエカ-アクアコーデ-》は金型のデータだけ作って一体も生産しなかったはずなのに」


「イヤですねマイマスター♪ 別カードとはいえ結局は水着なんですよ? データさえあるならワタシの自分勝手で着れるに決まってるじゃあありませんか♪」


「えっ……?」


いくらなんでもそんなに万能に作ったっけ? と呆ける良襖だったが……それを茶化すようにチエカは。


「っていうのは半分冗談でして。もう半分の理由は、この砂浜にあります」


「ふぇ?」


「砂浜……あっ、確かチエカが……」


ここに来る前にちょっと聞いたところだと、イベントの設定ではこの砂浜自体がチエカの集まりらしいが……まさか。


「そうこの砂。設定通りワタシの分身の粒子で作りましたよねマスター? とーぜんワタシの力がタップリこもってまして……データだけあった水着バージョンに流れ込む余地があったんです♪」


あーなるほど、と千里は思った。


良襖が職人気質、言い換えればクソ真面目だからこそ通った裏道か。まるでTRPGのマンチプレイ。設定の隙を突いて自分の優位性を保つ本質は、彼女ならではの貪欲さだと再確認する。


まあ手に負えなくなってきてる、とも言うが……


(っていうか。いよいよもって這い寄る混沌とかその辺の怪異じみて来てないか? マジ大丈夫?)


「あーお察しかと思いますが、この件はマリスさんは愚か、ワタシの本体さえ預り知らぬコトなのでご了承を」


「は?」


内心の不安を見透かすようにとんでもない事実が明かされる。


「だってこんなコト知られたらあの悪意サンぜったい悪巧みするじゃないですかーヤダー!! 本体サンに知られても伝わりそうですし! だからここのコトはぜったいに、ぜっっっっっっったいにあの人達には秘密ですからねッ!!」


「……えーーーー?」


「えーじゃありませんっ!! せっかくワタシがワタシとして独立できてるんですもん、イマサラ操られるなんてまっぴらなんですからッ!!」


プンスカと怒り散らす姿は、元のチエカを軸としながらもどこかワガママ度が増してる気がする。


流石にアレだと思い、良襖の背を叩き回れ右してヒソヒソ会議に突入。


(なぁ……これ完全にオリジナルチエカのネットワークから切断されてるよな?)


(そうね……彼女単体で一個の電子生命体になってる)


(ヤバくね? コイツが成長して独自の考えで動き出したら……)


(もう手遅れでしょ……彼女自体も増殖能力は持ってる筈だし。倒しちゃう訳にも行かないから、もうこのままここで大人しくしてもらったら?)


(だな……)


「ちょっとーさっきからナニコソコソ話してますー?」


ビクッ!! と震え上がる。


先ほどはうっかり追い詰められてたようだが……電子世界での権限は彼女も良襖に負けてない。特にここは彼女の手のひらの上も同然。下手なことは言えない。


ならばと、とっとと本題に移ってしまう。


「な、なんでもないなんでもない!! それはそうと……ここイベントエリアなんだろ?」


「はいはい?」


「せっかくだから色々見て回りてーのよ? んでそのためには専用の装備が要るってハナシだろ? せっかく来たんだ、知り合いとかも呼んで見回りたいし……良かったら渡してもらえるか?」


「お? おお?」


若干無理があったか、と思ったが意外と乗り気の水着チエカ。不毛な怪鳥との戦いには飽き飽きしてたのだろうか?


「なーんかヤル気出してくれました? 良いですとも良いですとも! せっかくのシナリオがもったいないって思ってたとこなんです! そーいう事ならお受け取りなさいませ♪ そーれっ!」


と、特に突っかかるでもなく素直に装備を渡してくれる水着版チエカ。


粒子を纏い飛来する装備カードを眺めながら考える。


(これで装備を受け取ったら、テキトーにみんなと調査して。問題なかったらとっとと帰って決戦に備えるかぁ……)


なんて若干失礼な思考回路で、自分のアバターの服装が変わるのを黙って待っていたが……


「……ん?」


妙な違和感。


水着になるとは思っていたが、どうにも男物にしてはパーツが多いような……?


そんな心情を尻目に粒子の渦は収まり…………絶句する。






《海辺仕様のスペシャルコーデ!!》✝

ギア1アシスト【装備】スカーレットローズ/ラバーズサイバー

【常時】このカードを装備したマシンは【二回行動】と『【一度目の攻撃時】カードを一枚引く』を得る。

【このアシストを疲労】このアシストを装備したマシンに【進路妨害】を与える。






「…………………………………………………………………………………、」


「どーですかっ!! 実に120種の中から最もアナタに似合うのを見繕ったんですよー?」


たしかに。その海面に映る水着姿は全く違和感が無く似合っていた。……性別が違うという問題を無視すれば、だが。


「あらカワイイ……ってあたしのデザインだから当然だケド」


「って……なんじゃこりゃああああああああぁぁぁあああ!?」


良襖が自画自賛する中、遅れてわなめくのは千里だ。


それはそうだ……パレオにチューブトップなど、あからさまに女性向けの水着を着用させられたのだから。肩を誤魔化すはおりまで付いたあげく、後ろで縛ってた髪型までツインテールに変更されている。


「なにって水着ですよー? もち女の子モノの。その髪型ももとっても似合ってますねー♪」


「いやいや俺は男だっての!! 見りゃわかんだろてか知ってるだろバラす前のチエカの記憶あるんだからっっっ!!」


「えー? ワタシ一回バラバラになったから細かいコトわかりませーん♪」


「嘘だッ!! わかってなきゃこんな的確に平たい胸と股間のアレを隠す構造の水着渡すワケねぇ……!!」


「それじゃぁ、調査やイベントの攻略などはご自由に。ワタシは水着装備の量産とかイロイロ準備がありますので♪♪♪」


「待っ……まだ質問が山ほど残ってるんだが!? さっきのハルピュイアどっから沸いた! なんでこのエリアは起動して……クソっ!!」


シュンと音を立て、咎める前に消えるように逃げられた。


「あ……あぁ…………あと、装備のデザイン変更のやり方とか、さ……」


「ああソレ水着版の彼女にしかできないから我慢ね今日は」


「ああもうッ!!」


千里としては是非とも他の水着に着替えたいところだが、生憎と良襖に頼んでのんびり開発してる時間的余裕はない。ものすごく悔しいが、今は我慢するのが妥当なようだ。


「えっと……これからどうする?」


「どうするって……一応エリアのギミックは機能してるってわかったし、他のメンツ呼ぶか……?」


「呼ぶって……その格好で?」


「……あー、」


自分の格好を見下ろし辟易する。


どこに送り出しても恥ずかしくないツインテール美少女と化した千里。


しかし当人としては、恥以外の何でもなかった…………。


「あ……あああああああああああああぁぁぁあああぁぁぁ…………!!」


呻きと共に膝から崩れ落ちそうになる千里だったが、灼熱の砂浜ではそうも行かない。


結果かよわい女子のように内股になり、静かに可憐な涙を流すことしかできないのだった……。






(ああそうだったそうだった……それでみんなを呼んだは良いが、本攻略に速攻で飽きてテキトーな砂浜で遊び出す羽目に……いや目的はクリアじゃないし大規模レイド仕様だからクソめんどくさいのはわかるけどさッ!!)


内心叫び散らし、死んだ目でボールをトスする。


ーーーーかくして彼ら電子の勇者たちは、最終決戦を前にして大々的なバカンスを敢行する事となったのだ。

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