最終イベント・群集事変スタンピード開幕!!
思えば遠くまで来たものだ。
それぞれの始点で、それぞれの物語が編まれてきた。
決して誰に操られるべきでもないそれは、しかし確かに悪意の干渉によってねじれていた。
それぞれの立場、それぞれの思いを急かすように針は進む。
そして。
そして。
決戦当日。
開戦の狼煙は上がった。
『最終イベントかぁ楽しまねぇと!! ……てかなに? 今日でこのゲーム終わっちゃうの?』
『んーや、あくまでも第一部[完]って感じらしい。新しいエリアも提示されてるしまだまだ遊べるぞぉー?』
『むしろこれからが本番なんだからヘーキよヘーキ。ひょっとしたら定番のレイドバトルイベントなんかもあるかもね?』
『おおっ採集決戦ってか!! 第三弾のパックチケットが欲しいんだよなぁ……』
「……ずいぶん、賑わってるな」
電子の世界に降り立ち、千里はしみじみと言う。
決戦の舞台に選ばれたのは、雲一つない晴天の聖域。
楕円形のサーキットが、このゲームがレースモチーフなのだと強制的にわからせてくる。
赤熱するほど焼けるるようなアスファルト敷の大地を踏みしめ、『紅』のフレームで組まれた会場の天を覆うような傘を目指していた。
スカーレットローズ。
実在性の薔薇を表す記号。
他でもない御旗チエカが管轄する、まっすぐな疾走の領域だ。
既に千里サイドのバトルメンバーが到着、デッキの調整を済ませている。チエカの代わりにフルダイブの窓口となったのは、ゲームの創造主たる良襖だ。
特攻メンバーは彼女を含め四名。他の面々はそれぞれの事情で来れなかったという。
彼らが、数万の兵を率いる切っ先となる。
「……この感覚にもなれてきた。ブラウザに張った膜に穴を開けて、広げる感じ」
「ずいぶん、具体的な手応えが返って来るんだな?」
「そりゃま、魂の触れ合いだからでしょ?」
疑問を返す先駆千里に、創造主は本質を語る。
「このゲーム世界はたぶん、全部がコピーした魂でできてる。あたしたちのアバターも魂だから、妙な手応えが返って来るんでしょ?」
「そっか……」
改めて、とんでもないゲームだと千里は思う。
断じて悪意の元には置いていけない、オーバーテクノロジーでこの世界は作られていた。
負けられない、と改めて思う。
なんとしてでも元凶を引っ張り出し、歪んだ世界のルールを正さなければ。
そんな覚悟を胸に、かつりかつりと喧騒の中を行く。
「わかってると思うが。ここで対決するチエカは、あくまで前座だ」
年長の詩葉を先頭に、歩きながら作戦会議の確認をする。
「ああ。三弾以上もカードが出といて、今更最初の段だけで組まれたデッキが強く出れるわけが無い」
ここで戦うべき御旗チエカは「第一弾パック環境における最強デッキ」のチエカだ。現在まで二度の追加パックに加え、パック外のパワーカードも投入された現環境では大した脅威ではないだろう。
話を促すのは、最後の一人たる或葉だ。
「即ち、討つべきはやはりその奥の二人とな」
「ああ。一人は全部の試練をクリアした先のゲーム上のラスボス……お前の兄のアバター、チエカ・ブロンズコーデ。おそらくはノーマルチエカと連戦になる」
表の目標はそちら。
兄との因縁を突破すれば、同時にこのゲームのクリアも果たされるという。
「俺だけ、リアルの事情がゲームと赤い糸で繋がってるってか。ひでー待遇なこったな。確か俺のクリア状況は……」
千里、現在のクリア状況…………
《初陣強襲の試練》……クリア済み
《若葉の試練》……………クリア済み
《百人切りの試練》……クリア済み
《娯楽恐悦の試練》……クリア済み
《守護の試練》……報酬のみ受け取り済み
《焔の試練》……手付かず
《探査の試練》……手付かず
隠し試練《原典再戦の試練》……手付かず
…………計七と一つの《試練》をクリアし、ラスボス仕様の御旗チエカを討伐した時、《カードレース・スタンピード》クリアとなる。
千里の集めるべきステアリングキー残り……2。所有者はチエカとシイカ。
進行状況を回想し、どこか懐かしささえ感じてしまう。思えば本来の攻略は、しばらくご無沙汰になっていた。
「こんなところか。結構進んでたのな」
「問題は探査の試練よの。確か担当のシイカの相手は姉上だったか……」
「その辺は問題ない」無駄を省くように話を飛ばす。「今は残り二つの心配をした方が良いだろう。……と言っても、どちらも特殊な条件があるとはいえ、最終的に『勝ちさえすればいい』試練。そこまで気に病む程でもないかもだがな」
「拙者が受け持つ守護の試練は、特定のマシンを守りながら戦う試練であったか……まあなんとかなるであろう」
「と来ると俺は焔の試練か。確か、特定のカードを受けきらないとダメだっけか……ま、一回勝ってるし行けるか」
結局は前座。
既に千里は限界に近い実力を持っているし、なによりホムラとアルジは撃破済みだ。予定調和の前哨戦を気にしていたら最後まで身が持たない。
と来れば。
「やはり警戒するべきは最後の敵……マリスだ」
「……!!」
こちらが裏の……そして本当に果たすべき目標。
「あの悪徳運営野郎はゲーム外の異物だ。つまり『攻略させる気がない』ターゲット。そんな奴をいかにぶっ倒すかに、この戦いの全てがかかってると言っていい」
「ゲームをクリアしても止まらない唯一の存在が元凶ねぇ。ふざけてやがるぜ」
思い浮かべるは侮蔑振りまく仮面男。
千里はアレの魂の一部を人質として持ってるが、ここまで来ると踏み倒されかねない恐怖がある。
「ショージキ、脅されたにしたって。アレが素直に戦場に出てるとは思えないのよねー」
「いや、こっちには来てるし場所ならわかる……『ステアリングタワー』だ」
「うむ?」
会話の中、詩葉が手振りで示す。
見覚えのない、しかし明らかに異質な天を突く塔が築き上がっていた。
まるでなにか、物理を無視して実現したバベルの塔かのような。
「ちょっ……ナニアレ?」
「ステアリングタワー……って、確かマリスが新規ユーザーに護らせてるっていう拠点か!!」
「ああ、奴はタワーに篭って『なにか』をやろうとしてる。そのための時間稼ぎをさせるつもりだろう」
そう。今回の最終イベントの概要は『ステアリングタワーを攻略しようとするベテランユーザー』と『タワーを守ろうとする新規ユーザー』の戦いのようだ。
タギー社は大量のユーザーを確保してアレの防衛に当たらせているらしい。ならばそこに重要なものがあると考えるのはごく自然の流れと言えよう。
だがここで口を挟むのは良襖だ。
「まった。それじゃ理屈が合わないわ。時間稼ぎが必要なくらいなら、メンテナンス扱いにしてユーザーを締め出せばいいのに」
「ユーザーが集まる事が重要……だとしたらどうかの?」
「「「……ッ!!」」」
即座にゾワッとする仮説を立てたのは或葉だ。
「魂が世界を作るなら。ユーザーは資源に、野望のための生贄になりうる。後の事など気にする必要はない。マリスの策は、対立構造を作って瞬間的にでも大量のユーザーを確保して資源とすることだとしたら……一応の説明はつくとは思わんか?」
「やべぇな。大惨事じゃねーか」
ここに来て、いや文字通り実際にここに来たからとっちらかっていたマリスの野望の輪郭が見えてきた。
あの悪意の塊は、このゲームをユーザーごとナニカの素材にするつもりなのか。
推測が指針を示す。
四人の勇士が頭を突き合わせ話し合う。
「……真相が見えてきたわね。つまり相手にとっちゃ『ゲームが盛り上がった『瞬間』を極力維持する』事が重要。クリアされちゃ困るってわけね」
「そうだな。ゲームのクリアはイベントの終了と同じ……劇的にログイン数が下がるのは目に見えてる。そうなる前に、必ず何かの動きを見せるはずだ」
「そここそが好機。大きな動きには必ず隙が付きまとう。そこを突き刺せば勝機はある!!」
「なーんだ簡単じゃねーか。つまり相手全員に勝って、そのあとノコノコ出てきたマリスをブッ倒せば良いんだろ? やってやんよ、残党も一人残らずよ!!」
いやそんな草の根一本残さない勢いでやらなくても良いんだがな……と詩葉が言いかけた所で、ゲーム内に設置されたスピーカーが起動した。
雰囲気作りのオブジェクトのはずだが、フルダイブしている千里たちにとっては実物と大差ない。
聞こえたのは。
『えー、お集まりのミナサマお久しぶりです! 電子の看板娘こと御旗チエカ、イベント前に堂々復活です!!』
「……!!」
ワァーーーー!! と初心者たちが盛り上がりを見せるのは、彼女とチュートリアルで戦ったからだろうか。
しかし千里たちが受ける印象は違う。
『ワタクシ、諸事情によりしばらく表に出てこれなかったのですがもう安心です!! ここから先は出ずっぱりですよーーーー!!』
(チエカ……)
このゲームの看板娘、その正体は兄から生じた分霊体だ。
「急ぐぞ、開戦が近いらしい」
「……ああ」
どこか無理して聞こえた声に耳を傾けつつ、千里たちはマシンを呼び出し最前線を目指す。
演説は続く。
『さてさて、ミナサマの中には今日開催されるのが最終イベントと聞いて不安になってる方も居るのではないでしょうか? しかしその心配はございません! むしろ本日、このゲームは『ステアリングタワー』の力でより良き姿に生まれ変わるのです!』
言わされてる、と思った。
このゲームを愛したチエカが、このゲームの真実を知るチエカがそんなことを心から言うはずがない。
マリスに奪われるためのイベントを肯定するわけがないのに。
『本日訪れるのは、このゲームの根本的な変遷。言い換えれば、今日この日こそがこの世界の新しい誕生日。ならば祝おうではありませんか! 勝つも良し負けるも良し。いずれにせよ、今日を持って新しい世界が開かれるのです!!!』
「チィ!!!!」
「気持ちはわかる千里。だがその苛立ちは全てが終わったあと、簀巻きになったマリスにでもぶつけることだ!!」
「わかってるっすよ……でも……でも……!!」
悔し涙がこぼれかける千里だったが……隣を見れば、チエカのかつての相棒である良襖も苦い表情をしている。或葉に至っては血の涙を流しかねない形相だ。
自由を奪う所業に、誰かの堪忍袋が爆ぜかけた、その時。
『ただまぁ……それでも、あえて言うなら』
「……?」
『ほんのちょっぴり、時間を戻せたらって思ったりしますね。そしたら、これだけ多くのプレイヤーが二つに分かれもしないで一緒に戦えたんじゃないかなって思ったり……あはは、それじゃぁこのイベント成立しなくなっちゃうんですけどね……』
「…………ッ」
少し異なる声色のそれは、新入り達にはわけのわからない言葉だろう。
だがベテラン勢にはわかる。本来このゲームはそうなのだ。
競い合っても潰し合わない。それこそが正しい姿のはずだったのだ。
彼女が間違えるはずがない。
一度だけ立ち止まる。
三人と一人、揃って深呼吸をする。
電子の外気が冷静さをくれた。
「落ち着いたか?」
「おーよ」「うむ」「ええ」
必ず取り戻す。
一瞬、垣間見た彼女の本心にかけて、必ず全てを救い出す。
その誓いを胸に、千里たちは最前線に辿り着く。
既に待っていた戦士達と合流し、チエカのゴーサインを待つ。
そして。
『ーーーーコホン!! では気を取り直して行きましょう!! さあさあ準備はいいですか? 最前線には着きましたか? エンジンスタート、シートベルトをしっかり締めて!!』
号令が響き渡る。
こちらにつくは、掻き集めた幾万の精鋭。
しかし彼方に見えるは、マリスが掻き集めた数十万の生え抜きのはずだ。
それだけの情報を、果たしてどうやって処理しているのかはどうでもいい。
全員倒す。
まずはそれだけを考えろ。
『それじゃぁ、ぼちぼち始めさせて貰いますねっ!』
世界のどこかで、腕を振り上げる音がした。
熱気が練り上がる。
敵意が爆発に至る。
そして時はきた。
『第一部最終イベント!! 群衆事変スタンピード、開幕ですっ!!!!!!』
ーーーーURAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAARAAAAAAAATAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!!!!
「「「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」」」
千里たちプレイヤーの咆哮と共に、色とりどりのマシンが踊り狂う。
押し寄せるのは生え抜きのビギナー、だけではない。シイカビッドの群れも突き進む。
無機質なゴーグル姿の奥から、気の抜けた打算が聞こえる。
『敵プレイヤー、ハッケン』『ハッケン』『ハッケン』『ハッケン』『ハイジョ』『ハイジョ』『ハイジョ』『ハイジョ』
『おい!! アイツらベテラン勢を倒せば倒すだけボーナスパックが貰えるってよ!』
『うっひょーありがてぇ! そんじゃーセンパイ達には新時代のために沈んでもらおうか!』
『いくら実力差があっても、こっちは運営サマの援軍、シイカビットと一緒に数で攻められる!! 連戦や多数戦に持ち込めばこっちのものよ!』
数と運営の庇護に任せて特攻してくる様は、千里たちにとってえらく滑稽に見えた。
「全く、何も知らずに呑気なもんだぜ」
「ああ。この戦いでマリスが勝てば全てが終わりだってのに……」
推測通りなら、少なくともこのゲームのユーザー全ての破滅。
下手すれば、それを雷管としてネットワークそのものが起爆でもするかもしれない。
そんなことにはさせない。
させない!!
その意志を知らしめるべく、千里は一枚のカードを手に取る。
「さあまずは牽制だ千里。足元が盤石だって思い込んでるアイツらに目にもの見せてやれ!」
「おーよ詩葉! 手札から 《ブラック・グリズリー》を呼び出す。でもってブラック・グリズリーをコストに……食らいやがれ 《ゼンメツ・エクスプロージョン》!!」
アドバイスに倣い、自慢のマシンを送り出す。
ただし特攻兵器として。
漆黒の鋼の塊を媒介に、全てを解体する工具の雨が爆裂する。
《ブラック・グリズリー》✝
ギア4マシン スカーレットローズ POW16000 DEF10000
《ゼンメツ・エクスプロージョン》✝
ギア4アシスト スカーレットローズ
【自分のマシン一枚を破壊】コストカードのPOW以下のDEFを持つマシンを全て破壊する。
ーーーーーギュインギュインズドドドドドドドドドドド!!!!
『『『グギャアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!』』』
『『『し、シイカビットがああああああああぁぁぁ!?』』』
降り注ぐ工具の雨が直撃し、シイカビッドの標準装備たるヘッドギアが爆発四散する。
「わりーなルーキー。今回ばかりは勝たせる訳には行かねーのよ」
シュウウ……と硝煙を上げるカードを構え、乾いた事実を吐きすてる。
今放った効果は全体除去。パワー16000のグリズリーをコストにする事で、それ以下の防御力しかないシイカビットを全滅させたという訳だ。
無論、同格以下の彼らの愛機も巻き添えでズタボロだ。
先制攻撃で崩れた敵前線に群がるように、少数のはずの千里陣営が踏み荒らしにかかる。
「そうさな千里。アイツらが目的を果たした時、世界はマリスの意のままになると言っていい。現状でも魂を引っこ抜く権利があるのに、その先の『何か』をやろうとしてる」
「故に絶対に阻止する。それこそが我らの目的ーーーー」
ーーーーーーーーヒュォ。
「ーーーーであればそら狙うよのぉ? マリス!!」
「!?」
輝きが飛来した。
ズガンズガンと水晶弾の雨が降る。
『なんだ!? グァアアアア!?』
『一体何が……グハッ!!』
わけもわからないままに、一方的にこちらの数が減らされていく。
しかもそれだけじゃなく、着弾点からは黒いケモノが立ち上がり更に水晶弾を吐く。
一見して意味不明な理不尽だが、千里と或葉だけは理解していた。
「カルトヴェインだ……!!」
襲撃者の姿は見覚えがあった。
かつて千里と刃を交えた時、兵士として繰り出された影の化け物だ。
《悪意の氾濫カルトヴェイン》✝
ギア4マシン サイサンクチュアリ POW14000 DEF11000
【常時】お互いに、効果またはコストの対象を選ぶ時に 《悪意の氾濫カルトヴェイン》は選べない。
【自分メインフェイズ/自分のマシン一枚を破壊】山札から 《悪意の氾濫カルトヴェイン》一枚を呼び出す。そうできたなら、相手のギア4以下のマシン一枚を破壊してもよい。
「全軍、今すぐ影の化け物をパワー11000以上のマシンで攻撃しろ!! じゃないとねずみ算的に増えてくぞ!」
それくらいに脅威な、マリスのお気に入りのカード。
天才の振りをするのが上手い凡才。
その事実が示すものはシンプルだ。
「まさか……マリスが来た!? タワーに引きこもってるんじゃ無かったのか!?」
「ゴアイサツだろーよ!! 全プレイヤーに向けての顔見せだ……後から出てきて不審がられないよーになぁ!?」
キッと睨む。
軍勢の奥、指揮を執る姫君の如く佇む、立たされているであろう二人で一人のチエカを見据え、そこに届くまでの障害だと認識する。
ならば。
「俺が止める」
「!?」
「それが最善だ。俺が一番時間がある。素直に首を差し出すとも思えねーが、やれる所までやってやる!」
「ああもう……無茶はしないでよ!」
「おーよ!!!」
言うだけ言って孤軍進軍。
もちろん馬鹿正直に突き進むつもりはない。
敢えて徴発するように自機を出し、新たな水晶弾を誘う。
そして……ヒュォ、と音がした瞬間に。
「来たな? 手札から 《リサイクル・ブースト》を発動!!」
罠にかかった。
攻撃を受けたマシンはそのまま薪となり……遺恨を残さず完全燃焼する。
《リサイクル・ブースト》✝
ギア2【設置】アシスト スカーレットローズ
【自分のマシンが破壊される時】対象をこのカードの下に重ね、自分は1キロ走行する。
その爆風に乗り、千里は弾道を逆算してスナイパーの元へ飛ぶ。
途中で水晶がもう一発来たが、マシンを対象とした砲撃はアバターには響かない。
そして見えた。
戦場をわずかに見下ろすように、領域を覆う傘の上に佇む群青色を。
無機質な仮面をかぶれども、その奥から溢れる愉悦趣味と快楽主義は隠せない。
その上で、以前まではあった冷静さの殻も砕け散っているようだ。
「千里ぃ……会いたかったぜぇ……?」
「ああマリス、俺もお前に会いたかった……ぶっ倒すためになぁ!!!!」
因縁が交錯する。
野望のため、日常のため、欲望のため、誓いのための戦いを誘発する。
そして。
「千里イイイイイイイイイイイイイイイイイイイ!!」
「マリスウウウウウウウウウウウウウウウウウウ!!」
晴天の下、敵意と敵意が魂で激突する。
宿命の戦いの火蓋が、切って落とされた。