ヘルウェイ・ライディング! その3
チエカの一口解説! 攻撃や行動でタップしたカードは、手札に戻すとき表返して加えます。この状態のカードはリペアフェイズの処理で裏返すまで使用不可能なのです。だからセンターの自壊を利用して同ギアを手札に戻し再利用……なんて流れはできなかったりします! いやぁ悪い事ってできないものですね!
レースも終盤に近付いていた。
100キロ以上あろうと関係ない。本気の戦いにローギアなど無いのだ。
「まずは乙って来いルシフェル! 五枠ぽっちの場を空ける為にな!」
「フン……用が済んだら即自爆特攻か」
「続いてピットアウト! 赤塗りのパトライド✕2、グリーン・タートル! ……確かこのターンの行動は三回まで無効になるんだってな!
だったら使い切ってやる! 今呼んだ三体でセンターを攻撃!」
クラッシュ&ビルド残り回数……3→0
「ち……ここでスカーレット・ローズの特性が生きたか」
「まだまだ行くぜ! センターのタンクローリーで走行!」
センリ残り走行距離……115→100
「続けてパトライドの効果! センターに重ねる事で走力を5追加して回復! 再走行だ!」
センリ残り走行距離……100→80
「確かそいつ……まさかこのターンに走り切る気か!?」
「さーてな。続けてタンクローリー自身の二回行動能力を適用! 再々走行だ!」
センリ残り走行距離……80→60
「まだまだ! ピットアウト! 出て来い俺のお気に入り! 《グレイトフル・トレイン》!
コイツは行動してないギア1を下に置けば、その本来のステータスを吸収できる!
コイツとタンクローリーを入れ替え……行動してない《サイドライド》を自身に重ねる!」
「まさか!?」
「サイドライド本来のステはギア2の走力10! 今のコイツは走力25で走行するんだ! 走れトレインッ!」
「クッ!?」
センリ残り走行距離……60→35
「まだまだ! 二台目のパトライドの効果! トレインに自身を重ね回復ゥ! 走力も+5で再走行だ!」
「バカな!?」
センリ残り走行距離……35→5
「まさか……ここまで走るとはな」
「讃頌ドーモ。だが俺の攻撃はまだ終わりじゃない」
その目は、獲物を狩る者の目だ。
「ピットアウト《ホワイト・エッグ》! アンタのセンターに特攻させる!」
卵は割れてこそ役に立つ。
「その効果で手札を公開! そして手札にも場にも存在してないギアを持つマシン……つまりギア4の《ブラック・グリズリー》を手札に加える!」
全てが上手く行く。
完璧な流れだ。
そして、列車の中から黒い影が顔を出す
「ギアアップ《ブラック・グリズリー》!! ……さぁラストランだ!」
熊を模した黒塗りの高級車が飛び出す。
駆ける。
「……………………」
シルヴァは黙っている。
このまま行けば、センリは残り五キロの距離を完走するはずだ。
だが。
不意に。
その躯体に大鎌が突き刺さる。
「……え?」
「ここまで……オレを追い込んだ事に関しては、敬意を表してやろう……」
影が立ち上る。
幽鬼の王が立ち上がる。
「だが、最後に笑うのはオレの方だ……」
湾曲した二本角を生やす闇が…………消える。
「へ?」
「オマエの走り、耐えたかいがあったぞ……耐えて耐えて耐えて耐えて耐えた」
センリは。
背後に薄ら寒いモノを感じた。
そこには。
「だからこそ! オマエに勝てるッッッ! 喰らえ《アヴェンジ・ホラーショウ》ッッッ!!」
ーーーーkeeeeekkkekekekwkekeke!!
「うわぁああああああああああ!?」
張り付いていたのは、不気味に笑う山羊の霊体だ。
「アヴェンジ・ホラーショウは場に設置するカード。自身が記録した数値を消費し、それと同値のディフェンスを持つマシンの走行を食い止め破壊する!
その数値はオマエがこのターン走った距離の……三百倍よぉ!!」
ホラーショウ記録数値……110✕300=33000
「記録数値33000!?」
「という訳だ。消し飛べグリズリーッッッ!!」
ーーkekkkeket…………kekwkekeke!!
ホラーショウ記録数値……33000→23000
笑い声を上げた山羊が自ら爆ぜる。
ディフェンス一万を誇る、黒塗りの躯体が爆散する。
「そんな……」
列車に戻ったセンリにシルヴァは突き付ける。
「まだだろセンリ! オマエの手札にそのまま追撃できるカードは無い。だがまだオマエには手札を入れ替える手段が残ってる!」
「くっそ! 手札から《ファントム・オアシス》《アンガー・オブ・モービル》を発動!互いの手札を入れ替えた後、このターン使った三枚のチューン分カードをドロー!!」
大量のドローカード。
うち追撃に使える札は二枚。
だが。
「再びギアアップ! ブラック・グリズリーで走る!」
「アヴェンジ・ホラーショウの効果で破壊ィ!!」
ホラーショウ記録数値……23000→13000
同じ光景が巻き起こる。
「…………っつ」
まだ手札に、ギア3が一枚ある。
しかしこれは使えない。どのみちディフェンスが足りないからだ。
センターがグレイトフル・トレインの状態を維持しなければ。
場に残るカメを睨む。
「…ターンエンド」
「オレのターン! ……前のターンに予約したヴォイドの効果を適用! デッキからギア3のマシン……廃列車キュリウスにギアアップ!」
またしても、白い手の生えたスクラップが出現する。
「ピットアウト、ローリング・ゴールズ! 廃列車キュリウスは場にギア3が出現した場合、同じマシンを出現させる!」
「ちょっと待った。ここで《進路妨害》とトレインの効果発動! 場のグリーン・タートルを吸収!」
列車が緑のオーラを纏う。
「これでトレインのディフェンスは17000! 更にコイツを倒すまで他の行動は取れない!」
「ハッ! だったら二体のゴールズで連携攻撃するまでだ!!」
WIN ゴールズP20000vsD17000トレイン LOSE
「これでオマエのセンターはギア1……ハァ……進路妨害の効果は切れた……!
廃列車キュリウスで疾走!!」
「ッツ! ファントム・オアシスで一走目は無効化!!」
「だろうよ! だからこそォ!」
地底から黒ずんだ流体が吹き出す。
朽ち果てた列車を包み込むと、二頭の品馬が引く鉛の馬車になった。
「ギアアップ! マイフェイバリット《鉛塊のドレーク・チャリオット》! さあ走れ走れ!!」
シルヴァ残り走行距離……95……75
「くぅ……!!」
「ハハハ……キツイよなぁ? 長引く戦いはよぉ!? だがもう安心しろ。ハァ……次で最後だ」
大地が鳴動する。
「ーーーー悪夢奏でし破滅の機構よ、裏切りを噛む無限の絶望となりて君臨せよ!!」
三ツ首の悪魔が地を砕き現れる。
「ピットアウト! テストカード・ギア4《大悪魔ルシファー》!!」
青々とした躯体。
二翼三首の異様なシルエット。
圧倒的な悪の威圧感が場を支配する。
「……あ、悪魔……だと。一体どんなトンデモ効果を……」
「心配するな。効果はシンプルだ。場のギア3以上のマシンをルシファーに変更するっていうな!」
「!?」
金貨袋二つと馬車が砕け、中から同様の悪魔が現れる。
「計四体、合計走力80。そしてオレのゴールまでの距離は75キロ……」
チェックメイト。
勝利は目前と言いたいのだ。
「さあ、いよいよクライマックスだ……!!」
「…………!!」
裂けるような笑みが、センリを襲う。
最強のテストカード、ルシファーの力に追い詰められるセンリ。果たしてセンリに打つ手はあるのか!?
そして戦いの果て、シルヴァの真意が語られる!!
次回堂々決着! 「ヘルウェイ・ライディング! その4」をお楽しみに!!