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カードレース・スタンピード!!  作者: 能登川メイ
episode11 最終決戦の始まり。千里vs???!!
155/190

決戦前の最後の処理。タギー社との策略戦!!

マギアサークリット解放から少し後。


『フルダイブの危機』を千里から聞いたプレイヤー達は大いに揺れていた。




『俺は行くぞ! フルダイブを体感できるんなら上等だ。多少のリスクがなんだってんだ!!』


『あのさ……それって命に関わるカンジ? アタシ死ぬのはイヤだけど……』


『話によれば、フルダイブしてもあそこのちっこい嬢ちゃんが現実に帰してくれるらしい。僕はその言葉を信じて向かうよ』


『う、うーん……ならアタシも……うーん……』






「やっぱり、危険ってなるとそうそう踏ん切りつかないか」


「おうさ。ざっと見た感じ、特攻部隊は全体の半分こってとこか」


動揺の走る領域を俯瞰しながら、千里と信奉者は語らう。


流石に一致団結とまではいかなかったが、それでも十分すぎるくらいだ。


「詳しい数字はまだ出ないが、それでも決戦までには万単位の味方が集まる見込みよぉ。こんだけ居ればさしものタギー社といえどタダでは済むめぇよ」


「そりゃ大助かりだ」


素直な感謝を述べる。


「ありがとな。ここまで強力してくれて」


「なぁに鳥籠を壊してくれた礼よぉ。それにどの道、さっきまでみたいに固まって過ごしてても何も変わらない。ここで動くのが一番だって思っただけさぁ」


外套の下から、強面の歯で笑みを見せる。


「だから負い目は感じるんじゃねぇぞぉ? きっちりリスクまで伝えてくれたんだ。俺たちも覚悟を決めて挑むさ」


「そっか……よろしく頼むぜ」


「おぉ」


会話を終え、信奉者はのっしのっしと領域の群れへ帰って行く。


そこに。


「プレイヤーの諸君。外に出るなら今のうちが良いかもよ? いいものが見れるわ」


幼い魔王がやってきた。


なんだあの幼女? という声を払い、彼女はプレイヤー達を先導する。


「あーあの、どちら様で……?」


「なーに、通りすがりの魔王さまよ。こんなことができる程度の、ね」


彼女の言葉に呼応し、世界を繋ぐゲートが大きく広がる。


そこには。




黄金色の輝きを纏い。


再生しゆく、始まりの街が映し出されていたーーーー。






歓喜に湧くプレイヤーたちを後目に、二人は語らう。


「やるじゃない。アンタ、意外とファインプレーだったかもよ?」


「ファインプレー? 何言ってんだ良襖、俺は俺の台本通りに動いただけだっての」


「ちがうちがう。あたしをジューダスで撃ったコト」


「は?」


冷静に、客観的に状況を判断して魔王は語る。


「気がついてる? こんな状況なのに、この領域に山ほど居るシイカビッドがアクティブにならない。世界を阻む壁も治らない。そういう設定だろうと、今は押し通すべきなのに」


「あ…………」


「もしもタギー社が持ってるあたしの片割れが健在だったら、間違いなく無理にでも権限を使って妨害してきたはず。だけどそれも使えず、過半数の創物承認権(ステアリングキー)も失った彼らにはもう新たなギミックは作れない」


ここまでの道筋が、少しづつタギー社の力を削いできた。


電霊世界の権限はもはや逆転している。残るマリス自身の力も、文字通り足を引っ張って使えなくしつつある。


「つまり結果として、アンタの道筋は全部が正解だったってコト。然るべき時に動いて、然るべき行動をした……そう、あたしが保証するわ」


「ははは……ありがとよ」


認められる、というのは何よりありがたい。


誰からであれ、承認されると心が落ち着く。


ゲームマスターという誰かに、プレイヤーが認められるという安息。


あるいは、それこそがゲームの本質なのだろう。


ともかく。


「これで、決戦の日までこのゲームは持つ。いや()()()()()()()()()()()。マジに勝てるぜ」


「当然。圧勝マチガイナシよ」


戦いの下準備は終わった。


幾千、いや幾万にすら至る軍勢がマリスの首を狙うだろう。


あとは雑兵を片付けつつ、決戦の時を待つだけだ。







戦慄せよ、世界を蝕む悪意。


善悪を超えた熱意の刃は、支配者の手を容易く弾く。
















リアルにて。


「社長……ひぎっ、体調を崩されてはいませんか……あぐっ」


「俺は気分の問題だから平気だ……それよりお前こそしっかり休め。シイカビッドのフィードバックがキツイんだろ」


決起からしばらく。タギー社の天守閣では、今日も社長ことマリスと秘書シイカの会議が開かれる。


マリスは両足の霊魂(アバター)体の欠損。シイカはビッドのホストサーバー役を受け持つことによるフィードバック。


彼らにダメージこそあれど、まだ全てが終わったとは欠片も思ってないようだ。


その証拠に。


「社長、マギアサークリットが解放されたようですが」


「ああ。()()()()()。ま、最悪の最悪まで妥協した上でのだがな」


流れは、まだかろうじてマリスの手のひらの上だった。


拘束していたマアラだが、彼が手遅れになった事を知り全てを語った。ステアリングキーの真の力、システムの裏に隠れたルールの詳細を彼はようやく知ったのだ。


彼らを止められないとわかった以上、別のプランを練る必要があったのだ。


「しかし、彼らがまとまるのは良いとしてそれをどう止めますか? シイカビッドの強化も限界です。こちらにはもはや戦力増強の術はないはずでは……」


「なあにいくらでも補充できる。このゲームの『外』からな」


「外……まさか」


「ああ」


それは彼自身の目標にも近づく一手だ。


「さあ呼び込むぞ。本来の意味の群衆事故(スタンピード)を。自分達が『誰』に喧嘩売っているか、しっかり自覚して貰おうじゃあないか」


もはや彼にできることは既存の組み合わせのみ。


だがそれこそが彼の本領。


ブロックを組み上げ巨獣を君臨させるような、幼稚で凶悪な才能が牙を剥く。


しかも。


「それとなシイカ。新しいカードこそ作れないが」


「?」


「こんなこともあろうかと……用意してあったのさ。俺のためだけの切り札。例えば……こんなのとかな?」


ブォン!! と社長室に浮かび上がるのは、マリスが愛用するアバター……の姿が記載された秘密のカード。


()()()()()()()()()》。






《反目の導き手マリス》✝judgelight_Malice……

ギア4マシン ステアリング POW 0 DEF 0

【デミ・ゲストカード】【任意】自分の場のマシン二台を疲労させ【拘束】を付与した場合に、手札または場からセンターに置ける。

【常時】このマシンが【拘束】されている限り、場の全てのマシンは走行及び攻撃できない。

【1ターンに一度/手札のマシン一枚を捨て札へ】自分はカードを一枚引く。その後相手のデッキの上から三枚を捨て札へ置く。この時墓地に送ったマシンカード一枚につき、このマシンのPOWとDEFを相手ターン終了まで5000ずつ上げる。






これを初めとする奥の手の束が彼の手元にはあった。


ああぁ……と恍惚の表情を見せるシイカを愉しみながら、マリスは宿敵に思いを馳せる。


「ーーーー覚悟決めろよ先駆千里。この俺さんをンゴらせた事を必ず後悔させてやる」







翌日。


その反撃は、しかと千里達に伝わった。


「千里!! これ見てくれ!!」


「ん?なんだよいったい……なんじゃこりゃああ!?」


詩葉に促され、ブラウザの画面を確認する。


スタンダードな反撃があった。


権力と既存の組み合わせ、それを最大限活用した反撃だ。







【スタンピード】『初心者特別ボーナス!! 今ゲームを初めて 《ステアリングタワーの防衛》ミッションに参加すると、50パック分のチケット&超強力レジェンドレアが十組貰える!! 更にミッション達成で、構築済み環境クラスデッキを進呈!!』






「スタートダッシュボーナスか……よくこのタイミングで追加する気になったもんだ」


「それに条件もヤバい。完全に対立させる気満々じゃねぇか!」


ステアリングタワーとやらが一体なにかは知らないが、彼らの重要な拠点なのは間違いない。


それを新規プレイヤーに防衛させるということは。


「荒れるぞ、当日は」


「くそったれ上等だ。タギー社の、マリスの戦術になんて負けるか。全力で打ち破る!」


意気は上々、熱意は烈火。


激突まで、もうまもなくだ。

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