ヘルウェイ・ライディング! その2
『ハイハーイ毎度お馴染み御旗チエカです! 本日は特殊クラス《ステアリング》についてです!』
『どんなデッキにも最初は必ず入っている《ホワイト・エッグ》。あれもステアリングですよね。確か別のクラスにはギアアップできないはずですですが……』
『ステアリングだけは例外! 彼等はあらゆるクラスとギアアップできます! しかも超有能ときたものです!』
『ギア1のホワイト・エッグからしてステータス・効果共に優秀ですからね。切り札にもチエカさんが居ますし……まてよ、全部ステアリングにすれば最強なのでは?』
『それはできません! ステアリングは便利過ぎる故に、デッキに三種類しか入れていけない制約があるのです!』
『なんと!? 同名カードは4枚までだから……多くてもデッキ40枚中たったの12枚!?』
『エエ。ステアリングは舵取りの意。駆け抜ける主役はあくまでも各クラスのマシン達なのです!』
『なるほど……素晴らしいコンセプトです!』
『センキュー! 以上《チエカとマアラの初心者講座・破》でした!』
「ピットアウト!《赤塗りのパトライド》、そして《パイクリート・サイドライド》! コイツはセンターに置くかセンターがギア2以外ならギア1として扱う! これで場にも手札にもギア2は居なくなった訳だ!」
「まさか」
「ホワイト・エッグ! アイツのセンターに攻撃!」
「く……」
「アンタらマジで姉妹っスよ。盤面の使い方がソックリだ!!」
LOSE エッグ P4000vsD4000 スカル GUARD
「エッグは破壊! 効果で手札を公開、手札にも場にも無いギア……つまりギア2の《先導のルシフェル》を手札に加える!
そしてだ……走れ《タンクローリー》!!」
センリ残り走行距離……170→155
「更にパトライドの効果! このカードをセンターに重ねる事で、センターは走行+5で再走行できる! 走れタンクローリー!」
センリ残り走行距離……155→135
「まだ行くぜ? なんせタンクローリーはチエカと同じ、二回行動持ちだからな!」
「イ゛ッ!?」
センリ残り走行距離……135……115
「……走れるのはここまでだ。距離を伸ばさなかったとして、やっぱ三ターン目でキメるのは無理だったか」
ちょっぴり悔しがりながら、センリは最後の詰めに入る。
「最後に先導のルシフェルをピットアウト! 効果で直前に使った《当然のマニュアライズ改》を再使用!」
タンクローリーの下の札が、パトライドもろともタップされる。
「俺が手札に加えたのは《レッド・オポッサム》《グリーン・タートル》《アンガー・オブ・モービル》。だが最後以外はどうでもいい。コイツで手札を入れ替えるからだ!」
「なにっ!?」
センリはいつしか、らしくない敬語をかなぐり捨てていた。
「ステアリング・チューンカード《アンガー・オブ・モービル》! その効果で互いに手札を山札に戻しシャッフル!」
「ッ……オレの完璧な手札をかき乱す気か!」
「まーな。ただし俺だけはこのターンスデに使ったチューンカードの数だけ追加でドローする! 合計4枚ドローだ!」
「くっ!」
目を回すようなやり取り。
これこそが《スタンピード》。
そしてスカーレット・ローズ。力なきものが立ち上がるには手数を積むしか無いのだ。
「俺はこれでターンエンド。アンタのターンだぜ?」
「……何事も、そううまくは行かないものだな」
サーチとドローの乱打。
これが無ければスカーレット・ローズは簡単に息切れを起こす。
(……あちらは実質無尽蔵にギア1を使えるようなもの。対するこちらはギア3を引けずギア4ばかり引かされた。吐き気のするような手札事故だ、だが)
「ホワイトエッグにルシフェル、そしてアンガー・オブ・モービルか」
一つだけ嬉しい情報がある。『相手は三種のステアリングを使い切った』。
つまり。
(もうステアリングの札は来ない。チエカもウイニングチェッカーも飛んで来ない!)
「しょうがない、ゆっくり楽しませて貰うとするかァ!!」
叫ぶシルヴァは、どこか肩の力が抜けたように楽しげだった。
「オレのターン! 再びスカルで走行! 効果で手札を一枚捨てて二枚ドロー!」
シルヴァ残り走行距離……145→140
「やっべアンタの手札九枚じゃん?」
「そして再びギアアップ《ガードナ・ケルベロス》! 再び手札二枚をコストに二体のケルベロスを呼び出す!」
「……また来やがった!」
「更にピットアウト《バニシング・ヴォイド》! 行くぞピットトリップラン! ケルベロス、ヴォイド!」
シルヴァ残り走行距離……145→125
「まだだ! チューンカード《ブラッディ・フィアー》! 自身のセンター以外のマシン…すなわちタップ状態で呼ばれたケルベロス二体を破壊する事で、同じ数のマシンを回復! 再びピットトリップランだ!」
シルヴァ残り走行距離……125→95
「多くね!?」
「ブラッディ・フィアーで回復したマシンは走力が5プラスされる。……道が足されなきゃ勝ってたか」
シルヴァが自嘲するように笑う。
「だがここまでだ。ここでチューンカード《スクラップ&ビルド》。場のヴォイドを破壊!」
「んだと?」
墨のような霊体が爆散する。
「スクラップ&ビルド。次のオマエの行動は、このターン破壊したヘル・ディメンションの枚数分自動で止められる。
そしてヴォイドの効果! 次のターンにセンターのギアが何であれ、このターン破壊された枚数と同じギアを持つマシンにギアアップさせる!
覚悟しろよ次のターン? オマエがどうあがこうと、さすがに100キロ以上も走れまい。オレにターンが回って来たときがオマエの最期だ。……ターンエンド!」
「…………へぇ?」
「ん?」
声に気が付いて目をやると、センリの顔が妙にニヤついていた。
「なんだ妙な顔を…」
「いや、なんか急に楽しみ始めたなぁと」
「フン。ようやくテストカードを試せる事ができると思っているだけだ」
「素直じゃねーの」
「なっ!?」
センリの顔は、もはや目的は果たしたと言わんばかりだった。
黒ずんだ戦場で彼らだけが彩度を保っていた。
「まー後は楽しむだけって事で! オレのターン、ドロー!」
「おい、待てまだ話は……!」
「積もる話は決着後にしよーぜシルヴァ。……スクラップのルシフェルの効果!手札一枚を捨てて手札に戻る!
そして再び《当たり前のマニュアライズ》とのコンボだっ!」
「なっ! つまり合計六枚のギア1がオマエの手札に……」
「おーよらしくなってきたぜ! 俺は《パトライド》二枚、《ホワイト・エッグ》、《ファントム・オアシス》《グリーン・タートル》、《アンガー・オブ・モービル》を手札に!」
「なんだそのチョイス!?」
「後でのお楽しみだぜ!」
「くそ!」
戦いは続く。
どこまでも速さを目指し。
続く決戦! やっぱりレースシーンはいやがおうにも尺が取られますね♪
次回「ヘルウェイ・ライディング! その3」をこうご期待!