表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
カードレース・スタンピード!!  作者: 能登川メイ
episode11 最終決戦の始まり。千里vs???!!
148/190

完全勝利の爆誕。詩葉vs千里後編!!

千里残り走行距離…………8


詩葉残り走行距離………14




一方的勝利(ワンサイドゲーム)ブラッドサガーン》✝

ギア4マシン ヘルディメンショ POW16000 DEF20000

【二回行動】【走行またはバトル開始時】自分のマシンカード二枚を選んで破壊してよい。そうしなかったなら、トリガーとなった行動の後にこのマシンを破壊する。




血霧漂わせる砂の巨影。


新たなる切り札が君臨する。


テキストからして、苦笑する程詩葉に似合っていた。


幼い魔王直々の特注品(ワンオフ)


先んじて世界に配られこそしたが、その威容は丁場詩葉にこそ贈られた逸品だった。


「……これでオレの場には、ギア3のが二体に二回行動持ちのギア4が一体。合計14点の走力が揃い、オレの残り走行距離と一致する」


すなわち勝利は目前。


()()()()()()()()()()()()()()詩葉の勝利で終わる。


もちろん、そんな都合のいい事は起きないのだが。


それを承知で詩葉が動く。


動く!!


「さあ行くぞ! まずは大悪魔マモンで走行!」


「そーは行くかよ。手札から 《失速-ミステイクラン-》を発動!」


気安い迎撃が来る。


横殴りの衝撃が飛び、マモンの軌道を潰される。




《失速-ミステイクラン-》✝

ギア1アシスト スカーレットローズ

【そのターン最初の走行または攻撃時】その行動を無効にする。




「チィ!!」


出鼻をくじかれた。


速度が落ち、走力が足りなくなりかける。


しかしそこで止まらない。


荒れ狂う策略の中を突き抜け、勝利に向かう活路はもう見えてる。


「さらにブラッドサガーンで走行! この時場のマシンカード二枚を破壊するか、行動後に自分を破壊するかを選ぶ。オレは下になったキルハルピュイアと、行動を終えたマモンを破壊!」


キルハルピュイアの破壊により、詩葉の手札は一枚増える。


そして速さはくべられる。


血糊を喰らい、砂岩の体を固めた切り札がゴールを目指す。




詩葉残り走行距離……14→10




「まだだ! サガーンは二回行動持ち。もう一度走行するが……今度の代償には自身の破壊を選ぶ!」


号令により速度を上げる砂の巨影。


血が足りず崩れ始めるが、それでも構わず前へ。


前へ。




詩葉残り走行距離……10→6




「……へぇ」


いよいよもって千里を抜き去る。


役割を終えて、風化し崩れていくサガーンだが、それこそがこのマシンの醍醐味。


崩れて上等、サガーンの役目は崩れる事だ。


砂の中から、再び大悪魔が姿を見せる。


「サガーンが場を離れたことで、下になっていた最初のマモンが露出する。コイツで更に走行だ!」


解放された大悪魔の跳躍。


一塊となった道筋は、確かに未来へと続いていた。




詩葉残り走行距離……6→3




「ハァ……これで……後一手でゴールか」


息を切らしながらもここまで辿りついた。


勝利まであと一息。


このまま最後のマモンで走行すれば、残り3の距離を越えられる。


だがーーーー。


「ーーーーーーーーーーーーーー、」


最後の手を打つ前に、詩葉の手が止まる。


前のターンのサーチを忘れてはいない。


「……どーしたよ、詩葉」


「ーーーーこのままオレが走行した場合、お前はさっきサーチした 《巨大盾(ルイズ)》を切るだろう」


「……ああ、そりゃあな」


詩葉は気がついていた。


()()()()()()()


「更にそれだけじゃない。手札には 《()()・エボルアルジャーノン!!》と 《()()兵タンジェント》もある。コイツを使えば、オレにアホみたいな無茶ぶりをふっかけられるはずだ」


点と点が線で繋がる。


脳内物質がほとばしる。




《超越・エボルアルジャーノン》✝

ギア1アシスト ステアリング

【このカードはゲーム中一度しか使用出来ない】

【センターに置かれたカード一枚を選択】対象のカードを手札に戻す。この効果でカードを手札に戻したプレイヤーは、自分の手札から同じギアまたは一つ上のギアを持つマシンカード一枚を場に出す事ができる。この効果は 《化学の担い手アルジ》の効果としても扱う。




《器械兵タンジェント》✝

ギア5マシン サイエンスサンクチュアリ POW 0 DEF30000

【相手ターン終了時】相手はゲームに敗北する。




いずれも強烈無比な切り札。


ギア4のルイズを土台に続けて使えば、絶対絶命の状況を作り出せる。


しかし返す手はあった。


あの時、確かに振るわれていた。


「既にほとんどの攻撃権を使い切ったオレがタンジェントを倒すことは非常に困難……だから 《絶影・スナイプシュリーカー!!》が必要だったんだ。それも二枚な。……なるほど、わかってみればとんだゴリ押し戦術だ」


捨て札を確認する。大量消費したカードの中には、必殺技の使い手であるユリカの姿もあった。




《絶影! スナイプ・シュリーカー!!》✝

ギア1アシスト ステアリング

【バトルフェイズ時】自分またはセンターと同等以内のギアを持つマシンを捨て札から呼び出す。その後、相手マシンまたはイベントに攻撃を行う。この処理が終わるまで対象のPOWは+3000され、他のカードの効果を受けない。この効果は 《極上の乗り手ユリカ》の効果としても扱う。




《極上の乗り手ユリカ》✝

ギア4マシン ステアリング POW16000 DEF9000

◆【デミ・ゲストカード】

◆【センターがのギア4である】このマシンをセンターに置ける。

◆【バトル開始時/自分の下に置かれたカードを一枚疲労】コストカードが持つPOWとDEFを、バトル終了までこのマシンに加える。

◆【デッドヒート4(相手が走行する度に、自分の走行距離を4減らす)】




「つまりあの時起こった出来事はこうだ。『ゴールしようとしたら巨大盾 (ルイズ)を出されて足止めされたあげく、それが 《超越》によって 《器械兵》に進化した。だから 《絶影》で捨て札から二枚も援軍を呼んで力技で捻り潰した』…………だろ?」


「……大正解。ご名答のど真ん中だ」


そういえば、ユリカの技名には『サディスティック・ヘルドロップ』というのもあった。


これで全部、理解できた。


つまり。


『ーートレーラー!!』


ーーーー最初に、ゴールを目指す動きがあって。


『なんのルイズ!!』


『な……巨影だと!? それじゃこのグレイトフルトレインは動けない!!!』


ーーーーそこを、道を塞ぐ巨大盾(ルイズ)で塞ぎ。


『そしてアルジャーノンで俺のコンボは完成する……』


『しまった器械コンボか!!』


ーーーーそれを土台に、放置したら敗北する程の切り札である 《器械兵》が呼び出された。


『……仕方ないここで絶影を発動だ!!』


『馬鹿な!!! 2枚もだと!!? コイツ正気か!!?』


ーーーーだから、捨札再生(リアニメイト)を乱発してでもそれを処理する必要があった。


『『ちぃぃっ!!! サディスティック・ヘルドロップ!!!!』』


ーーーー最終的にユリカを含む複数体で、器械兵を力押しで倒した。


以上が、あの時理解出来なかった戦いの全容だ。


理解すると、すぅ、と心が軽くなった。


「つっかえが取れた……ありがとうな千里。ようやく頭が追いつけた」


「いや、理解したのはいいが……どーする? 実際にプレイする前に全部終わっちまったが」


苦笑する千里。それはそうだろう。当初の予定では、実際にそのシーンを再現するつもりだったのだから。


これからわざわざ再現するのも間抜けな事だろう。


だがそれを気にする事は無い。


先程破壊された、キルハルピュイアによってドローした詰め手がある。


「なあに、心配には及ばない」


「?」


「このターンで終わらせる」


向き直り、どこかに居るはずの身内へ告げる。


「ユリカ! ルイズ! 準備してもらったトコ悪いが、お前達の出番はなさそうだ!!」


「おい、アンタさっきから何言って……」


「こうするって言ってんだよ! ーーーーオレは手札の 《死骨の愛で手シイカ》の効果を発動! お前の手札の 《豪鬼の狩り手ルイズ》を表にする」


「!?」


まさかの切り返し。


こんなものは千里の予定にもなかっただろう。


「ちょっ良襖……ひょっとしてお前が……?」


「いやいやいやいやいや!! あたしの仕業じゃないから驚き中!!」


「更にコイツと二枚の 《絶影》を捨てることで、お前の場のアドバンスフォーミュラを破壊する!!」


「ちょッ!?」


並走していた攻守ゼロのマシンが吹き飛ぶ。


千里は驚愕する。シイカって言ったら……。


「それ……これから喧嘩する予定の、タギー社の秘書じゃねぇか!?」


「ああ、敵の兵士の金型だ。まだ使われたことがなかったろ。……オレからのチュートリアル返しだ。……この破壊に成功した場合、シイカ自身を場に呼び出せる!」


かつてユリカと戦った時と同じ。


いずれぶつかる強敵を、先んじて公開するオシゴト。


それを果たすべく。


口上を述べる。


「ーーーー振り下ろされよ愛玩の瞳。道連れの堕落越え、死骨を抱えいざ浮上せん!」


新緑の髪を靡かす憂いの瞳。


石飾りを掲げ、黒衣たなびかせ空を舞うシャーマンが現れいでる。


「しっかり見ておけ! これがこれから挑むべき敵の力だ!! 来やがれ 《死骨の愛で手シイカ》ッッッ!!」




《死骨の愛で手シイカ》✝

ギア4マシン ステアリング POW9000 DEF16000

【デミ・ゲストカード】【往復4ターン目以降/手札からこのカードを含む任意の枚数を捨てる】捨てた手札の枚数×3000以内のDEFを持つ相手マシン一枚を破壊する。この破壊に成功したなら捨て札となったこのマシンを自分センターへ呼び出し、相手の手札を自分がコストで捨てた枚数と同じだけ選んで捨てる。

【手札のこのカードをターン終了まで公開/カード名ひとつを宣言する】相手は自分の手札をランダムに一枚公開する。この時手札に宣言したカードと同名のものがあったなら、代わりにそれを公開する。




「シイカの登場時効果、効果の最初に捨てた手札と同数の手札を捨てさせる! 俺は手札を三枚捨てた、お前の手札も三枚捨てる! 吹っ飛べルイズ!!」


「イッ!?」


ゴウッッッ!! シイカの投擲する特大の骸骨が千里の手札を直撃する。


ルイズや超越、器械兵のカードがバラバラと落とされた。


一手の差こそが圧倒的。


あらゆる妨害の可能性が消し飛び、詩葉の道は開けた。


霞む視界が晴れ、目指すべきゴールが見えた。


ずっとずっと、届かなかった最速の地が。


「これもう、ルイズも器械兵も出てこない。お前に出来ることはなにもない!!」


爆弾が投げ込まれる前に投擲者を射抜けば、解体作業をせずに済むという話。


つまりは後一手、最後の走行で終わらせられる。


打ちのめされていた千里が、全てを悟り苦笑する。


詩葉は、想像を越えてきたのだ。


「まいったぜ……さあ最後の手を打てよ詩葉、白星を掴みやがれ!!」


「言われなくても。ーーーーウイニングラン! 大悪魔マモンでゴールだ!!」


そして詩葉は飛び立つ。


ずっと、求めていたものを手に入れーーーー




千里残り走行距離……3→0=GOAL!




チェッカーラインを超える快感。


誰よりも早いという実感。


そして、自分が勝利を得たことで。


かつて取りこぼして以来、ずっと欲しかったものが、ようやく手に入った。


それ即ち。


(自信ーーーーーーーーか)


自分を信じる心。


(そっか……オレは不安だったんだ)


不安材料を抱えすぎて、潰れそうな程だった。


それを、勝利というカンフル剤をもらった事で見つめられるようになったのだ…………。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ